尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

デヴィッド・リンチ、ピーター・ヤーロウ、デヴィッド・ロッジ他ー2025年1月の訃報①

2025年02月08日 22時24分23秒 | 追悼

 2025年になっても、もちろん重要な訃報は続く。見続けていかないといけない。まずはアメリカの映画監督デヴィッド・リンチが1月15日死去、78歳。何本も見てるから、すぐに特報を書こうかとも思ったんだけど、結局僕はリンチを理解出来ないので止めることにした。「カルトの帝王」などと報道され、まあそうなんだけど独特すぎて何か今ひとつ満腹出来ない。そんな不思議な映画監督だった。『ツイン・ピークス』が評判になって名前だけはかなり有名だが、どうにも位置づけが難しい。

(デヴィッド・リンチ)

 1976年に自主製作作品『イレイザー・ヘッド』を作るも大手には認められず、1980年の『エレファント・マン』がまさかの大ヒット、アカデミー作品賞ノミネートの快挙となった。日本でも公開され話題となったが、僕にはどこか居心地の悪い映画だった。その成功で『デューン/砂の惑星』を任されれるも興行的にも作品的にも不評だった。去年リバイバルされたので見たが、やはり近年の2部作の方が面白い。最終カット権を持っていなかったため大幅に削除されたと言われる。そのため次作『ブルー・ベルベット』(1986)では好きなように作れる権利を得て、不可思議なリンチ世界を確立した。僕はこの作品が一番好きだ。続く『ワイルド・アット・ハート』(1990)がカンヌ映画祭パルムドールを獲得し、この時期から世界の巨匠と認知された。

(ブルー・ベルベット)

 そして1990年からテレビドラマ『ツイン・ピークス』の放送が開始され、表面的な世界の裏に潜む異常な謎が世界で話題となった。リンチ作品はほぼすべて「謎」に満ちている。ただ一作『ストレイト・ストーリー』(1999)だけが普通に感動的だが、それでもひたすら目的地にトレーラーで向かう老人という設定は普通と変わっている。2001年の『マルホランド・ドライブ』はカンヌで監督賞を取るなど高く評価され、近年もどんどん高くなっている。去年見直す機会があったが、この映画は実に面白いけど世界観が全く理解不能。実は見てない映画もあるし、決して凄く好きな監督じゃなかった。上映素材はいま日本にかなりあるので、今後特集上映の機会があるだろう。何度見ても判らないと思うけど、少なくとも幾つかの映画では何度も見る価値があると思う。

(マルホランド・ドライブ)

 アメリカの歌手で「ピーター・ポール&マリー」(PPM)のピーター・ヤーロウが1月7日死去、86歳。1961年にポール・ストゥーキー、マリー・トラヴァースと「ピーター・ポール&マリー」を結成。62年に「レモン・トゥリー」でデビュー。同年に初のアルバム『ピーター・ポール&マリー』を発表し200万枚を売り上げた。これには「500マイル」「花はどこへ行ったの?」「天使のハンマー」などが含まれ、60年代フォークソングブームを生んだ。63年には代表作「パフ」を発表し、ボブ・ディランの「風に吹かれて」をカバーした。これらの歌は公民権運動やヴェトナム反戦運動で歌われ、ピーターも運動に参加した。70年にソロ活動のため一時解散したが、78年に反原発運動のため再結成した。僕はPPMが昔から好きで、今も聞いている。

(ピーター・ヤーロウ)

 イギリス生まれの歌手、俳優マリアンヌ・フェイスフルが1月30日死去、78歳。両親が離婚したため修道院で暮らし、17歳で結婚した。夫がローリング・ストーンズのマネージャーと知り合いだったため芸能界に誘われ、アイドルとなった。そして66年に離婚後はミック・ジャガーの恋人となったことで知られる。ゴダールに見出され映画にも出るようになり、フランス映画『あの胸にもう一度』でアラン・ドロンと共演し、裸でバイクに乗るシーンが大きな影響を与えた。その後アイドルとしては終わったが、歌手活動を続けていた。2007年に映画『やわらかい手』の驚くべき演技で見る者をあ然とさせた思い出がある。

(マリアンヌ・フェイスフル)

 イギリスの作家、デイヴィッド・ロッジが1月1日死去、89歳。日本では訃報がマスコミ報道されなかったと思うけど、邦訳も多い人気作家である。大学教授を主人公とするコミカルなキャンパス・ノヴェルで知られ、『大英博物館が倒れる』(1965)、『交換教授』(1975)が日本でも評判となった。後者は英米の大学で交換教授となった二人が、すったもんだあって妻も「交換」するに至る爆笑インテリ小説。今も白水Uブックスに残っている。他に『楽園ニュース』『恋愛セラピー』『作者を出せ!』『絶倫の人 小説H・G・ウェルズ』『作家の運 デイヴィッド・ロッジ自伝』など面白そうな題名の本がいっぱいある。『バフチン以後 〈ポリフォニー〉としての小説』『小説の技法』などちゃんとした文学研究書も翻訳されている。

(デイヴィッド・ロッジ)

 フランスの政治家ジャン=マリー・ルペンが1月7日死去、96歳。極右政党「国民戦線」を1972年に結成して党首となった。以後、人種差別や歴史修正主義発言で批判されながらも支持を伸ばし、2002年大統領選でまさかの2位となり決選投票に残って衝撃を与えた。2011年に引退し三女のマリーヌ・ルペンが後継となったが、父の反ユダヤ発言がもとで父娘の関係が悪化。最終的に父親は除名され、2018年には党名も国民連合に変更された。戦後フランス政治の異端児、風雲児ではあった。

(ジャン=マリー・ルペン)

・フランスの映画監督ベルトラン・ブリエが20日死去、85歳。1963年に記録映画『ヒットラーなんか知らないよ』で監督デビュー。その後は劇映画で『バルスーズ』『ハンカチのご用意を』(アカデミー外国語映画賞)、『美しすぎて』(カンヌ映画祭グランプリ)などの作品を撮った。オーストリアの演出家、俳優オットー・シェンクが9日死去、94歳。世界的なオペラ演出家で、ウィーン国立歌劇場やメトロポリタン歌劇場などで名演出を残した。


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