3月31日(水)の『毎日新聞(朝刊)』は面白かった。
教科書検定の結果公表に関連して、作家の高村薫さんとノーベル物理学賞受賞者の益川敏英さんが寄稿している。
◇高村薫さんのことば
国語の教科書に出てくる現代文が易しすぎて、新たに導入した古典や漢文との落差が大きい。文章そのものに「大人向け」「子供向け」という区別はなく、子供にもさまざまな作品を読む能力があるはずなのだだが、「子供向け」の素材を選ぶべきだという幻想に編集者がとらわれている気がする。
子供が興味をもって学ぶ一番のきっかけは、ドキドキする感情だ。国語でいうと、教科書の作品から受ける「不思議さ」や「美しさ」がその芽生えとなる。だから、意味が十分に理解できなくても古典や漢詩に触れることは賛成だし、同じ発想で現代文も選んでほしかった。
ドキドキする対象はストーリーに限らず、文章の格好良さなども含まれるのだから、三島由紀夫や梶井基次郎を採用してはどうだろうか。漢字にルビさえ振れば、思い切って学術論文でも構わないと思う。ちなみに私は、理解できなかったが小林秀雄の文章にドキドキした。
情報がはんらんする現代に生きる子供にとって、必要なのは真理を極める力だ。教科書に書いてあることでさえ、最終的には自分の頭や経験で判断する力が求められている。そのためにも、基礎となる国語力をしっかりと身につけてほしい。
◇益川敏英さんのことば
子供はクイズや謎が好きなように、本来は理科が好きだ。好きなことだったら分量も多くてもついてきてくれる。教科書や教師がその純粋な心を汚染しないことを望む。
課外授業をもっと充実させてはどうか。政府が予算を組んで、中学や高校を定年退職した元指導者を放課後の小学校に呼ぶ。子供は自分の好きなことに特化して、そこで高度なことまで学ぶ。授業では「基礎体力」を育て、それ以外の場で子供の興味を刺激するような教育の仕方はあるはずだ。
教科書関連と離れるが、直木賞賞作家の山本力さんが、初の子供向け小説『とっぴんしゃん』を、4月5日から毎日小学生新聞に連載されるそうだ。
◇山本一力さんのことば
子供だかららといってタッチは変えません。
子供のころ、街頭紙芝居を楽しみしていた。同じように、今の小学生が毎日、待ち遠しくなるような、わくわくする物語を書きたい。
「綿入れ」「火おこし」「湯たんぽ」など、子供になじみの薄い単語も並ぶが、「意味が分からなくても、前後の脈絡から読み解く力をもっていっるはず」です。
物語が話題になって、子供同士が仲良くなってくれればうれしいね。
以上、三名のお方の【落穂拾い】です。