朝日新聞12月4日付紙面に「教員10年研修廃止へ」という記事が掲載された。(氏丘真弓編集委員によるもの。)この問題をめぐって考えておきたい。この「10年研修廃止」というのは、まあ廃止しないよりは現状としてはいいのだろうけど、要するに「教員免許更新制永続化」ということである。教員免許更新制という制度は、中教審でも一度は取り入れられなかった問題が第一次安倍内閣の政治マターとして強引に施行された経緯がある。よって、安倍内閣が再来してしまった以上、廃止という選択肢は文科省にはないのだろうが。
記事によれば、文科省の「教員免許更新制度の改善に係る検討会」で、13日に廃止の方針を決めたということである。ただし、2015年の法改正を目指すとあり、来年はまだ存続している。さらに、「10年研修をするかどうかは各自治体の判断に任される」という制度設計になるようなので、必ず廃止されるとは限らない。
ところで、更新制が本当に発動されてしまった時に、教師も勉強しなくてはいけないなどと真顔で語る人が結構いたのに驚いた。それ以前には更新制ではなく、「10年研修」の方を選択したという教育行政の流れを知らないのである。だから、「10年研修」が廃止にならないまま「更新講習」も義務付けられ、同じ年に重なる教員には重すぎる負担になっていた。そのことが問題であるのは、更新制実施時から文科省も認めてはいた。(記事によれば、10年研修対象者1万2900人のうち、2200人ほどが重なっているという。)教員には自明のことだが、一応説明しておくと、「10年研修」というのは「10年経験者研修」のこと。教員に採用されて10年たつと義務となる。一方、「更新制」は教員免許を10年期限とすると言いつつ、主に事務的な管理しやすさの点から、35歳、45歳、55歳と年齢で区切ることにした。だから何歳の時に教員に採用されたかということにより、一定数の教員は両方かぶってくるわけである。
「10年研修」は「教育公務員特例法の一部を改正する法律」が、2002年6月12日に公布され、2003年4月1日から施行されて始まった。必ずしも10年ではない場合もあるが、一応法律上は10年をめどに実施する。従って教員人生に一回である。しかし、東京都教委などは、20年研修、30年研修も作ったので、負担感はかなり大きかった。法に上乗せした部分は、さすがに更新制実施で廃止されたが。
「10年研修」の中身として文科省が例示したのは、「夏季・冬季の長期休業期間等に,20日間程度,教育センター等において研修を実施すること」「課業期間に,20日間程度,長期休業期間中の研修において修得した知識や経験を基に,主として校内において研修を実施すること」ということで、校外20日、校内20日というのだから、これはものすごく大変である。
更新制の方は、「自費で申し込む」「出張にならない」「校種を問わず、何でもいい」、特に「講習に合格しないと失職するという脅しが掛かっている」という何とも納得しがたい問題がつきまとう。しかし、なによりわが身が大切と、自宅から行きやすく自分の関心により近い講習にさっさと申込みさえすれば、中味は座学が中心だから「10年研修」より楽なのかもしれない。ただし、教員人生に3回あるわけだが。(もっとも管理職や主幹教諭になれば、この更新講習をスルーできるが。)
教員にとって、研修は義務であり、権利でもある。「義務」というのは、「教育公務員特例法」に以下のようにあるわけである。
第二十一条 教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。
2 教育公務員の任命権者は、教育公務員の研修について、それに要する施設、研修を奨励するための方途その他研修に関する計画を樹立し、その実施に努めなければならない。
また「権利」というのは、同法に以下のようにあるのを見れば、校長や教委の承認がいるのは当然だが、勤務時間内に勤務場所を離れて研修することができるわけで、これは「研修の権利」があるとも言えるのである。
(研修の機会)
第二十二条 教育公務員には、研修を受ける機会が与えられなければならない。
2 教員は、授業に支障のない限り、本属長の承認を受けて、勤務場所を離れて研修を行うことができる。
3 教育公務員は、任命権者の定めるところにより、現職のままで、長期にわたる研修を受けることができる。
ここに定められた教員研修の本質からすれば、教員が研修するのは当然で、その方法は「10年研修」でもなく、「更新制」でもないものを模索して行かなければならない。教育界の状況もどんどん変わって行くし、求められるものも変わって行く。大学で学んだ教育心理学では太刀打ちできない精神疾患や発達障害への最新の理解も不可欠である。大学や企業などもどんどん変わっているので、進路指導も大変だ。そのうえ触法少年や虐待児童への法的制度、生活保護など社会福祉の制度、年金や健康保険などの制度、そういうものも案外教員は知らないものである。関係するケースに当たって初めて知るようなことが多い。自分の担当する教科はもちろんだが、他にも知っておかないと生徒理解が行き届かないということが昔より格段に多くなった。
