今朝 作家の常盤新平さんの訃報を知りました。
81歳と書いてありました。
常盤さんの著作をそんなにたくさん読んでいたわけではないのですが、
『夏服を着た女たち』や、『ニューヨークは闇につつまれて』というタイトルを
懐かしい気持ちで思い出しました。
ニューヨークへ行ってみたいという気持ちが先だったのか、
それとも、常盤さんが訳したアーウィン・ショーの小説を読んでいるうちに
憧れる気持ちが増していったのかー今となっては思いだすことが難しい
25年くらい前のことです。
本の中のマンハッタンは、1980年代半ばよりも、さらに前の「時」が
描かれていたけれど、でも、流れている空気は期待を高めてくれる
ものだったような気がします。
1987年に初めて旅行で訪れて、1992年4月から1年余り暮らしてみて‥
帰国後はまたただの旅行者に戻ってしまったけれど、グリニッチビレッジに
ぎりぎり入る14丁目で暮らしたその時間は、私もニューヨーカーだったと
言ってもいいのかなーと、時々胸の中でつぶやきます。
・・・・・・
時は流れ。
暮らしの手帖の160ページに、毎号「ニューヨーカー・ニューヨーカー」という
コラムを常盤さんが連載しているのを見つけました。
雑誌「NEW YORKER」に掲載された記事の中から、常盤さんが
興味を持ったものについて書いていく、という内容です。
いつ、この連載を知ったのかは忘れてしまいましたが、そうか、こういう目標が
あるじゃない、とその時私は思ったのでした。
いつか雑誌「NEW YORKER」をそのまま英語で読めるくらい、英語の勉強を
続けるということです。会話は相手が必要だけれど、読書だったら、辞書を引く
ことだったら、ひとりでもできるのだから。
2009年の12-1月号には、こんなことが書かれていました。
けれども、料理や食事の英語が難しい。短い囲み記事なのだが、
十回以上も辞書を引く。こうして一生を終えるのかもしれない。
高校英語から一歩を進歩していないようだ。
たくさんの翻訳をなさった常盤さんでさえ、こんなふうに感じることもある、
ということに少し驚き、そして逆に少し励まされたような気持ちにもなりました。
高校英語から、まずおいてきぼりにされないように、そこからがんばろうと。
これは新しい「あこがれ」です。
いつかまた、ニューヨークを訪れる時のために?
頭の中の老化防止のために? いえ、それだけじゃなくて、あの頃の気配のような、
空気のようなものをすぐに思い出すことができるために、です。
常盤新平さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。
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