尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

雪国の宿 高半

2012年10月22日 00時10分28秒 |  〃 (温泉)
 越後旅行。昼は十日町の小嶋屋総本店で蕎麦を食べた話は昨日書いた。その後、清津峡へ寄って、トンネルを歩く。日本三大峡谷というらしいけど、土砂崩れのあと、10数年前にトンネルができ、途中に4つ見る場所が開いている。紅葉の季節かなと思ったけど、今年はどこも遅れているらしくほとんど紅葉してなかった。清津峡には秘湯の会にも入っている清津峡温泉の清津館があるが、他にも「よーへり」という掛け流しの立ち寄り湯があった。軽く浸かる。

 そのあとは、宿をめざし早めにチェックイン。「雪国の宿 高半」というところ。入るとエスカレーターで、上に上がるという珍しい宿。ここは湯沢温泉の湯元で、800年も昔、通りかかった高橋半六翁が武蔵の国に向かう途中病にかかり、薬を探しに山に入ったら見つけたという。湯沢温泉の一番高台の、ガーラ湯沢に近い方。見晴抜群で温泉街も新幹線も遠くの山々もよく見える。そして、そこに戦前、川端康成が逗留し、「雪国」を書いた。当時の部屋が残され、資料館として開放されている。1957年に作られた東宝映画「雪国」(豊田四郎監督、岸恵子、池部良主演)でもオールロケされ、当時の宿が出てくる。館内ではこの映画が16時からと、20時半からと2回、上映されているという宿である。写真は、その「かすみの間」。中に入れる。
 

 そういう由緒ある宿なんだけど、それよりお湯が素晴らしい。アルカリ性の肌がスベスベする美肌の湯源泉で43度、浴槽ではそれが少し下がるので、人肌にやさしい。奇跡的な湯。こういう温度の温泉は他にもあるけれど、湧出量が多く、アルカリ性の「美人の湯」というのは珍しい。男湯は浴槽二つとサウナ、水ぶろ。女湯に半露天があるが、男湯にはない。男湯の一つはジャグジーだったんだけど、ジャグジーに塩素殺菌が義務付けられたのをきっかけに、止めてしまったとある。その代り、お湯の量を調節して「超ぬる湯」にしている。どちらも泉質が良いので、いつまででも入っていられるような風呂である。


 最近はネットや電話で秘湯や公共の宿に泊まることが多くなった。今回は大手の会社で使える助成金のようなものがあったので、久しぶりに大きな旅館に泊まった。越後湯沢というところはスキーが中心で、夏のアウトドアや川端康成で来る人も多いけど、温泉そのものはあまり意識されてないと思う。僕はこれほどの湯はめったにないと思った。館内は大きいが、金額はそれほどではない。夕食もコシヒカリの新米で、美味しい。地酒もうまい。しかし、朝食はもう少し工夫の余地はあると思うし(おかずバイキングだけど、和風のおかずだけでなくサラダバーは欲しい)、多少古い感じもある。でも、きれいな風呂と「雪国」の施設で十分、大満足。ここしばらく、身体が温泉を求めている感じだったんだけど、だいぶほぐれた感じ。ところで「雪国」という小説も、名前と冒頭のみ有名で、ちゃんと読んだ人が少ないかもしれない。今になるとすごく変な話だけど、言語表現として素晴らしい達成であるのは間違いない。傑作です。ノーベル賞を受けた中国の莫言に大きな影響を与えた。「雪国」に犬が出てくる、それにインスパイアされて「白い犬とブランコ」という小説を書いたというんだけど…。ええっ、犬なんか出て来たか?と日本では皆思った。確かに一行ほど出てくるらしい。(読み直してない。)映画にもちゃんと出て来る。

 翌日も晴れて素晴らしい天気。近くのロープウェイで、「アルプの里」に行く。ロープウェイはあちこちにあるが、ここも紅葉が遅い。遠くの山が一望。越後三山から谷川岳まで絶景。写真は日本百名山の巻機山(まきはたやま)。奥の平の方。手前のピラミッド型の山は飯士山(いいじさん)。午後は大源太キャニオン(だいげんた)へ足を延ばす。東京ではほとんど知られてないが、湯沢の辺りではキャンプなどで有名らしい。ダム湖から見えるとんがった山が「日本のマッターホルン」(言い過ぎでしょう)の大源太山。
 

