尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

森友文書書き換え問題②

2018年03月11日 22時40分37秒 | 政治
 森友文書書き換え問題の続き。12日にも財務省は文書書き換えを認める報告をすると報じられている。それを前提に、事態は「責任がどこまで広がるか」に移っている。この書き換えは法に触れるのだろうか。一回目の記事で、「書き換え、または変造、偽造」と表現した。僕は本質の問題としては「偽造」に近いと思うのだが、それが違法行為かどうかははっきりと言えないと思う。(司法当局は立件しない方針と伝えられる。)

 公文書「偽造」は、公文書を作成する権限がない者が公文書をまねた文書を作る行為だから、今回の事態には該当しない。「正式に決裁権限のある者が、書き換えた文書を改めて決裁した」わけで、決済する権限自体はある。ある意味で「二つの文書はともに正式な文書である」と言い抜けられる側面もある。(もっともそんな形式的議論をすれば、「決裁文書の書き換え」を別に起案決済していないとまずいのではないかと思うが。)

 だが、このような議論をしていても「書き換えに関わった公務員の責任」という枠を出られない。同じ起案番号を取るのは一般職員の権限では難しいだろうから、何らかの幹部職員の関わりが考えられる。一部では辞任した佐川国税庁長官、当時の理財局長の国会答弁に合わせるため、佐川氏の指示があった可能性が言われている。それはありうると思うが、では佐川氏だけに責任があるのか。佐川氏をかばい続けてきた麻生財務相にも重大な政治責任がある。

 佐川氏にも麻生大臣にも、「何のために財務省の文書が書き換えられたのか」を問わなければいけない。それは佐川氏や麻生氏の自己保身のためではない。今回はっきりしたのは、財務省が「本件の特殊性」を自覚していて、それは国会に知られてはまずいことだったことである。何故だろうか。普通に考えれば、森友学園への破格の国有地払い下げには首相夫人の影響力が働いていたということだろう。だからこそ、書き換え文書を国会に出してきたわけである。

 いや、この「特殊性」とはそういうことではないと言い張ると思うが、書き換えたという事実が事態の重大性を示している。最初に書き換えの法的議論のところで「本質の問題としては偽造に近い」と書いた。それはそういう意味で、「首相夫人の関与が考えられる表現」が削除されて発表されたのだから、「歴史を偽ろうとする悪意」で行われた。そして佐川氏や麻生大臣の国会答弁は、自己の所属する組織を守るためでもあるだろうが、それ以上に安倍首相を守る目的だった。

 佐川氏は国税庁長官を辞任し、記者会見した麻生大臣によれば今後さらなる処分もありうるとのことだ。そういうことを平気で言ってるけど、本来なら麻生大臣も辞めるか、少なくとも自分がトップを務める組織で起こったことを謝罪するべきだ。だが、佐川氏や麻生氏はそれでも国会で答弁せざるを得ないが、この決裁文書の時点では「名誉校長」だった安倍首相夫人は何らの説明をしていない。「小学校の名誉校長」には(その後辞めたと言っても)社会的責任があるはずだ。「あの夫にしてこの妻あり」(またはその逆)かもしれないが、これで済ませてはおかしい。

 以上の議論は森友学園問題の話だが、もう一つ重大な論点がある。国会に提出する文書を書き換えたという点である。国会は国権の最高機関である。行政の側でここまで国会をないがしろにしたことがあるだろうか。現実にはいっぱいあるとも言えるが、これほどヒドイ問題は記憶にない。このままでは国会の権威が(いま以上に)地に堕ちてしまう。国会の側で厳しく対応しないといけない。少なくとも「財務相のクビを持ってこい」ぐらいにならないと野党の意味もない。

 官僚の目もこの問題の行く末を注視しているだろう。こんな書き換え、当事者以外は誰も判らないから内部からの情報があったと推測できる。あまりにもひどいので、保険の意味でコピーを取っておいたのだろう。だが前川氏は個人の行動を新聞に書かれたし、プサン総領事は個人的会食時の会話が官邸に知られてクビになった。非常に用心深く行動せざるを得ない。だが今年になっても、「働き方改革」でのデータ問題なども、政治家ではなく官僚の責任にされかねない。官僚の処分だけで終われば、もはや安倍政権のために汗をかく官僚はどこにもいなくなるだろう。

 最後にもう一点。朝日新聞はなぜ3月2日に報道したのだろうか。その日まで確認作業が必要だったと言うだろうが、それでもここまでの特ダネなら「いつ書くか」を考えないはずがないと思う。ピョンチャン五輪が終わり、パラリンピックと「3・11」までの間。そして、衆院での予算案通過直後。もしこの報道が26日(月)だったら、予算案の衆院審議は止まったのではないだろうか。2月28日に衆院を通過したことにより、憲法の規定で予算案の年度内成立が確定した。僕はそれを待って報道したような気がする。

 予算成立には影響させないことで、安倍政権の反発は多少は和らぐはずだ。一方、25日に予定されている自民党大会までに決めるとされている改憲案の取りまとめは、もし麻生辞任などの「政局」になればかなり難しいのではないだろうか。今回の書き換え問題は、安倍総裁の3選、憲法改正発議にも大きな影響を与える事態になるだろう。それほど重大な特ダネは、やはり報道時期を考えてなされたように思うのである。
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