ゆうべは東京でも初雪が降ったそうですね。
ちょうど2,3日前から、この本のことを書こうと思っていたのです。
主人公の女の子が赤いセーターを着ていたことと、お話の最初のほうで
こんな記述があったものですから、私は読みながら「あかいくつ」の
お話を思い出してしまいました。
片足、片足、両足、片足‥‥。
「おや、元気がいいねえ。」
と、店番のおばあさんがいいました。女の子は、あらい息をしながら、
とくいそうに笑いました。おかしやの前では、大きな犬が歯をむきだして
ほえました。それでも、女の子は、すすんでゆきました。石けりの輪は、
まだまだつづいていたのです。
赤い靴の魅力に抗えなかった女の子と、この本の中の少女は
設定がまるでちがいます。
この女の子は、偶然、村の一本道にろうせきで描かれた石けりの輪を
見つけ、ぴょんと飛び込んでみただけなのです。
この子が赤いセーターを着ていたのだって、偶然かもしれません。
でも、どこまでもどこまでも続いていく輪で、けんけんぱを
していく姿は、赤い靴を履いて踊り続ける少女と、私の中では
重なっていったのでした。
『初雪のふる日』
安房直子 文 こみねゆら 絵
やがて、雪が降り始め、真っ白いうさぎたちが現われます。
「もう帰ろうかな」
そう思っていた女の子は、前も後ろもうさぎたちに囲まれて
列から抜け出すことができなくなっていました。
どこまで輪が続いているの、という女の子の問いに、うさぎが答えます。
「どこまでも、どこまでも、世界のはてまで。わたしたちみんな、
雪をふらせる雪うさぎですからね。」
ここまで読むと、「あかいくつ」のイメージは遠のいていきました。
雪をふらせているのるのは、雪うさぎ。
このフレーズがとても新鮮だったからです。
雪は無機質なもの、意志を持たずしゃべらないもの、と思っていましたから。
初雪のふった日。
雪うさぎの列にのみこまれた女の子は、このあとどうなっていくのでしょう…。
うさぎたちの邪気のなさが、かえって、こわいような気がしました。
どこまでもどこまでも、降り続ける雪の場所に住んでいたなら、
清らかな雪の白さがうらめしく思えるときもあるのかな。
そんなことも思いました。
こみねゆらさんの描く女の子。
本物の女の子より、女の子の本質を表していて、なんだかぞくっとします。
次にもし、雪の降りはじめに出会えたら、トリップできる少女ではもはやないので、
せめて雪うさぎのイメージを重ね合わせてみようと思います。
(冷たい雪なのに、血が通っているうさぎ。赤の連鎖はやはり途切れないかも。)