臨時国会の焦点になってる「103万円の壁」という問題。これをどう考えれば良いのだろうか。103万円だけじゃなく、106万円とか130万円とかいろんな「壁」もあるらしい。いや、壁じゃないという人もいるようだし、税制は複雑でなかなか判らない。年金や健康保険など社会保険になると、もっと複雑かつ利害が入り乱れて、ここで論じるだけの知識もエネルギーもない。「103万」というのは、本人に所得税が発生するだけでなく、扶養控除が認められなくなる基準になっている。「扶養」は子どもだけでなく、主婦(または主夫)、障害者、高齢者などいろいろあるわけだが、今は主に「学生」を取り上げて少し考えてみたい。
もともと国民民主党の玉木代表が「若者」に焦点を絞っていたためである。テレビでは「もっと働きたいのに、103万円を意識してセーブしている」という若者の声が出ていた。また飲食店経営者から「年末繁忙期に学生が抜けられて困る」という声も出ていた。しかし、他の飲食店オーナーからは、12月に働いた分は来年1月に支払うので「年末繁忙期に抜ける」ことはないという声もあった。もっともアルバイトの場合は月末清算のケースも多いだろうと思うが。
僕はこの若者の声を聞いたときから、ちょっと違和感があった。「学生の本分は学業」である。もっと働いたら勉強はいつするのか。本来は逆であって、「もっと勉強に集中できるように、アルバイトしなくても大丈夫にして欲しい」というのが学生の要求であるべきじゃないのか。つまり、貸与型奨学金の充実とか、奨学金返済の免除などである。本当に困っている学生は、親の扶養など関係なく働くしかないだろう。特に下宿生の場合、何とか学費は出して貰えても、生活費は十分じゃない場合も多いはず。そういう困窮学生は今回の「103万円の壁」には関係ない。親が扶養できる学生の場合だけの話なのである。
この「103万円」という基準は、1995年から変わっていないという。もっとも内容には変化があって、「基礎控除」は2020年まで38万円だった。2021年から48万円である。(2400万円以下の所得の場合。)つまりほぼすべての人の場合、まず収入から48万円が控除される。そして「給与所得控除」が55万円となる。これは2020年以前は65万円だった。結局控除額の合計は変わっていないわけだ。基礎控除は本人の最低限の生活を維持するための金額は所得とは考えないということである。給与所得控除は所得を得るための「必要経費」を(確定申告せずに)ざっくりと算定した金額である。
この控除額に関しては、「最低賃金の伸び」「物価水準」などを基準にして増額させるべきだと言われている。国民民主党は最低賃金を主張しているが、最低賃金は都道府県ごとに違うので合理性が少ない。最低賃金額の伸び率を基準にするなら、控除額も各地で異なるようにするのか。まあ、それはともかく「交渉用の数字」なんだろう。それより、90年代と現在は何が一番違うだろうか。それは「情報通信費」、まあスマホ代である。95年当時は携帯電話(通話機能だけ)がようやく出始めた頃だった。
その後、どんどんヴァージョンアップしていって、今は学生にスマホは必需品だろう。それだけでなく、勉強をしっかりするためにはパソコンとプリンターも必須である。これは自宅学生の場合は家で共用できるかもしれないが、下宿生の場合学校にあるものを利用するだけじゃ不足で下宿でも使いたいだろう。どっちにせよインターネットの通信代が高額なのである。だけど、今はそれがなくては仕事を探すのも不可能、就職にも勉強にも不可欠である。まさに生きるための「必要経費」である。
僕が思うには、まずこのネット環境という「客観情勢の変化」が基礎控除、給与所得控除増額の理由になるべきだと思う。これは今や高齢者にも言えることで、スマホやパソコンなくして映画も見に行けない。(人気映画は事前に予約しないと入れない。)マイナ保険証なんて政府は言っているんだから、スマホ代を補助して欲しいぐらいだ。ゲームなどをしてる場合もあるだろうが、とにかくスマホなくしてバイトは不可能だろう。まさに必要経費というしかない。
ところで、勤労学生の場合「勤労学生控除」というのもある。アルバイトの場合、年末調整されることはほとんどないと思うが、確定申告すれば「27万円」の控除がさらに認められる。(所得金額が75万円以下の場合。)この確定申告を学生はきちんとしているだろうか。学生アルバイトの場合、個人経営の飲食店とか知り合いに頼まれた家庭教師なんかも多いと思うけど、コンビニなんかの方が多いだろう。その場合、銀行口座に所得税を抜いた額が振り込まれることが多いはず。ちゃんと「還付申告」するように、大学や専門学校がきちんと呼びかける必要がある。「手取りを増やす」ためにまずやるべきことだ。
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