石破政権がいつまで持つか判らないけど、少数与党のうえ党内基盤もなく厳しい現実が続いている。僕も「厳しい現実」を書くことが多いと思うが、唯一「石破政権の遺産」になりそうなことがある。それが「防災庁」の設置で、内閣官房に「防災庁設置準備室」が発足し、赤澤経済再生担当大臣が担当になった。首相と側近だけが関わっていて、石破政権がつぶれたら雲散霧消しそうだが、それではもったいない。日本にとって絶対に必要なことだと思うので、党派を超えて実現に向け動き出して欲しい。
発足時の石破首相訓示では、「わが国は世界有数の災害発生国で、近年では風水害の頻発化や激甚化がみられるほか、近い将来には首都直下地震や南海トラフ巨大地震などの発生も懸念される。人命最優先の防災立国を早急に構築することが求められている」と述べた。まさにその通りというしかない現状認識である。「待ったなし」の政策は他にも多いだろうが、それはすでに対応する行政官庁がある。それに対して、現状では「防災担当大臣」が置かれているが、内閣府特命担当大臣に過ぎない。きちんとした部署になっているとは到底言えないのである。ちなみに防災担当大臣は2001年の省庁改編後に置かれているが存在感は薄いだろう。
アメリカにはカーター政権時に発足した「アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁」(Federal Emergency Management Agency、略称FEMA)という組織がある。洪水、ハリケーン、原子力災害など幅広く対応するという。2003年にブッシュ政権により国土安全保障省に組み込まれて機動性が薄れてしまったというが、それでも重要な役所だと思う。アメリカは各州の連邦制だが、災害は州を越えて襲ってくる。連邦政府による調整、指揮が必要になってくるのである。
日本は連邦制ではないけれど、各地方ごとの地形的、歴史的な差異が大きい。南北に長く四方を海に囲まれているという特徴から、災害救援がなかなか難しい。それに今も経済成長が続くアメリカと違って、少子高齢化が著しい日本ではインフラの劣化が進みながら更新も難しい状態が起きている。今後も地震や豪雨災害で鉄道、道路、空港、港などに被害が生じて救援が遅れることが想定される。また避難所態勢も先進諸国に比べて劣悪なまま放置されている。(「TKB48」を知ってますか?」参照。)
石破首相が自民党総裁選で「防災省設置」を唱えたところ、これに真っ向から反対したのが小林鷹之議員だった。小林氏は「屋上屋を架す」と言ったが、自衛隊があるから災害時に指揮権が混乱するという趣旨だと思う。しかし、自衛隊は「防災行政」を主管しない。それどころか「災害出動」でさえ、本体任務には位置づけられていない。災害が発生したときには、確かに「実力組織」である自衛隊の出動が必要になるだろう。しかし、「平時」には防災に関する業務を行っていない。「屋上屋」というけど、日本の現状はまだ屋根もない、小さな部屋があるだけの段階である。きちんとした大きな部屋と屋根が必須である。
ところで、ではいつ作るべきか。一気に「防災省」は難しい。まずは「防災庁」からで、それは東日本大震災15年を経た2026年がふさわしいと思う。復興は切りがないけれど、その後地震災害は各地に起きてしまった。「復興庁」を防災庁に衣替えして、今後も東北復興も担いながら、他の災害対応も出来るように人員を大幅に増強するべきだろう。2026年4月1日から防災庁として発足し、やがては防災省に格上げして気象庁も国土交通省から移管してはどうかと思う。
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