そういうことを考えると、校内事情を考えつつ、10年に一度ではなく、あくまでも勤務校での校内研修を軸に、夏季休暇などには都道府県教委や大学等での研修、および自主的な校外研修が重要だと思う。しかし、まあ考えても実現しないのだから、もう書くのはやめる。更新制については、折に触れまた書きたい。
記事によれば、文科省の「教員免許更新制度の改善に係る検討会」で、13日に廃止の方針を決めたということである。ただし、2015年の法改正を目指すとあり、来年はまだ存続している。さらに、「10年研修をするかどうかは各自治体の判断に任される」という制度設計になるようなので、必ず廃止されるとは限らない。
ところで、更新制が本当に発動されてしまった時に、教師も勉強しなくてはいけないなどと真顔で語る人が結構いたのに驚いた。それ以前には更新制ではなく、「10年研修」の方を選択したという教育行政の流れを知らないのである。だから、「10年研修」が廃止にならないまま「更新講習」も義務付けられ、同じ年に重なる教員には重すぎる負担になっていた。そのことが問題であるのは、更新制実施時から文科省も認めてはいた。(記事によれば、10年研修対象者1万2900人のうち、2200人ほどが重なっているという。)教員には自明のことだが、一応説明しておくと、「10年研修」というのは「10年経験者研修」のこと。教員に採用されて10年たつと義務となる。一方、「更新制」は教員免許を10年期限とすると言いつつ、主に事務的な管理しやすさの点から、35歳、45歳、55歳と年齢で区切ることにした。だから何歳の時に教員に採用されたかということにより、一定数の教員は両方かぶってくるわけである。
「10年研修」は「教育公務員特例法の一部を改正する法律」が、2002年6月12日に公布され、2003年4月1日から施行されて始まった。必ずしも10年ではない場合もあるが、一応法律上は10年をめどに実施する。従って教員人生に一回である。しかし、東京都教委などは、20年研修、30年研修も作ったので、負担感はかなり大きかった。法に上乗せした部分は、さすがに更新制実施で廃止されたが。
「10年研修」の中身として文科省が例示したのは、「夏季・冬季の長期休業期間等に,20日間程度,教育センター等において研修を実施すること」「課業期間に,20日間程度,長期休業期間中の研修において修得した知識や経験を基に,主として校内において研修を実施すること」ということで、校外20日、校内20日というのだから、これはものすごく大変である。
更新制の方は、「自費で申し込む」「出張にならない」「校種を問わず、何でもいい」、特に「講習に合格しないと失職するという脅しが掛かっている」という何とも納得しがたい問題がつきまとう。しかし、なによりわが身が大切と、自宅から行きやすく自分の関心により近い講習にさっさと申込みさえすれば、中味は座学が中心だから「10年研修」より楽なのかもしれない。ただし、教員人生に3回あるわけだが。(もっとも管理職や主幹教諭になれば、この更新講習をスルーできるが。)
教員にとって、研修は義務であり、権利でもある。「義務」というのは、「教育公務員特例法」に以下のようにあるわけである。
第二十一条 教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。
2 教育公務員の任命権者は、教育公務員の研修について、それに要する施設、研修を奨励するための方途その他研修に関する計画を樹立し、その実施に努めなければならない。
また「権利」というのは、同法に以下のようにあるのを見れば、校長や教委の承認がいるのは当然だが、勤務時間内に勤務場所を離れて研修することができるわけで、これは「研修の権利」があるとも言えるのである。
(研修の機会)
第二十二条 教育公務員には、研修を受ける機会が与えられなければならない。
2 教員は、授業に支障のない限り、本属長の承認を受けて、勤務場所を離れて研修を行うことができる。
3 教育公務員は、任命権者の定めるところにより、現職のままで、長期にわたる研修を受けることができる。
ここに定められた教員研修の本質からすれば、教員が研修するのは当然で、その方法は「10年研修」でもなく、「更新制」でもないものを模索して行かなければならない。教育界の状況もどんどん変わって行くし、求められるものも変わって行く。大学で学んだ教育心理学では太刀打ちできない精神疾患や発達障害への最新の理解も不可欠である。大学や企業などもどんどん変わっているので、進路指導も大変だ。そのうえ触法少年や虐待児童への法的制度、生活保護など社会福祉の制度、年金や健康保険などの制度、そういうものも案外教員は知らないものである。関係するケースに当たって初めて知るようなことが多い。自分の担当する教科はもちろんだが、他にも知っておかないと生徒理解が行き届かないということが昔より格段に多くなった。
そういうことを考えると、校内事情を考えつつ、10年に一度ではなく、あくまでも勤務校での校内研修を軸に、夏季休暇などには都道府県教委や大学等での研修、および自主的な校外研修が重要だと思う。しかし、まあ考えても実現しないのだから、もう書くのはやめる。更新制については、折に触れまた書きたい。