カズオ・イシグロの、ノーベル文学賞受賞後の
第一作ということで、話題になっていたので
図書館に予約してました。どれくらい待ったでしょう。
表紙を飾る福田利之さんのイラストは可愛らしく、
タイトルだって絵本チックで‥AIロボットと少女との
友情を描く感動作と謳われていましが。。。
AI(見た目はまったく人間‥のアンドロイド)のクララは
仲間と一緒に「お店」で、子供が親と一緒にやってくるのを
待つ毎日。子供に気に入られるのはもちろんのこと、購入
してもよいと決断するのはその子の親なので、大人にも
もちろん好感を与えなければなりません。
外のセカイを観察するのが大好きなクララ。
店の中のどのAIよりも周りの「空気」を察知する
ことができます。
クララたちの「栄養源」は太陽の光なので、クララに
とってお日さまは特別なもの。日の出から日の入りまで、
お日さまの動向はクララにとってのすべて、です。
彼女が賢く、無垢であればあるほど、読み手の私の
気持ちに陰りが現れるという、不思議な反比例を経験しました。
お日さまは限りなく輝き、その存在は唯一無二であるのに、
私の中に次々と影を落とし、気持ちを鈍らせていくのは、
曇天と強い風に翻弄されている丈の高い草、草、草。
話の中は、すこし先の未来であると思われるのに、納屋に
向かって必死に歩いていくクララの姿や通りやビルは、
訪れたことはないけれど、すこし前の、イギリスはこんな
感じだったのではないかーと思いながら読みました。
読後の印象は『わたしを離さないで』に近似していて‥
こんな未来が来ないことを祈るばかりです。
「感動」とは違う種類のココロの揺れがあり、クララのことを
どうしても思い出してしまうので、ここに書き残して
おくことにしました。