最近はずっと衆議院選挙の話ばかり書いていたが、この間もアメリカや日本の野球中継を見たり、映画を見たりする「日常」があるわけである。最近ようやく涼しくなってきたので、散歩をすることが多く、映画もあまり行ってないが、その中で見たものを。どっちもテーマ性や芸術性でどうこうというわけじゃない。ま、楽しい映画だったかなという感じで紹介する。
熊切和嘉監督の『ゼンブ・オブ・トーキョー』という映画をやってる。何でも「日向坂46の四期生全員!アイドルデビューから約2年で演技初挑戦の11人がメインキャストとして大抜擢」というアイドル映画だそうだけど、僕には関係ない。熊切監督は『海炭市叙景』『私の男』『658㎞、陽子の旅』など割合とお気に入りの監督だが、それも一応チェックしただけ。東京国際映画祭で『グランド・ブダペスト・ホテル』を見るので、その前に見られる映画を探していて、珍しい「修学旅行映画」を見ようと思ったわけ。
「部活映画」「文化祭映画」はかなりあるのに、「修学旅行映画」はそう言えばあまり記憶にない。(和泉聖治監督『この胸のときめきを』という京都の修学旅行を描く1988年の映画があったぐらい。)それはそうだろう。ロケが大変だし、時間が限られていて物語を深めるのも大変。文化祭のような「最後の盛り上がり」も作りにくい。だけど、教員時代は一番「旅行行事」に思い入れがあったので、なんか懐かしいのである。もっとも当然「東京修学旅行」は経験してない(東京都の教員なんだから)。東京に行くと、こういうところを巡るのかと興味深かった。浅草、スカイツリーに始まり、諸事情から上野、新宿、渋谷、池袋、下北沢、月島、お台場なんかが出て来る。50年後に「2020年代の東京を記録した貴重な映画」として再発見されるかもしれない。
班長を務める池園さんが頑張って「東京の全部」を楽しめる緻密な計画を作る。しかし、お昼に予定していた店が満員で長蛇の列。自由昼食にして時間を決めて集合する予定が、皆バラバラに。何これ、マルチバースに迷い込んだのか。実は班長以外のメンバーは、他に行きたいところがあって勝手に自由行動にしてしまったのだ。東京から転校してきてクールぶっていた人、実はアイドルのオーディションを受けに来た人、好きな同級生を追っかけている人…。まあいろいろあって、最後に皆がまた集まるまでを軽快に描くコメディ女子高生映画。「旅行」という行事でお互いに知らなかった姿を見て、一歩成長できるハートウォーミング映画。
次は『侍タイムスリッパー』。単館上映から始まった独立プロ作品が、面白いと評判になって全国で拡大上映中である。安田淳一監督・脚本、撮影、山口馬木也主演って、誰ですか? 安田監督はビデオ撮影の傍ら自主映画『拳銃と目玉焼』『ごはん』を作った人で、2023年に父が亡くなった後は実家の米作りを継いだ。そして製作したのがこの映画だというのである。脚本が面白いと東映京都撮影所が全面的に協力して作られているので、自主映画的な感じはせず本格的エンタメ映画になっている。で、確かになかなか面白いのである。展開は予想通りなんだけど、それもまた良しというタイプの映画である。
幕末の京都、会津藩士二人が長州藩士を暗殺する命を受ける。今やまさに斬り合うという瞬間に、雷が落ちるのである。気付いたときには高坂新左衛門は現代の東映撮影所にいた。まあ確かに近い場所にいたかもしれない。そこではテレビ時代劇を撮影していたが、セリフで「江戸」と出て来る。浪人が女に狼藉しようとしていると、高坂は助けに行こうと出ていく。ま、そんなバカなという設定をあれこれ言っても仕方ない。結局周りからは、記憶喪失の変なオジサンと思われて(言葉遣いが昔のままなので、役に成りきったまま記憶を失ったとみなされた)、切られ役専門の俳優として撮影所で生きていくことになっていく。
そこへある大物俳優が時代劇に復帰することになり、その相手役に高坂を指名してきたのである。なんとまあ、そいうことで後は書かないけれど、あれよあれよの展開でクライマックスに突入する。その大物俳優は冨家ノリマサ、何くれとなく面倒を見てくれる助監督を沙倉ゆうの(下画像)と言われても初めて見る顔ばかり。この沙倉さんは安田監督の前2作でも重要な役で出ているらしい。この助監督役あっての映画で、ウソの話をホントらしくする脚本の妙である。そして「時代劇」とは何か。変革の時代に残すべきものは何かと熱く語られる。なお、幕府滅亡から140年と出ているから、これは2020年代の話ではなく2008年頃の設定らしい。
修学旅行の映画を探そうとして「修学旅行 映画」と検索したら、「修学旅行 映画村」がいっぱい出て来た。僕も修学旅行で太秦映画村を企画したことがあるが、まさにそこで撮影された映画。テレビドラマや映画のメイキング、映画を作る過程を描く映画という趣もあって、それが一番面白いところかも知れない。どっちの映画も「頑張っていると報われる」という映画でもある。
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