 2日目の昼は、越後湯沢駅の駅ビルで食べた。いや、ここは素晴らしい。オシャレなお店や土産物屋が立ち並ぶ。新潟駅よりいいかも。「魚沼イタリアン ムランゴッツォカフェ」で食べたピザはここしばらくの中では一番おいしい。カフェ「MESSIA GARE」(メシアガレ)というカフェでは、「コメシュー」180円など、安い値段で美味しいスイーツを。新潟は米良し、酒良し、野菜良し、魚良しの土地なんだけど、恵まれすぎのためか、今ひとつデザインや発信力が弱かったと思う。でも、その場に行くと、温泉やスキーだけでない魅力がいっぱい生まれつつある。越後湯沢駅はわざわざ立ち寄ってみる価値がある。4時間まで駐車無料。
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那須・温泉と歴史の旅

2012年04月28日 00時59分34秒 |  〃 (温泉)
 那須方面に2泊の旅行。なんで今頃かというと、「休暇村那須」の50周年プランがあって、さらに40日以上前早割で6700円なのを発見したわけ。(GWからは高くなって、もうこのプランはない。)せっかくだから、泊まったことがない近くの板室温泉にも泊って2泊の旅行。

 今回は最初の日を除いて雨。本当は「那須平成の森」に行ってみたかった。(施設自体には見に行ってみたけれど。)「那須平成の森」というのは、2011年5月にオープンしたばかりだから、まだ知らない人が多いと思う。那須御用邸の一部が環境省に移管されて自然と親しめるふれあいの場として開設された自然公園である。誰でも歩けるゾーンもあるけど、予約してインタープリターと行く3時間の「ガイドツァー」でしか行けないゾーンもある。そういう新しい発想の自然と親しむ場所として、是非一度行ってみたかった。ただ、今回は予約満杯で、ガイドツァーはもともとダメだったんだけど。

 温泉は昨年はなかなか新しいところへ行けず、今まで行った数が360台で停滞中。関東の温泉地でまだ行ってない数少ない一つが那須と塩原の間にある、板室(いたむろ)温泉。(栃木県の一番北の方。)「国民保養温泉」に指定されている「湯治場の雰囲気を残す」温泉である。泉質は無色透明のアルカリ泉で、肌がスベスベになる。宿泊はどこにしようかと迷ったんだけど、「勝風館」にしたのは「ムアツフトンの宿」だからである。昭和西川のムアツフトン、これは慣れると止められない。今までにもムアツで泊まった宿があるけど、是非多くの宿でも取り入れて欲しい。この宿は実におばあちゃんの長逗留の多いようでびっくり。きっと効能がいいからに違いない。1泊7500円。2~5泊6555円。6~9泊6430円。10泊以上6135円。(2人以上の場合。一人だと1050円増し。)という値段設定を見よ。食事は家庭料理で特別豪華なものはないし、トイレも共同だけど、親切な感じで好感の持てる旅館だった。板室温泉は、宿泊客に限り他の旅館の風呂にも入れる企画をやっているのもいい。(ただし、全部の宿ではない。16時までと言う所もあるので、早めに着いた方がいい。)僕は「加登屋旅館」の湯へ行ってみた。掛け流しの湯をひとり占め。(別館の方。古いムードの木造で有名な「本館」はやっていない。)
  (前が勝風館と風呂。最後が加登屋の風呂。)
 「休暇村那須」には、那須湯本温泉を過ぎて、ロープウェイ乗り場をめざしてどんどん車で登って行く。1230mの別天地というけど、まだ雪が端の方に積みあがってる。雨というより霧がたちこめ、視界が全く聞かない。宿に入ってからは風も強くなる。食事はバイキングだけど、いろいろのものがあって値段の倍くらい食べた感じ。お風呂は前に行ったことがある大丸温泉の湯で、循環だったけど大きいからやむを得ないのだろう。今回は宿と温泉に関しては、コストパフォーマンスとして満足、満足。

