J-WAVE のナビゲーターが何人も、この映画を推して
いたのと、初めて知った「ノマド」という言葉に
好奇心を刺激されて、先週の土曜日に観てきました。
ノマドが「遊牧民」や「放浪者」を意味する言葉だと知り、
リーマンショック以降、家を手放さざる負えなくなり、
定住を諦めた人たちを描いた重い感じのものと思っていました。
あらすじにも、企業の破たんとともに、亡き夫の思い出をつめ
一人キャンピングカーで季節労働の現場を渡り歩く主人公‥
とあったし、原作本の紹介も厳しい現状が書かれていたので。
しかし、映画の中に描かれている人たちは(本当のノマドも
多数出演していて、そういう方々を含め)必ずしも負の気持ち
を抱えたまま仕方なくそうしているわけではなく、自らの意思
で「現代の遊牧民」として生きることを、選んだというか、
望んだことがわかり、(実際は少数派に違いないと思いながらも)
観ている私の気持ちをすこし軽くしてくれました。
ある人は、限られた時間の中で、より多くの美しいものをみたい
と願い、またある人は、いつも自然の中に、自分の身を置いて
おきたいから、と言うのです。
嘘やごまかしだけで点から点への毎日を続けられるはずはなく、
何より彼らの顔は生き生きと輝いています。
そういう生き方もいいのかもしれない、でも‥、と自問自答して
いる私同様、主人公であるファーンも、「でも」と「なぜ」の
気持ちをココロの中で転がし続けているように見えました。
ふと、既視感を覚えました。
ずっと前に観た『ノルウェーの森』の終盤の場面を思い出したのです。
直子に死なれた主人公ワタナベは、その現実から逃れるために
簡単な装備だけ持って、キャンプ生活を続けるのです。
ひどく簡単なテントの中で、激しい雨に打たれている松山ケンイチ
(ワタナベ役)の孤独が痛いほどに伝わってきたのを覚えています。
一番遠ざけておきたいのは、内なる孤独、なのだと思いました。
愛する人とともに過ごした家や思い出の場所に居ることが、何よりも
つらいから、そこからできるだけ離れていたい、そう思って旅を
続けているのではないかー。
そして、そんな自分を癒してくれるものは、大いなる自然だけだと
本能が告げるのではないかー。
ファーンは、あのあとどうしたのでしょう、どのような道を
選んだのでしょう。ノマドとして生きていくのか、ノマドだった
自分を振りかえりながら生きていくのか。いずれにしても、
思い出は常に自分の内側に、自分自身とともにあるので、どこまで
逃げたところで、いつまでも付き纏ってくるのです、良くも悪くも。
私はこの先、逃げたいものに出くわしてしまった時、どんな選択を
するでしょう。
アメリカの美しい風景とともに、思いを巡らせることを教えてくれた
大切な映画になりました。ノマドランド、お薦めです。
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