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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

憧れのフラココノ実

2018-10-19 17:36:56 | 好きな本

図書館でなんとなく児童書の棚を見ていたら、高楼方子さんの本に、
大野八生さんがイラストを描いているものを見かけ、借りてみました。



タイトルも面白いですが、表紙にスーツを着た「おじさん」?が
描かれているのも面白いなあと思いました。


ところで。
フラココノ実 って、なんだと思いますか?

おじさん含むこの地方の人は<フラココノ島>にある<フラココノ実>を
時折食べないことには、どうにもこうにもやっていかれなくなるという
不思議な特殊性を持っているのだそうです。

フラココノ実は一年を通していつでもきらきらと実っていて、
ヘリオトロープ色の小さなリンゴほどの果実で、人びとは床屋にでも
行くような頻度で、時期がくるとそれぞれ島に渡り、一つぷちんと
もぎとって、果汁豊かなその実にかじりつき、カシュカシュカシュ‥と
食べるのだそうです。そしてそれは、やさしく切ない、遠い夢のような
味がする実 とのこと。


食べてみたいですよね。

でも、人によって「食べに行き頃」は、ばらばらで、いつその時が
訪れるのか、あるいは訪れないのか、「その時」がやってこないと
わからないのだそうです。

で、表紙に描かれているポイット氏は、さあその時がやってきた!と
喜び勇んで島へ渡ろうとするたびに、何らかの障がいが起こり、未だ
甘美なその実を味わうことができません。
そして、誰にも知られたくないその秘密を、ある日、エビータさん
言い当てられ戸惑うポイット氏。
エビータさんは、実を食べたことがない人は地面から足が4ミリ浮いている
という事実を発見し、そしてポイット氏に声をかけたのでした‥。

同様に、画家のバンボーロさんも、「4ミリ」の仲間であることを見つけ、
一緒に島に渡ろうともちかけますが、バンボーロさんはこう言います。

「食べたとたん、<何か>がなくなるらしいと言われているのは
ご存じでしょう。<何か>を得れば<何か>を失う。要するに、人間は、
いつだって<何か>が欠けているものなのです。しかし見方を変えれば、
どっちかの<何か>は持っているということにほかなりません。
だとすると、そこいらじゅうの人がなくしてしまった<何か>を
大事に持っているほうが、貴重、かつ、愉快じゃありませんか」


なるほどなるほど、一理ありますねー。


4ミリ同盟」の面々は、<フラココノ島>に渡ることができたのか、
そして甘美なその実を味わうことができたのか、失うものとは何なのかー。



おもしろい結末でした。

コメント
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