尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

第2期トランプ政権はどうなるかー2024米大統領選③

2024年11月11日 21時56分33秒 |  〃  (国際問題)

 2025年1月から4年間のアメリカ合衆国大統領に、ドナルド・トランプが就任することが確定した。トランプが選挙に出るのも、これで最後である。かつてフランクリン・ルーズベルトが連続4期務めたことがあるが、その後憲法修正第22条が1951年に成立して、合衆国大統領は「2期まで」と制限された。これは「連続2期まで」ではなく、間に大統領じゃない時期があっても、「通算で2期」務めればそれで終わりである。(なお、大統領辞任、死亡等により、副大統領から昇格した場合、残り任期が2年以上あれば1期やったとみなす。従って、昇格して約2年、続いて2期と大統領は最長でほぼ10年間務めることがある。)

 ということで、3期目がないトランプはどのように行動するのか? 僕に予想が付くわけもないが、それでも一応考えてみたい。まず、多くの人は最後に「世界的業績」を挙げて、ノーベル平和賞を受賞するなど、歴史に名を残すことを追求するものだ。だが、どうもトランプ大統領に限っては、そんなことは全然気にしない可能性が高いと思う。しかし、やりたい放題を続けると、次期大統領に民主党候補が当選しかねない。その場合、刑事訴追を受けるなど(トランプから見れば)「報復」の心配がある。

 次期大統領に「子飼い」のトランプ派、例えば副大統領のJ・D・ヴァンスのような人物を当選させること。そうなれば、仮に何か問題があっても(大統領就任中に「凍結」された刑事裁判が再開されるなど)、大統領権限で恩赦されて救われる。そのために「内政」「外交」で「実績(と称するもの)」を挙げて、高い支持率を維持するというのが任期中の最大の目標になる。何が何でも「経済安定」、まあ「アベノミクス」一本槍だった時期の安倍内閣みたいになるんじゃないだろうか。

(日本への影響は?)

 トランプ氏の発想法は、自分が強い場合は「敵と取引可能」、むしろ「仲間こそが自分を利用する」というものではないか。特別な生育歴によって、社会的認知に何か問題があるのかもしれない。「日本は同盟国だから」なんて甘い発想は成り立たないと予想する。安倍晋三元首相は「身内」扱いされていたらしいが、安倍氏の政敵だった石破首相はどう思われるんだろうか。

 まあ僕が心配するべき問題じゃないけれど、第1期のことを思い出しても、日本のイメージは「すっかり落ちぶれた長期低落中の経済」ではなく、「アメリカから冨を盗むアジアの国」という80年代頃のまま認識が止まっていた気がする。世界経済はすっかり変わってしまい、今や日本がアメリカへの「デジタル赤字」に悩んでいる。僕もこうしてブログなど書くことによって、GoogleMicrosoftFacebookなどの利益増進に「貢献」している。(Amazonは使わないようにしているけど。)

 世界的IT企業への国際課税タックスヘイヴン(租税回避地)をなんとかしようなんて発想はないだろう。むしろ新興企業経営者に支持されたトランプ政権は自国企業への利益を最大にするように行動するだろう。MAGA帽は中国で作っていたという話があるが、アメリカ経済だって中国に相当程度依存しているにも関わらず、「中国」が最大の標的になる。だから、日本は「お目こぼし」かというと、そんなことはなく「似たようにズルする国」扱いされることを覚悟するべきだ。

(早速プーチンと電話会談)

 「外交」はどうなるか。もう「パリ協定再離脱」は決定事項だと考えて良い。選挙戦中にトランプはウクライナやガザの戦争は「終わらせる」と主張していた。そもそも弱腰のバイデン大統領だから戦争が起こったのであり、自分が大統領だったら戦争は起きなかったとも主張した。もちろんこの考え方は現実の国際政治とは違うだろう。トランプが大統領だったら、プーチンはウクライナに侵攻しなかったのか。むしろウクライナ侵攻を事前に「許可」してしまった可能性の方が高いと思う。

 ハマスのイスラエル奇襲攻撃は、トランプ外交の「成果」がもたらしたと考えられる。トランプ外交によって、サウジアラビアとイスラエルの国交交渉がほぼまとまりつつあった。その交渉はイスラエルの大規模報復によって、凍結されている。僕はこの交渉をつぶすのが、ハマスの目的だったと考えている。トランプが「中東の戦争を終わらせる」というのは、「パレスチナに正義をもたらす」ことを意味しない。むしろパレスチナの犠牲のもとに、イスラエルの「占領」を合法化することを指すはずだ。

 トランプの勝利を世界で一番待ち望んでいたのは、イスラエルのネタニヤフ首相だと思う。1期目のトランプ時代に、アメリカは大使館をエルサレムに移転した。これはバイデン政権も元に戻せなかった。一度やってしまうと、戻せないことが多い。バイデン政権の対応に不満があるからといっても、あんなにネタニヤフ支持だったトランプよりはマシだと思うけど、アメリカ国内ではそう思わないアラブ系有権者も多いらしかった。今後どれほど大変なことが起きるか予測できない。

 まさか国連自体は脱退しないと思うけど、ひょっとするとNATOからの離脱はないとは言えない。国連機関への拠出金凍結は、むしろ当たり前に起きるだろう。もう再選なしなので、怖いものなしになる可能性もある。経済運営はともかく、外交は何が起こるか予測不能な時代がまた来るのかと思うとユーウツ。バイデン外交は成果が乏しかったとは思うが、方向性は理解出来た。トランプ外交は「読めない」が、「何があるか予測出来ないということは予測可能」である。


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