まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

本州最北端・大間にて~北東北紀行・9

2006年05月24日 | 旅行記B・東北

大畑町から津軽海峡に沿って走る。下風呂の町を過ぎ、いよいよ本州最北端の大間町である。ハンドルを握る手も心なしか緊張している。

20065_198大間崎に向かう横道に入る。小さな漁港を見て走る。すると前方にこれまでほとんど目にすることのなかった土産物店らしき構えの店が見えてきて、カーブの右手には写真で見たあの記念碑「ここ本州最北端の地」が現れた。何ともあっけなく着いたものである。○○岬とか○○崎というところには、地形や町並みの雰囲気にも「いよいよ先端に近づいてきたな」と思わせるものがあるものだが、ここ大間崎は「本州最北端」という、最果ての地を思わせるイメージからすれば開けたところのように感じる。

20065_200 ともかくも「ここ本州最北端の地」から海の彼方を見やる。残念ながらこの日は曇っており、すぐ近くにある北海道の姿を見ることはかなわなかった。津軽海峡の荒波を見るだけである。

時間的にちょうど昼どきなので、近くの食堂に入り、「まぐろ刺身定食」を注文する。大間崎といえば本州最北端の地であるとともに、マグロの基地としても最近有名である。マグロといえば紀伊勝浦とか、焼津とか、三浦半島の三崎口というのが有名であるが、いまや「大間のマグロ」と聞けば高級ブランドのイメージが定着している。土産物屋を見てももう、マグロづくし。といってもマグロの切り身を冷凍にしてクール便で直送するのを売りにする頼もしい店があるわけではない。マグロをイメージした商品はいくらもあるのだが、マグロそのものが置いていないのである。

20065_201大間に来れば年中その「高級マグロ」が味わえるかと思っていたのだが、どうもそうではないようなのである。なんでも、津軽海峡でマグロがあがるのは「秋から冬」とか。そして、大間のマグロはそのまま東京あたりに送られてしまうから、地元ならたらふく食えるのかというと必ずしもそうではないとか・・・。これを知らないのは私くらいのものだろう。そんでもってこの時期に出回っているのは近海もの(近海といってもどこまで近海なんだろう・・・)のマグロらしい。刺身定食を食べた食堂にもこのような貼り紙がしてあった。うーん、まあ、だからといって味が悪いというのではないのだが・・・本当の大間のマグロというのを食べたことがないから比較できないだけかな。

それでも「大間はマグロの町」であることには変わりない。それは、遠洋漁業のトロール船に何年も乗り込んで、大量のマグロを獲ってきて「基地」である港に工業製品のごとくおろすのとは違い、大間でマグロを「一本釣り」する男たちの姿によるところが大きいだろう。何かの参考になるかと、この旅に出る前に映画『魚影の群れ』をDVDで観た。この大間が舞台になっており、緒形拳扮する一匹狼の漁師がマグロと格闘するところ、また、佐藤浩市扮する若い漁師がその格闘の末に命を落としてしまう悲劇など息を呑むシーンが多く、「この一本」にかける人たちの思いというのが伝わってきた。

20065_210ただ大間の町は同じ「マグロの町」といっても、『魚影の群れ』のような重い世界ではなく、数年前にNHKの朝ドラで放映された『私の青空』を前面に押し出しているようである。ロケ地マップが置かれていたり、田畑智子演じる主人公「なずな」の看板も多く出ていた。ドラマ自体は見たことないのだが、北の果ての漁港の雰囲気をもっと明るく描こうとした作品なのかな。いずれ原作なり、ドラマなりに接してみようか。20065_206

20065_209 大間の漁港をのぞいてみたり、街中を走り、大間崎を見下ろす「シーサイドキャトルパーク大間」に行く。途中には牧草地が広がり、牛の群れがのんびり草を食べている。展望台からは津軽海峡を見下ろすことができる。晴れていれば文句なしの眺望だっただろうに実に残念。大町桂月の歌碑があり「大間崎 空と海との間に長き蝦夷が島 消えてかはりぬ漁り火の影」とある。渡島半島の姿が目の前に大きく広がったことであろう。しかし、今でこそボーダレスなのだろうが、目と鼻の先に見えて、津軽海峡の北と南では生態系、習俗が随分と異なる。それだけにこの海は、見た目より深いものを感じる。20065_207

本州最北端の地の雰囲気を楽しんだのち、進路を南に向ける。今度は下北の西海岸を回ってみよう・・・(続く)。

コメント