チェコ出身の写真家ジョセフ・クーデルカ(1938~)の全貌を見渡すジョセフ・クーデルカ展を国立近代美術館で開催中。1月13日まで。今日見たんだけど、とても素晴らしいので紹介。この人は1968年にソ連が「プラハの春」をつぶしたチェコスロヴァキア侵攻事件の写真を撮った人である。東欧諸国の「ジプシー」を撮りに行っていて、侵攻前日に帰国していた。その写真は侵攻一年目の1969年に外国に持ち出され、大変大きな反響を呼んだ。その写真は2011年に東京都写真美術館で公開され、「クーデルカ展とセヴァンの地球のなおし方」の記事で紹介した。今回はその時の写真もあるが、その前、その後の写真が大部分を占める。報道写真家ではない、クーデルカの本当の偉大な業績が初めてまとまって公開された。
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全部で、7つのパートに分かれているが、圧倒的なのは「ジプシーズ」と「カオス」。最初と最後である。初期作品もあり、学生時代に中古カメラで撮った時から、彼は「作家」だったことが判る。実験的作品も撮りながら、彼は主に二つの領域で自分の写真を確立していった。一つは「劇場」写真で、演劇舞台のエッセンスを伝える写真群。60年代プラハで演じられたシェークスピア、チェーホフなどの舞台と俳優を永遠に伝えている。もう一つが「ジプシーズ」で、チェコスロヴァキア各地やルーマニアなどの「ジプシー」の人々を訪ね歩き、その生活のひだ、喜びと哀愁のドラマを写真に遺した。トニー・ガトリフやエミール・クストリッツァの映画で見た、東欧の「ジプシー」の生活とエネルギーを感じることができる。質量ともに圧倒的で、ドラマチックな写真の数々二はすっかり魅了された。(なお、原題は英語で「 Gypsies」。)
そこで「侵攻」が入り、クーデルカは1070年に出国したまま帰らなかった。ヨーロッパ各国を渡り歩き、イギリスが長かったが、その後フランスにわたりフランス国籍を取得した。その間の各国で撮った写真が「エグザイルズ」としてまとまっている。うっかりするとここを見逃すが、会場に置いてあったカタログを見ていたら、こんな写真があったかなと思い、再び見直した。「ジプシーズ」に圧倒され、また最後の「カオス」が素晴らしいので、うっかり簡単に通り過ぎてしまうが、この「エグザイルズ」は一編一編が素晴らしい短編小説を書き始められるような写真である。見てると、スペインやイタリアやアイルランドで、どのような自然の中で人々の生活が営まれているか…。一つ一つの写真が深い。
最後に「カオス」であるが、英仏海峡地帯を撮るときにパノラマカメラを使ったのをきっかけに、ヨーロッパの山奥都市の廃墟、イスラエル、レバノンなどの風景写真をパノラマで撮っていく。これは黙示録的な世界で、非常にダイナミックな写真である。「文明論的」と解説にあるが、文明論というか、昔流行った「終末論」的というか、人間以前または人間以後の世界というべき壮大な写真もある。しかし、イスラエルやレバノンでは再び戦車のある風景もパノラマで撮っている。このように実に様々な写真を撮ってきたけれど、いずれも見る者に鮮烈なイメージを喚起する写真。なお、同年生まれの日本の写真家、森山大道の「にっぽん劇場」を2階で展示している。もちろん常設展示も同時に見られるので、近代日本の名作を時間があるなら見ることができる。12月7日(土)には、飯沢耕太郎(写真批評)氏の「ジョセフ・クーデルカの写真世界」という講演も予定。時間:14:00-15:30(予約不要)。本人にも会った時のエピソードがあるという。
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全部で、7つのパートに分かれているが、圧倒的なのは「ジプシーズ」と「カオス」。最初と最後である。初期作品もあり、学生時代に中古カメラで撮った時から、彼は「作家」だったことが判る。実験的作品も撮りながら、彼は主に二つの領域で自分の写真を確立していった。一つは「劇場」写真で、演劇舞台のエッセンスを伝える写真群。60年代プラハで演じられたシェークスピア、チェーホフなどの舞台と俳優を永遠に伝えている。もう一つが「ジプシーズ」で、チェコスロヴァキア各地やルーマニアなどの「ジプシー」の人々を訪ね歩き、その生活のひだ、喜びと哀愁のドラマを写真に遺した。トニー・ガトリフやエミール・クストリッツァの映画で見た、東欧の「ジプシー」の生活とエネルギーを感じることができる。質量ともに圧倒的で、ドラマチックな写真の数々二はすっかり魅了された。(なお、原題は英語で「 Gypsies」。)
そこで「侵攻」が入り、クーデルカは1070年に出国したまま帰らなかった。ヨーロッパ各国を渡り歩き、イギリスが長かったが、その後フランスにわたりフランス国籍を取得した。その間の各国で撮った写真が「エグザイルズ」としてまとまっている。うっかりするとここを見逃すが、会場に置いてあったカタログを見ていたら、こんな写真があったかなと思い、再び見直した。「ジプシーズ」に圧倒され、また最後の「カオス」が素晴らしいので、うっかり簡単に通り過ぎてしまうが、この「エグザイルズ」は一編一編が素晴らしい短編小説を書き始められるような写真である。見てると、スペインやイタリアやアイルランドで、どのような自然の中で人々の生活が営まれているか…。一つ一つの写真が深い。
最後に「カオス」であるが、英仏海峡地帯を撮るときにパノラマカメラを使ったのをきっかけに、ヨーロッパの山奥都市の廃墟、イスラエル、レバノンなどの風景写真をパノラマで撮っていく。これは黙示録的な世界で、非常にダイナミックな写真である。「文明論的」と解説にあるが、文明論というか、昔流行った「終末論」的というか、人間以前または人間以後の世界というべき壮大な写真もある。しかし、イスラエルやレバノンでは再び戦車のある風景もパノラマで撮っている。このように実に様々な写真を撮ってきたけれど、いずれも見る者に鮮烈なイメージを喚起する写真。なお、同年生まれの日本の写真家、森山大道の「にっぽん劇場」を2階で展示している。もちろん常設展示も同時に見られるので、近代日本の名作を時間があるなら見ることができる。12月7日(土)には、飯沢耕太郎(写真批評)氏の「ジョセフ・クーデルカの写真世界」という講演も予定。時間:14:00-15:30(予約不要)。本人にも会った時のエピソードがあるという。