尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

2014年7月の訃報

2014年08月02日 23時38分51秒 | 追悼
 未来工業創業者で相談役の山田昭男(7.30没、82歳)が死去した。と言っても知らない人が多いだろう。もともとは岐阜で活動していたアマチュアの「劇団未来」だったのである。演劇では食べていけないことから、1965年に劇団の仲間4人で資本金50万円の会社を設立。それが電設資材メーカーとして、順調に発展していった。「残業禁止」「年間140日の休日」など他の企業に見られない経営で知られ、地域文化への貢献も続けてきた。会社のホームページを見ると、ロシアの国立モスクワマールイ劇場「桜の園」とかアントニオ・ガデス舞踏団「カルメン」の公演を行うなど、ちょっとビックリ。「グループの行動基準」というのが素晴らしく、ちょっと紹介すると「企業活動において不公正な競争は行いません」「従業員の人権を尊重するとともに良好な職場環境の維持を図り、災害等が起こらないよう努めます」などと言った具合。そんな会社が果して儲かるのかと心配する人もいると思うけど、この未来工業は「名証2部」ではあるけれど、れっきとした上場企業なのである。8月1日付の株価は、1540円。単位株は100株なので、15万4000円で買える。(証券会社の手数料等を除く。)一株当たりの配当は会社予想で42円。ちゃんと利益も上げていて、配当性向もいいではないか。この未来工業という存在は、「そんな夢みたいなこと言っててどうするんだ」などと訳知り顔で語る輩のくだらなさを証明している。青春時代の夢は、確かに演劇では実現できなかったけれど、こういう会社を作り上げることで実を結んだ。そういう会社を作ったのが、山田昭男という人だったのである。

 7月に大きく報道された訃報を挙げると、まず元ソ連外相、元グルジア大統領のエドアルド・シェワルナゼ(7.7没、86歳)がある。ゴルバチョフ書記長のいわゆる「ペレストロイカ」を支える「新思考外交」で冷戦終結に大きな貢献をした。ソ連崩壊後、グルジア大統領に祭り上げられたが、グルジアの政情は複雑で任期途中で追われるように辞任した。ゴルバチョフは北カフカスのスタブロポリの生まれで、そこで党内の出世階段を登って行った。そこはグルジアとはカフカス山脈をはさんで隣り合う地区で、その時代から二人はお互いに注目していたに違いない。グリジア党第一書記だったシェワルナゼをゴルバチョフは党中央の政治局員に登用したのである。

 指揮者のロリン・マゼール(7.13没、84歳)は、現代の巨匠で名前はよく知っていたけれど聞きに行ったことはない。パリ生まれの米国人で、欧州での活躍も多かったけれど、バージニア州の自宅で死去と出ている。僕が昔結構クラシックを聴いていた時の評では、華麗にして情熱的なタクト技術が素晴らしそうだったけど、僕には合わない感じを受けたのである。
 コンセプチュアル・アートの第一人者、河原温(かわら・おん 7.10没、81歳)も訃報が大きく掲載されていた。名前を聞いたことはあるし、見たこともあるかもしれないが、僕にはあまり語る言葉がない。

 直木賞作家の深田裕介(7.14没、82歳)は日航出身の作家で、日本企業と海外の活動を題材に多くの作品を書いた。「スチュワーデス物語」などテレビで大ヒットしたものに、今はすべて古書でしか買えないようだ。直木賞の「炎熱商人」や「革命商人」「神鷲(ガルーダ)商人」などは今も一定の文学的、歴史的価値があるのではないか。今の「半沢直樹」などのさらに20年ほど前の話である。文芸雑誌「群像」の元編集長、大久保房雄(7.25没、92歳)は、遠藤周作や吉行淳之介などの作品に関わった人。「純文学の鬼」と言われたそうである。そうした人がいたのである。

 ノーベル文学賞作家のナディン・ゴーディマ(7.13没、90歳)は、南アフリカで反アパルトヘイトの立場から小説を書いたユダヤ系の作家である。昔幾つか読んだけど、事情が違うと、どうもいま一つ分かりにくい感じだった。ジェームズ・ガーナ―(7.19没、86歳)はアメリカの映画、テレビ俳優で「大脱走」で「調達屋」を演じた人。ジェームズ・シゲタ(7.28没、81歳)は日系米国人の俳優で、「ダイ・ハード」のタカギ社長と言えば思い出す人も多いだろう。歌手でも活躍し、57年、58年に紅白歌合戦にも出たとあるけど、これはさすがに時代が違い全然知らなかった。トミー・ラモーン(7.11没、65歳)はロックバンド「ラモーンズ」の初代ドラマー。他の人はあまり語ることがないので、7月はこんなところで。
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