ぼくは芳年の美人画が大好きで、”風俗三十二相”のすべてが展示されている太田美術館の展覧会は是非、見逃さないように思っていた。25日が千秋楽なので、ぎりぎりセーフの20日に行ってきた。
この美人画シリーズは、芸者さんや内室らの、痛そう、あたたかそう、寒そう、けむたそう等のさまざまな感情を描いたもの。顔の表情や仕草が面白く、どれもこれも楽しめるが、マイベストテンを選んで、感想文に代えたい(汗)。
第1位 うるささう 寛政年間処女之風俗 少女が覆いかぶさるように猫を可愛がっている。猫は少女とお揃いの鹿子布を首につけているので、少女のお気に入りのペットであることがわかる。”うるさそうな”は猫の気持ち?
第2位 けむそう 内室之風俗(蚊取り線香の煙がもうもうと)
第3位 かゆそう かこいものの風俗(蚊帳の外に上半身裸でとびだしている)
第4位 さむそう 深川仲町芸者風俗 (雪がふきつけて)
第5位 あつそう 内室之風俗(お灸をしている)
第6位 めがさめそう むすめの風俗(朝顔をみながら歯をみがく)
第7位 いたそう 女郎の風俗 (恋人の名を腕に刺青をしている)
第8位 かわゆらしそう 内室の風俗(子供をあやす)
第9位 おもたそう 深川かるこの風俗(お料理を肩にかけて運んでいる)
第10位 むまそう 女郎の風俗(海老のてんぷらをつまんでいる)
静かな展示場で、こうして、ゆっくりベストテンを選ぶ幸せ!
豊原国周の”見立昼夜廿四時之内”も楽しいシリーズだった。色々な身分や職業の女性たちの、一時間おきに二十四時間を描いている。ただ午後二時だけみつからなかった。国周さん、お昼寝をしていたのだろうか(笑)。
午後八時之図 猫の図
午後三時之図
両作品のほかに、芳年や国周の師匠筋の歌川国芳や三代歌川豊国(国貞)、及び、両者の門下、水野年方や楊洲周延らの作品までみることができる。年方の弟子、清方の作品がなかったのは残念だったが、清方の弟子、深水の美人画は鑑賞できる。とても楽しい展覧会だった。
午後十二時之図 原宿たけした通りの図。