尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

五代目春風亭柳朝三十三回忌追善興行

2023年02月17日 23時22分51秒 | 落語(講談・浪曲)
 浅草演芸ホールで行われている「五代目春風亭柳朝三十三回忌追善興行」も20日まで。1月下席の4代目桂三木助追善興行は、まだ落語に行ける心境じゃなくて見送った。今回は連日立ち見という評判だし、もうそろそろいいかなと思って、行くことにした。寒いから、つくばエクスプレスで演芸ホールの真下まで行くことにした。地上に出たら、ズラッと行列が…。アレと思ったら、東洋館のものだった。そこは昔のフランス座で、今は漫才専門館。今日はナイツやU字工事も出る。大行列のわけである。

 ところで「五代目春風亭柳朝」(1929~1991)って誰だっけ。60年代に「若手四天王」と言われた一人だということは知っている。他の三人は古今亭志ん朝立川談志5代目三遊亭円楽なんだから、それに並ぶ人気者だったのである。テレビにも出ていたというから、当時よく落語番組を見てた僕が知らないはずがない。でも、覚えていない。若い頃は寄席や落語会には行かなかった。だから、1980年に弟子の春風亭小朝が「36人抜き」で真打に昇進したニュースは覚えているのに、師匠の名を忘れていた。
(五代目春風亭柳朝)
 五代目柳朝の師匠は、8代目林家正蔵(後の林家彦六)である。(この人の戦中日記を読んだ感想は「『八代目正蔵戦中日記』を読むー戦時下の寄席と東京」に書いた。)7代目林家正蔵は、先代林家三平の父だった。一代限りということで蝶花楼馬楽が借りて、1950年に8代目正蔵を継いだ。現在の9代目正蔵は、林家三平の息子だから名跡は戻ったわけである。という経緯があって、8代目正蔵は一番弟子に「林家」ではなく、春風亭という亭号を付けさせた。その頃の「春風亭」には落語芸術協会(前名=日本芸術協会)を立ち上げて44年間会長を務めた春風亭柳橋がいたので、正蔵は柳橋に断りを入れたという。

 柳朝の一番弟子は春風亭一朝だが、真打に昇進したのは1982年12月だった。二番弟子の春風亭小朝の昇進が80年5月だから、兄弟子を抜いてしまったのである。ところで、今回は出ていないが、一朝の二番弟子が最近「笑点」メンバーになった春風亭一之輔で、2011年に21人抜きで真打に昇進した。一之輔が売れたせいもあって、一朝も最近よく寄席で聞く機会が多い。しかし、一之輔は兄弟子を抜いたわけではない。一朝の一番弟子が、2007年に真打に昇進した6代目春風亭柳朝で、孫弟子が大師匠の名を継いだことになる。連日トリを取っていて、今日は堅すぎる若旦那を稲荷参りと称して吉原に連れて行く「明烏」を熱演していた。
(6代目春風亭柳朝)
 今回はプロデューサーとしての春風亭小朝の力が見事に発揮された公演だと思う。特に話題になったのが、三遊亭好楽が40年ぶりに落語協会定席に出たこと。好楽はもともと8代目正蔵の弟子で、林家久蔵の名で81年9月に真打に昇進した。しかし、82年に師匠が亡くなり、83年になって落語協会を脱退して5代目三遊亭円楽一門に移籍して三遊亭好楽を名乗ったのである。つまり、好楽はもともとは5代目柳朝と兄弟弟子なのである。そこで特例として、今回の追善興行に参加を認められた。それが小朝の力である。林家木久扇も8代目正蔵の弟子として、何回か出演している。今日は息子の林家木久蔵だったけど。
(春風亭小朝)
 今日は5代目柳朝の兄弟弟子は三遊亭好楽三代目八光亭春輔。5代目柳朝の弟子からは、春風亭一朝春風亭小朝春風亭正朝春風亭勢朝いなせ家半七と勢揃い。孫弟子としては、一朝の弟子の6代目春風亭柳朝春風亭三朝春風亭一左、小朝の弟子が(師匠没後に移籍した勢朝、半七を除き)、蝶花楼桃花。(五明楼玉の輔もプログラムにあるが欠席だった。)初めて聞いた人も多くて、こういう機会は貴重だ。これに9代目林家正蔵が加わって、実に豪華な布陣に満足。

 今回は噺の中身にほとんど触れず、人名ばかり並べてる。僕がここまで詳しいわけがなく、ウィキペディア等で調べながら書いてるわけだが、それが楽しい。そうだったのかと思うことが多い。「春風亭」は落語協会と落語芸術協会の双方にいるけれど、そんな経緯があったのか。6代目春風亭柳橋の弟子に春風亭柳昇がいて、その弟子が春風亭昇太。落語協会には春風亭一之輔が出て、今や春風亭は注目のまとだ。まあ、僕としては昇太も一之輔も早く「笑点」から卒業して欲しいと思ってるけど。
(カバーby林家たい平=今戸焼のうさぎ)
 色物も面白かったが、浮世節の2代目立花家橘之助の舞台に、21歳の弟子の立花家あまねが同席して、三味線だけでなく舞踊も披露したので驚き。漫才の「にゃん子・金魚」で、金魚ちゃんにホントにバナナを差し入れした客がいたのも驚き。3月末に江戸家猫八を襲名する江戸家小猫も相変わらず上手かった。久しぶりでお尻が痛いけど、やはり面白かったなあ。
コメント
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