音楽の喜び フルートとともに

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チェロを弾く少女

2008-10-03 01:02:17 | 本・映画など

紫苑が植えられているところをimagesimagesimages今まで見たことがないです。空き地で勝手に咲いているというイメージでしたが、これはわざわざ畑に植えてありました。あまりにたくさん見事に咲いていましたので、思わず何枚も撮ってしまいました。


「チェロを弾く少女アニタ」アニタ・ラスカー・ウォルフィッシュ 原書房 2003年はアウシュビッツを生き抜いた少女の記憶です。


「はじめに」でアニタは、『未だに私を震え上がらせることがある。もっともひどいのは、「あのホロコーストは単なる誇張である」、さらには「まったくのでっちあげである」と主張する、自称、ばかでも無教養でもないと言う人たちが今日でも存在すると言うことである。それにくわえ、「生存者達は、ホロコーストについて語ろうとしない」と主張する人もいる。いや、そうではない。「誰もわれわれに、ホロコーストについて聞かなかったのである。』と書いています。


3人姉妹の末っ子でチェロ奏者であったアニタは、強制収容所のアウシュビッツのオーケストラでチェロを弾くことでガス室行きを免れ次女レナータと助け合い、生き残ります。
彼女の両親をはじめ、たくさんの人が収容所で亡くなりますが、アルマ・ロぜーもその一人です。


アルマは、グスタフ・マーラーの妹の娘で収容所のオケの指揮者を任されていました。ユダヤ人でありながら、演奏と威厳ある態度でドイツ人にも尊敬を持って接せられ、たくさんの囚人をメンバーにすることによって救います。アニタとレナータもアルマによってすくわれました。そしてオーケストラの演奏を厳しく訓練し引き上げることによって精神的にも同胞を支えました。


アニタはこう書いています。
「私たちの周辺で起きている収容所の煙を吐く火葬場や悲惨な生活を忘れさせ、この生活をさらにー音楽で言えばー半音あげることに成功したのである。 もしかすると、これは彼女自身にとっても理性を失わない唯一の方法であったのかもしれない。彼女は私達が演奏する曲を少しでも完全なものにしようという彼女の狂気の虜に引き入れ、そしてそれは私達も理性を失わないようにするために役立った。私たちはアルマに少なからぬ恩義があると信じているし、特に生きのびた人たちはアルマのおかげで生きのびられたと感謝している。」

なぜ音楽をするのか?

ということはわたしにとっては哲学的な命題です。ゆったりと余裕のある甘い生活の中では、大切なこととそうでないことの境界がいつも曖昧になってしまいがちです。
有限の時と場所の中に生きている自覚もまた曖昧になってしまいます。私が、いつも、この歴史の暗い暗い闇を振り返るのは、曖昧になっていることをわが身に置き換えて、自分にとっての大切なことを、普段の生活の中でも、究極の生活の中でも、明確化させ、常に選び続けることができるような力を得るためです。