今月MAKIKYUは遠方へ足を運ぶ機会が2度あり、その内の1回は九州まで足を延ばしており、長崎県の五島列島にも初訪問したものでした。
その際にはまず最初に通称「上五島」とも称される中通島に足を運んだのですが、中通島はかつて有川(Arikawa)町や青方(Aokata)町、奈良尾(Narao)町など幾つかの自治体が存在していたものの、現在は平成の市町村合併により、全域が南松浦郡新上五島町となっています。
新上五島町は中通島の他に、現在は若松大橋と呼ばれる橋によって、同島と実質的に陸続きとなっている若松島なども区域に含まれており、この若松島全域と中通島の一部地域は、かつて若松町と呼ばれる自治体でした。
この若松町は新上五島町成立以前から、町営バスを運行しており、新上五島町への合併後も同町に引き継がれ、新上五島町営バスとして運行しています。
「若松」と名乗る自治体が公営バスを運行し、他自治体との合併後も新自治体によるバス運行が行われると聞くと、北九州市を連想する方も少なくないかと思います。
こちらも北九州市では旧若松市が市営バスを運行、これが北九州市に継承されて現在も北九州市営バスとして運行しており、このバスにはMAKIKYUも何度か乗車した事がありますが、元若松市営バスという経緯もあってか、同市の中心地・小倉駅周辺で北九州市営バスの姿を見る機会が少なく、同市営バス路線は若松区やその周辺に偏在している事は、ご存知の方も少なくないかと思います。
長崎の若松を走る新上五島町営バスも、若松島内の路線をはじめ、若松大橋を渡って白魚(Shiroo)や中五島高校まで足を伸ばす便も存在していますが、専ら旧若松町内での運行となっています。
(白魚では有川・青方~奈良尾間を運行する西肥バスと乗継可能で、若松~白魚間のダイヤも、この西肥バスとの乗継が配慮されています)
中通島自体が決して足を運び易いとは言い難い上に、若松島は更にその先、「離島の離島」と言っても過言ではない状況ですので、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様方でも新上五島町にお住まいの方や、同地に何らかの縁のある方を除けば、新上五島町営バスに乗車した事がある方はかなり少ないかと思います。
また若松島の路線バスは、完全に町営バスで統一されている訳ではなく、若松大橋を渡って中通島の白魚などへ足を伸ばす町営バスが存在する一方で、奈良尾~若松間を若松大橋経由で運行する西肥バスも存在しています。
白魚~若松間では両者競合となる辺りは、輸送需要自体が限られる離島にしては珍しいと感じ、離島の離島ともなれば尚更です。
橋を渡る路線バスが公営と民営の2者競合状態と言うのは、北九州の若戸大橋を渡る路線バスが、公営と民営の2者競合状態による運行となっているのを連想させるものがあり、全く異なる土地柄で偶然ながらも、若松という地を走るバス同士の共通点とも言えます。
しかしながら長崎の若松を走る公営バスこと新上五島町営バスは、年度末となる今月末で事業廃止となり、来月からは民営移管となりますので、西肥バスと町営バスのポールが並ぶ姿も、まもなく見納めになるかと思います。
この移管先公募では中通島にも路線を持つ長崎県では大手、全国的に見ても中堅の部類に属する西肥自動車が公募に応募、同社が今後旧若松町営バスの運行を担う事になり、若松大橋を渡る路線バスは同社バスに一本化となります。
MAKIKYUが今月新上五島町を訪問した際には、奈良尾~若松間の西肥バスに乗車し、若松大橋を渡って若松島入りした後、一度だけ新上五島町営に乗車する機会があったのですが、同町営バスへの乗車はこの1回きりとなりそうです。
MAKIKYUが乗車した際には、行先表示と新上五島町営バスの表記がなければ、白ナンバーと言う事もあってか、路線バスとは気付かない様な雰囲気のマイクロバス(日産シビリアン)がやって来たものでした。
このバスは整理券発行機や自動両替装置付き運賃箱が装備され、これらの装備を見ると路線バスである事を実感させられますが、デジタル運賃表示器の姿は見えるものの、これは使用せずに三角表を掲示している状況で、民営移管後に使う為に装備しているのかも…と感じたものでした。
(特に今年は4月1日に消費税増税(5→8%)が行われ、これに伴って各地の路線バスも増税分転嫁の為に値上げが行われますので、新旧データ差し替えを避けるために、現時点で新データを入力した運賃表示器を装備している事も考えられ、「離島の離島」という土地柄も影響しているのかもしれません)
車内放送も流れない辺りは、利用の大半は専ら地元住民で、殆ど島外の観光客などが乗車する機会がないと思われるバスらしいと感じたものでした。
西肥バスでは本土だけでなく中通島でも、音声合成による車内放送が流れ、ICカード(長崎スマートカード)も通用、MAKIKYUが若松島に向かう際に乗車した西肥バスでも長崎スマートカードで運賃を支払うなど、離島のバスながらも本土との格差を余り感じない状況でしたので、西肥バス移管後も現行の取り扱いとなるのか、それとも中通島内を走る路線バスなどと同水準に改められるのかも気になる所です。
ちなみに若松港のターミナルで目的のバスを待っている際には、白と朱色の装いを纏った三菱ローザの姿を見る事が出来ましたが、こちらは「新上五島町営バス」ではなく、合併から結構な年月を経過しているにも関わらず、未だに「若松町スクールバス」という表記が見られたのも特徴的と感じたものでした。
この他にも写真こそありませんが、マイクロバス以外に中型車なども活躍しており、ローザと同じ装いのトップドア中型車や、帯色が朱色ではなくブルーのトップドア中型車などを目撃していますが、どれも決して新しい車両とは言い難いだけに、西肥バス移管後も同社に引き継がれるのか否か、また継承の際には同社塗装に改められるのか否かも気になる所です。
西肥バス自体経年車が多く、近年では大都市圏からの移籍車両も目立つ上に、新上五島はその中でも古参の部類に属する車両が本土から転属する事例をはじめ、新上五島町成立前の他自治体が自家用の用途で導入した車両を継承、島内路線に使用している事例も存在する事を考えると、年式的には古参でも車両状態が良好であれば、継続使用される可能性も大いに考えられるのですが…