花を接写すると、肉眼ではあまり意識できなかったような花の個性に気づく。「木を見て森を見ず」とのことわざに逆らうつもりはないが、わたくしはマクロレンズで撮った画像をパソコンのディスプレイで拡大し、花びらやしべでの彩り、美しい造形、そして独特の質感をあらたに見いだすことを趣味にしている。
「ヤブラン」は山野の木陰などに自生しているキジカクシ科ヤブラン属の多年草である(本州、四国、九州、沖縄に分布)。このものは耐寒性、耐暑性に優れ、病害虫による被害もほとんど受けないので、造園や緑化用草花として広く利用されている(みんなの趣味の園芸、NHK出版)。我が家の狭い庭においても、植えたわけでもないのに、ヤブランがいつの間にか定住者になっている。近くの山から野鳥が種子を運んできたのだろう。
花はきわめて小さいが(花径 6−7 mm)、木漏れ日で浮き出る淡紫色の花びらとしべ、そして蕾の彩りは魅力に満ちている
花びらは6枚、雄しべは6本である
花名の由来は藪に生えていて、葉がランのそれのように見えることによるとされている。そのことに加えて、私は花がランのそれのように美しいからだと思うことにしている
蕾と花。花茎は30ー40 cm 程度である。花茎には花(and/or 蕾)がたくさんつく(総状花序)
ところで、成熟前の種子と花・蕾が混在する場面も面白い。薄紫色の花から、どのような色素変換プロセスでこの色が現るのかと推理したくなるほど、種子は光沢のある緑色を帯びている。なお、成熟前に、種子を包んでいる皮(果皮)は落ちる。結果として、画像のように種子はむき出しの状態になる
今朝は薄日が差す空模様になっている。木漏れ日が花を照らし出すほど、日差しが強くなればと思う。ただし、先週までのような酷暑は勘弁してもらいたいが。
8月下旬〜9月上旬、EF 100 mm F 2.8(マクロ)にて撮影。