尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

クラス替えはどうするのか②ー様々な配慮を積み重ねて

2024年04月24日 22時50分06秒 |  〃 (教育問題一般)
 「クラス替えはどうするのか」の2回目。1回目では「まず成績順に並べてみる」と書いた。これはおおよそどこの学校でも同じだろうと思う。そこから、いろいろな「配慮事項」を検討していくことになる。おおよそ「要配慮生徒の扱い」「リーダー生徒の扱い」「その他の事項」になるだろう。クラス替えをやり直したというのも、その「配慮」に欠けた点があったということらしい。

 検索していると、「保護者が要望を出して良いのか」という悩みがかなり出てくる。教師がすべて気付けるわけではないから、気に掛かることは伝えた方が良い。1年生の担任が異動して、2年生から新たに担任に入ったようなケースも多い。1年生の時に起こった問題を知らないわけだから、言っておく方が良い。担任に直接言いにくかったら、学年主任や管理職に伝える手もある。学校側は「様々な条件があるので、必ず要望に応えられるとは確約出来ないが、必ず議論して連絡します」と答えるべきだろう。

 さて「要配慮」にも幾つもある。まず最初が「生活指導案件」。多くの中学校では何かしら生活指導上の問題が起こっている。ケンカ、喫煙、いじめ、万引きなどなど。なければいいけど、それでも多少は「ボス的存在」と「子分的存在」(いわゆる「使いっぱ」)が形成されるものだ。良い悪いというより、それが思春期集団というものだろう。だけど学校としては、その集団を「解体」することになる。ボス的存在を別々にしなければ、そのクラスの勉強が成り立たない。ボスと子分を離すのも当然。

 さらに重要なのは、「障害生徒」「不登校生徒」が一クラスに偏らないようにすることである。これは担任の負担平等化である。障害のある生徒は今は「特別支援」という仕組みもあるが、昔はクラスの中に混じっていたことも多い。身体障害、知的障害(傾向)は判るが、かつては「発達障害」の理解が不足していた。当然「自閉症」「学習障害」「ADHD(多動性障害)」、あるいは「緘黙」などの生徒もいたと思う。「不思議な生徒」扱いされていた感じだろうか。「不登校」も昔からあった。

 ところで、「分ける」「離す」と言うけど、具体的にはどうするのか。まあ、4クラス程度あれば、自然に別々になることが多い。それでも同じになっていた場合、「同成績グループ」どうしで交換することになる。しかし、交替可能生徒がまた別の要配慮生徒だったりして、ひとり動かせば玉突き的に大幅な変更になる場合もある。その場合は上下の成績グループで変更可能性を探るしかない。将来はAIでやるのかもしれないが、昔は「紙の生徒名簿」を作って並べ替えていくことが多かったと思う。

 もう一つ「お世話生徒」の問題がある。病弱や障害生徒には、家も近く小学校時代からプリントを届けたり、旅行行事で一緒のグループになったりしてきた生徒がいるものだ。これが難しくて、思春期を迎えると「そろそろ離れたい」と思っていたりすることもある。クラス内で「低位」の生徒を「お世話」していると、自分も「高位」集団に入れない。一方お世話される生徒の方にも「自立」志向が出て来たりする。その問題で保護者から要望されることも多いと思う。僕はざっくばらんに生徒に聞くのも有りだと思う。ちゃんと頼めば、(どっちの場合でも)納得してくれるんじゃないか。

 さて次は「リーダー生徒」である。本当はこれが一番重要だと思う。各クラスには生活面でリーダーになる生徒が必要だ。委員決めや旅行の班分けで、延々と時間を取るわけにいかない。それに3年生だと生徒会役員がいるはずで、普通はクラス委員にはなれない。だから生徒会役員ばかり集まらないように配慮する。またリーダー生徒にも相性があり、やる気があっても打ち消しあってしまうことがある。異性が気になる年代でもあり、リーダーどうしがうまく行くかという問題もある。

 また「行事リーダー」という問題もある。「運動会」にはクラス対抗リレーがあるから、各クラスの足の速い生徒が何人か必要だ。中学では「合唱コンクール」があることが多いだろうが、ピアノ伴奏が出来る生徒が最低一人いないと困る。その他考え始めれば切りがないが、これらのことを考えて当初の案を変えていく。最終的に何が最適か、やってみないと誰にも判らないが、事前にいろいろと練っておくべきのである。

 最後に「その他の問題」。まずは「双子やいとこは別クラスにする」。また4クラス程度あれば、必ず「佐藤」「鈴木」などの生徒が複数いる。出来れば別が望ましいが、同学年に5人以上いれば、どこかのクラスに2人入る。その場合は出来れば性別が違うといいけれど、あまり変えるのも大変ならやむを得ない。それと「旧クラスから最低でも数人入れる」。旧クラスといっても仲が良い関係ばかりじゃないけど、それでも同クラスの人数は数える。中学だと複数の小学校から来ていることが多いが、「卒業小学校別人数」もばらける方が良い。家庭訪問時に同一地区ばかりじゃ不公平になる。
(クラス替えの地域差)
 まあ挙げればもっとあるかもしれないが、およそこんなことを考えるのである。多分「クラス替えの実証的研究」はないんじゃないかと思う。探すと小学校の場合だが、地域差があるという地図が出て来た。その理由などは不明である。実際のクラス替えは、個人情報的観点からはっきりと書けない部分がある。それにいくら配慮したつもりでも、何か忘れてしまうことがある。複数で確認するが、いやあ、しまったという経験もある。だけど、長い目で見れば、新しいクラスが形成されるにつれ、新たな人間関係を作っていくことが多いだろう。教師や親が心配し過ぎない方が良いのかもしれない。
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