尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

小林鷹之と石破茂、「裏金議員」の扱いが正反対ー自民党総裁選③

2024年08月25日 22時04分54秒 | 政治
 自民党総裁選に出馬の意向を示している10人超の写真を道行く人々に見せて、「誰に期待しますか?」と聞く。そんなことをヴァラエティ番組などでよくやってるが、聞かれた人は「若い人がいい」などと答えている人が結構多い。そんな有権者心理を当て込んでか、最初に正式に出馬の記者会見を開いたのは、当選4回、49歳の小林鷹之氏(衆議院千葉2区、旧二階派)だった。
(出馬を宣言した小林鷹之氏)
 こういう「若手」が立候補するのを見て、「自民党の派閥政治が崩れた」と評価する人がいるんだけど、僕はそれは大間違いだと思っている。自民党の派閥は麻生派を除き「解散」したということになっている。しかし、政治家どうしの実質的つながりは残っていて、それが今回の総裁選の最大のポイントになっている。今回は裏金問題を抱える党内最大の「旧安倍派」からは誰も出馬出来ない。その議員票を誰が取るか、旧安倍派を取り込むため出馬予定者がどんどん「右傾化」している。

 旧安倍派では萩生田光一、西村康稔、下村博文、稲田朋美などが総裁候補と取り沙汰されてきたが、当分出られないうちに「賞味期限切れ」する可能性が高い。そうなるとその次の世代ということになるが、それは福田達夫元総務会長だという声が高い。福田家三代目への「大政奉還」が既定方針だとみなして良い。しかし、福田達夫も今回は出られないから、小林鷹之議員の支持に回っている。小林氏の出馬会見には24人の同席議員が確認されているが、福田氏もその一人。小林氏の推薦議員は各派閥から出ているが、最多は旧安倍派である。つまり小林鷹之氏は今回誰も出られない旧安倍派の代理出馬だと考えても良いのである。

 それを証明するかのように、小林氏は裏金議員でも正式な処分を受けていない人は役職に付けるべきだと主張している。「党で正式に処分をされていない議員にも役職を外されている方たちがいるので、国民の一定の理解を得られた時点で、適材適所の人事を行うということが大切ではないか、という趣旨で申し上げた」というのである。選挙前にこんなことを言う人を「若手代表」ともてはやしているのである。マスコミはきちんと追求する必要がある。
(石破茂氏も出馬を宣言)
 一方で5回目の挑戦となる石破茂氏は裏金議員について「国民の審判を受けるにふさわしい候補者か、党として責任を持つ」と次回選挙での非公認を示唆した発言をしている。非公認となると、比例区で復活当選出来ないから選挙に弱い議員には一大事である。しかし、この発言には大きな反発があったらしく、すぐに「新体制で決めることだ。まだなっていない者が予断を持っていうべきではない」とトーンダウンしている。だが「裏金議員公認問題」を総裁選の大きなテーマに浮上させたのは石破氏の功績だろう。もっとも「こういうことを言うから当選出来ない」と思われているんだろうが。

 自民党総裁選なんだから、誰が出馬しても自民党の政策の枠内で議論が進む。だから自民党を支持していない人には関係ないのだが、大きな政策以外の、自民党のあり方などには相当の違いがあるのだ。僕は別に石破茂氏を支持しているわけじゃないが、テレビなどで「小林氏や小泉氏は若い」「石破氏は5回目の挑戦」などというスタンスで報じている。だが主張内容を見れば、「石破氏は国民目線」「小林氏は党内目線」なんじゃないのか。

 今回は一体何人が立候補出来るのか。これを「派閥がなくなったせい」と考えるのは間違いではないが、一面的な理解だ。ここまで多数が手を挙げている時に、(旧安倍派以外の場合)立候補を模索しない時は「自派が草刈場になる」ことを意味する。それなりの議員は将来のためにも出馬を模索せざるを得ない。もちろん旧岸田派から林芳正官房長官上川陽子外相、旧茂木派から茂木敏充幹事長加藤勝信元官房長官が出馬に意欲を示しているようなことは、以前だったら起こらないだろう。まあ民主党政権下の2012年総裁選で旧町村派から町村信孝、安倍晋三両氏が出たケースもあるけれど。

 今まではトップがまとめて数人に絞る「予備選」が裏で行われていたわけである。今回は派閥が持っていたそういう機能を誰も果たせないから、出たい人が皆手を挙げる。だが当選が全く不可能なら他候補の支持に回って、新体制で要職を狙う方が得策だと思う動きも出て来ると思う。党員票は小泉氏や石破氏に集まると予測されているが、議員票だけでは太刀打ちできない人は、それなりの理由を付けて(現在の職務に専念せざるを得ないなど)撤退していくのではないか。さて、報道を見る限り石破氏は「面倒見が悪い」などと政治家の本質と違う問題で、当選出来ないらしい。公職じゃないからあれこれ言っても仕方ないが、そういう体質の党が「与党」であるということは問題なんじゃないか。

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