 さて、雨で山歩きがダメだから、今回は那須野が原の歴史中心に回ることにした。那須・塩原方面のガイドブックに出ていない歴史ツァーである。那須連山のふもとの「那須野が原」は、水資源に乏しい扇状地で、明治になって「那須疎水」ができるまで開発が進まなかった。しかし、それは中世以後の話で、古墳時代までさかのぼると、関東と奥州を結ぶ地帯として古墳が多く作られ栄えた。それを証明するのが国宝那須国造碑」(なすの・くにのみやつこの・ひ)である。現在大田原市の笠石神社にある。近くに「なす風土記の丘資料館(湯津上館)」が作られ、レプリカが展示されている。資料館のほぼ真ん前に「下侍塚古墳」(しもさむらいづか=前方後方墳)がある。この地域には国指定史跡が集中しているが、これもその一つ。そして日本の考古学史上、初の本格的な学術調査の行われた場所として有名なところである。時は元禄の世、1692年のこと。何と水戸光圀公こそが、その調査のプロデューサーだった。さらに車を走らせると、「那須郡衙(ぐんが)遺跡」が発掘された近くに、「風土記の丘資料館(小川館)」がある。共通券なので両方行くべし。那須と言ってもずいぶん茨城に近い方で、ここらまで那須野。
   (国造費解説、湯津上資料館、下侍塚古墳)
 という古代探訪から、今度は一気に近代へ。この地域には「三島」「青木」といった地名が残っている。那須疎水完成後、政府は那須野を払い下げ、競ったように明治の元勲がこの地域の開拓に乗り出したのである。三島通庸、青木周蔵、大山巌、山縣有朋、松方正義らである。知ってるかな。最後の二人が総理経験者。どちらかというと歴史の悪役みたいな人も多いけど。このうち、自由民権の弾圧知事として有名な三島の別邸は焼けて、跡地が那須野博物館になっている。(栃木県令の三島が払い下げを受けるのもどうかと思うが。)それ以外の人の別邸は残っている。またここらは乃木将軍の別荘があった場所としても知られている。那須野に残る近代史跡の素晴らしさはもっと多くの人に知られて欲しい。

 建物で一番素晴らしいのは、内部まで公開されている「青木別邸」である。これは外相や駐英公使として条約改正に務めた青木周蔵の建てた洋館で、とても美しい。今は道の駅「明治の森・黒磯」として整備されていて、レストランや物産館もある。国指定重文で、夫人がドイツ人だったからか本格的洋館として見所が多い。ここは前に見たので今回はパスして、ジェラートを食べただけ。
 
 今も発展しているところと言えば、薩摩出身の総理大臣(というより大蔵卿時代の「松方デフレ」で有名な)松方正義の開いた松方農場で、これが今の「千本松牧場」である。西那須野塩原インターを出てすぐ。前にも行ったことがあるけど、今回は雨が小康状態だったので、中をゆっくり歩いてみた。桜が道に散りしきっている。牧場の端の方にある「松方別邸」も遠望することができる。まだ松方家が使っているとのことで非公開。場所は千本松農場にある地図をじっくり見るとわかる。裏道もあって裏も見られる。ここはおみやげも豊富、牛乳やヨーグルトもおいしいし、動物とふれあったりスポーツもできるので家族連れで楽しめる好スポット。(1日目の宿にあった「牛乳無料券」で飲んだ牛乳が美味しかったので、ヨーグルトやシュークリームを買って2日目の宿で食べてしまった。まさに無料券を配る目論見通りだけど、美味しかった。)


