my favorite things

絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

「ロング・グッドバイ」の入口に立つ

2015-06-05 17:33:21 | 好きな本

若いころに読んではみたものの、あまりそのよさがわからず、
一応読みました、となっている本が何冊もあって。
ロング・グッドバイ』もそんな本のうちの1冊でした。



すこしまえに、マーロウシリーズの『大いなる眠り』を読んだことから、
チャンドラーを読み進めていけそうな予感がすこししていたのですが、
それもいつの間にか、忘れていて‥。

NHKでやっていた、設定を戦後の東京に置き換えて、浅野忠信と綾野剛が
演じていたドラマはとてもおもしろかったので、今度(こそ)はそのおもしろさが
わかるような気がしていて‥春樹訳も出ているのだから‥と思っていました。

そして、図書館の棚で見つけて、そうそう読んでみようと思っていたんだと
手にしてから4週間。やっと数日前に読み終えました。

そうか、そういう話だよね、と、ドラマを観たことがよい下敷きになって、
フクザツな人間関係にもこのたびは入っていくことができたし、
読みながら、ドラマの舞台を戦後の東京にしていたこととか、
主人公を演じた浅野忠信と、テリー役を置き換えた原田保を演じた
綾野剛が、自分の中では浮き上がってきて、それに、本家のマーロウと
テリーが重なっていくようで、二つのロング・グッドバイが入り乱れながら、
でも、そのおかげでどんどん進んでいきました。
(ドラマの方は、ラストシーンに向けてちょっと甘めかなーと思いますが)


読み終わってみて、どうして若いころは「わからなかった」のかといえば、
人生経験の浅さかな、と今は思えます。
探偵じゃなくたって、フィリップ・マーロウじゃなくたって、人間ながい年月生きて
いれば、その人なりの人生観や、暮らし方ができていくし、譲れないこだわり
どころだってできてきます。(マーロウの譲れなさは半端じゃないですが・笑)
でも、若いときには男女間のことだって、夫婦のことだって、男同志の友情
だって、実感としてはよくわからなかったのだろうと思います。

そして、今回、春樹氏のあとがきを読んで、そういう読み方があったのか、を
知ったので、もう一度最初から、今度は「その視点」をもって、ふたつの本を
読み比べてみたいなあと思っているところです。
思えば、「その本」も長いあいだそのよさがわからず、でも、春樹訳で読み返してみて
その面白さを確認したのでした。



生きている限り、何度でもいろんな角度から楽しめる、本を読む行為って
ほんとうに素晴らしいなあと思います。




コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ひとつひまわり アップリケ... | トップ | モノの値段ってなんだろう »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

好きな本」カテゴリの最新記事