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尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

恐怖のノビチョクーロシアのナバリヌイ氏暗殺未遂事件

2020年09月08日 22時06分05秒 |  〃  (国際問題)
 ロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナバリヌイ氏(44歳)が8月20日にシベリアからモスクワへ向かう旅客機内で重体となった。飛行機は緊急着陸して病院に搬送されたが、意識不明の重体だった。その後ドイツの病院に輸送され、9月2日にドイツ政府は神経剤ノビチョクと同系統の毒物が使われた証拠があると発表した。ナバリヌイ氏は当日は紅茶を飲んだだけだということで、関係者は紅茶に毒物を入れられた可能性が高いとしている。
(ナバリヌイ氏)
 中国の反体制派への弾圧や香港情勢、あるいはアメリカの「アフリカ系への警察の暴力」あるいは「銃社会の悲劇」など、恐ろしいニュースがよく伝えられる。一方、ロシアの反体制派事情などは日本ではあまり報道されない。ここではロシアを取り上げて見てみたい。(それでも時々は報道される。特派員などもいなくて、全然報道されないイエメン内戦ソマリア情勢などの方がもっと大変なんじゃないかと思う。)

 ナバリヌイ氏と言われても、どういう人かよく判らない。調べてみると、21世紀になってから急速に若き反体制派リーダーとして知られてきた。2017年には当時のメドヴェージェフ首相を腐敗していると告発する動画を公開した。2014年には「反汚職・リベラル・親欧米」を掲げる進歩党を結成し党首となった。しかし、デモなどで何度も逮捕された他、2012年には「横領罪」で起訴され、その後も「詐欺罪」などで起訴され有罪となっているが、それらは疑問の多い裁判だった。しかし「有罪」ということで、2018年の大統領選には立候補が認められなかった

 ロシアの反体制派と言えば、2015年に起きたネムツォフ氏(当時55歳)の暗殺事件も恐ろしい事件だ。環境運動家だったボリス・ネムツォフは1990年に政界入りして、1991年のクーデター事件でエリツィンを支持した。その関係から、1997年にはエリツィン政権で第一副首相となった。しかし、プーチン時代になってからは外資とのつながりを批判されて勢力が衰えた。2004年のウクライナのオレンジ革命ではユーシェンコを支持して、その後大統領顧問となった。2015年2月27日、モスクワ川の橋上で銃撃され死亡した。犯人は捕まっていない。翌々日にはウクライナへの軍事介入を批判するデモを予定され、ネムツォフも呼びかけ人だった。
(ネムツォフ氏)
 このようにロシアでは反政府の政治家は命をねらわれる危険がある。2006年には反体制ジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤの暗殺事件も起きている。また、同じ2006年には元KGB職員のアレクサンドル・リトビネンコがロンドンで毒物中毒によって死亡する事件も起きた。一方、ロシアのスポーツ界では、ドーピングが組織的に行われているというか、ドーピング逃れの組織がある(あった?)と言われる。その状況を見ると、どうもソ連時代からの情報機関が今も活動しているのかと疑問を持つことがある。

 2018年に起こったイギリスでの元スパイ暗殺未遂事件を見ても、どうも恐ろしいという感じがする。KGB職員だったセルゲイ・スクリパリはイギリスの二重スパイだった。露見して服役していたが、米ロの交換で出国して、その後イギリスに亡命した。そのスクリパリは2018年3月4日にソールズべりのショッピングセンターで娘とともに倒れていたところを発見された。その後回復したようだが、恐ろしいことは全く無関係の人物が犠牲になったことだ。ドーン・スタージェス(44)という女性がどういう経緯か判らないが神経性毒物で死亡したのである。スクリパリ親子に使用した毒物に何らかの形で触れたためと思われている。もう一人重体になった人もいる。
(ドーン・スタージェスさん)
 この毒物といわれているのが「ノビチョク」(英語表記 Novichok)という旧ソ連で開発されたとされる神経毒物である。VXガスやサリンなどオウム真理教が使用した化学兵器よりも、さらに毒性が強いといわれる。ただし、ロシアはそういう研究はしていないと否定している。化学兵器禁止条約加盟に伴い工場は閉鎖され、ウズベキスタンにあった工場は、独立後にアメリカの協力で解体されたとされる。しかし、ロシアはかつて製造されたノビチョクを持っていると言われている。あるいは秘密裏に今も作っているのかもしれないが、なんとも判らない。「ノビチョク」という名前は開発時のコードネームで、国家機密なんだろうが存在することは間違いない。都合の悪い人物を毒ガスで殺してしまうという、オウム真理教や北朝鮮による金正男暗殺みたいなことが、ロシアで続いているのは恐ろしい。どう考えたらいいのか、よく判らないけれど。
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