 塩原には乃木神社があり、そこに「乃木別邸」がある。これは洋館ではなく和風である。この家は乃木がヒマな時代に「晴耕雨読」していたところで、地域一帯に乃木将軍の逸話が多い。乃木将軍が行った温泉で有名なのが大丸温泉。乃木温泉というホテルもある。2012年は明治天皇没後100年、つまり乃木「殉死」100年である。乃木希典も振り返られるのだろうか。家の前に池があり、これは戦後出来た池だが、夫人の名を取って静池という。池越しに別荘を望むと少し見える。別荘の周りは自然に囲まれた林になっていて、気持ちいい散歩コース。
 
 乃木別邸から少し行くと、大山巌の開いた大山農場があったところで「大山別邸」がある。大山は長く陸軍に君臨し元老となった人物。今は「那須拓陽高校」の農場となっていて、別邸は公開されていないので道に案内がない。だから探すのに苦労したが、「大山農場」がヒントになって見つけることができた。ただし高校の管理下にあることを踏まえて連絡をすれば外観は見学可能。
 塩原から矢板に入ると、長州閥の親玉で首相も務めた山縣有朋の農場があったところ。山縣は目黒の椿山荘を初め庭園を残した人でもある。小田原にあって関東大震災で倒壊後に移築された「山縣別邸」がここにあり、山縣有朋記念館になっている。写真の左側洋館が有朋時代も建造で、右は後で作られたもの。 
  (左が大山別邸、右が山縣別邸)
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南房総の温泉旅行

2012年01月16日 00時08分11秒 |  〃 (温泉)
 千葉県はあまり温泉がなかったが、近年はいろいろ温泉旅館が増えている。まあ、大体は循環なんだけど、いくつかは「源泉掛け流し」もある。(低温で加熱が必要な所ばかりだけど。)その一つの「安房自然村」の「不老山薬師温泉」というところに行って来た。この土曜日に安くなるプランを見つけたので、急な旅行。ネットで見つけたのが月曜日で、それからの計画だから、自分でも突然でどこに行きたいという考えもないまま。

 宿はともかく、料理は値段以上だったかな。風呂はホテルから外へ出なければいけないんだけど、こんなトンネルをくぐって行く。「メタほう酸、メタけい酸泉」という珍しい泉質で、茶色い湯。大きい方の湯船はこんな感じ。薬師温泉と名付けてるくらいだから効能があるような…。
  

 一日目、早く着いたから少し足を延ばして、野島埼灯台。もう四半世紀前に行ってるけど、灯台大好きなので。前はもう覚えてないし。下の海岸沿いは彫刻公園になっていて、なかなか面白かった。日曜日は自然村の中をハイキング、それから海の方へ出て砂浜を歩く。宿の真下が布良(めら)海岸で、ここは青木繁が昔訪れて名作「海の幸」を描いたところである。記念碑も立っている。布良海岸の向こうには伊豆大島が見える。(中の写真が青木繁記念碑。)
  

 そこから館山市内に戻り、館山城。戦国時代の里見氏の城で、天守閣風の建物は1982年に建てられた「八犬伝博物館」。最上階からの眺めは素晴らしい。
 海沿いに北上して、保田に寄って水仙を見て行く。南房のフラワーラインは2月半ば頃からが一番の観光シーズンだが、今は花も紅葉もなかりけり。アロエと水仙くらいだったけど、ここの水仙は素晴らしく咲いていた。道々に真っ盛りで、観光バスも来てる。伊豆の爪木崎は行ったことがあるが、ここは初めて。駐車場には「水仙トイレ」が。
   

 南房総は家から近いし、千葉県市川市に住んでいた時期もあって、それなりに行っている。山と温泉が好きで、あまり行かない時期もあったけど、最近は時々行っている。宿もいろいろある。高速道路が富浦(ビワで有名)まで通って、房総半島の南部に行きやすくなった。暖かいから、春の花の時期に行くことが多いが、今回はさすがの南房も寒かったな。まあ、面白くて安くて美味しい温泉に行きたい人は、いいんじゃないか。(なお、戦争関係の史跡、頼朝や里見氏関係の史跡、自然や観光施設などいろいろ見所はあるけれど、行ってるところが多い。今回見た所以外にもたくさんの見所があることを付言。)
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