5月7日、長かったGWの北東北紀行も最終日である。大湊のホテルで朝を迎えた最終日、大湊駅発14時過ぎの列車に乗り東京へと向かうので、それまでが残り時間ということになる。前日は下北半島の西側を回ったので、今日は引き続き下北半島の東側をレンタカーでめぐる。目指すは尻屋崎。学生時代だから10年以上前、ピンポイントでこの岬だけを訪ねたことがあるが、もう一度あの景色に触れてみたかったのだ。
ということで、むつの市街地を抜ける。廃線となった下北交通の道床や、取り壊された鉄橋跡を見ながら北上。また閑散とした森林地区に入る。東通村に入る。森林に牧草地という景色の中を一直線に突き抜ける道路。北海道にいるかのような感覚である。右手には風力発電の巨大な風車が何基もそびえ立つ。
再びの津軽海峡に出る。左手にはうっすらと横たわって見える北海道の姿。この旅ではずっと海を見てきたようなところがあるが、今日の海も印象に残るものである。
下北半島の東北端という位置に突如として鉱山の施設が現れる。日鉄鉱業の尻屋営業所。10年以上前にバスで来たときにはトロッコか何かの踏切を渡った記憶があるのだが・・・どうやらトロッコは廃止となり、現在はパイプかコンベアを使って直接港に石灰石を送り込んでいるのだろう。
そして、尻屋崎の入口に差し掛かる。ここから先、岬の先端までが寒立馬の放牧地ということで、遮断機が下りている。クルマがさしかかるとバーが上がる。あいにくと馬たちの姿は少なく、観光案内にあるように何十頭という馬が草原で戯れる・・・ということにはならないが。
とうとう、尻屋崎の灯台に出た。朝の早い時間だからだろうか周りには誰もいない。また、寒立馬たちもこの時間灯台の周りにはいない。東からとも北からとも西からともつかない風が吹きまくっており、身体をいっぺんに冷やす。ちょうど津軽海峡と太平洋との境目にあたる尻屋崎。まさに「本州最果の地」。この殺風景さは「本州最北端」の大間を上回るもので、それだけに「端まで来たなあ」という実感が強いものになる。
しばし岬で海と対峙した後、岬の東側、今度は太平洋を左手に見てクルマを走らせる。すると、朝食中の寒立馬に出会う。食事の邪魔にならないようこっそりと近寄ってみる。どちらかといえばズングリしたような馬。これが下北の人たちにとっては重要な力資源であったのだ。かつては農耕などの力資源として欠かせないものだったのだが、現在はどうだろう。まさか馬肉にするわけでもなし、農耕や運搬の資源として使うものでもないだろう。ただ、この馬たちを育成することが、下北の豊かな自然文化を受け継ぐものであるのかもしれない。
尻屋の集落に入る。本州最果の集落だが、思った以上に住宅がある。ただ、このあたりに住んでいる人はどのようにして生計を立てているのだろうか(旅に出ると、ふとこういう疑問が頭によぎることがある)。田畑もほとんどないし、漁業にしては家は丘の上だし、鉱山にでも勤めているのだろうか。
今日はこの後もう1ヶ所をめぐって、それで大湊に戻ることになるだろう。そちらに向かうべく、尻屋崎から半島の東側を南下する。直線にのびた道路、時折現れる牧草地・・・このあたり「内地」とは一味違った景色である・・・・(続く)。