しばらくはこのブログもGWの紀行文が続くことになる。長かった旅のことをこうして書きつづることで、気持ちの整理にもつながるものだ。
今回の目的地は北東北。その中でも秋田から男鹿半島~五能線~弘前~青森~大湊線~下北半島というルートをとることにし、1ヶ月前の時点から列車の指定席を押さえにかかることにした。
最初の上陸点を秋田に定めたのだが、東京から秋田に向かう前日の寝台特急「あけぼの」、また当日朝の秋田新幹線「こまち」などは、1ヶ月前からの申し込みであるのに既に「秒殺」で売り切れ。夜行バスなども速攻で完売になったようだ。
そこで別ルートを検討。幸い、上越新幹線で新潟に出て、新潟から特急「いなほ」で秋田に回るという指定席を確保できた。新幹線で直行するより2時間ほど遅いが、逆にいえば2時間くらいのロスで日本海沿いの景色を眺めることができるのだから、考えようによってはこれでよかったということもいえる。
さて5月3日。新幹線の乗車駅である上野には早朝から大勢の観光客、帰省客などで混雑。上越新幹線も東京、上野、大宮で立ち客も出るほどの混雑ぶりであった。
新潟着。ここから「いなほ」に乗り継ぐ。先ほどの新幹線からの乗り換えがほとんどで、自由席は既にデッキも入れない状態、指定席車両の通路にも大勢の立ち客。指定券を持っているので人垣をかきわけて自分の席にたどり着いたが、なんと別の人が座っているではないか。相手の券を確認してもらうと、同じ列でも通路を挟んで反対側だったのが勘違いして座ったという。それを聞いて、席を替わろうとする相手に「そのままで結構です」と断る。なぜか。元々私が当てられていたのが山側の席。そして、間違えた相手が当てられていたのが、通路側ながら海側の席。海側希望の私としては、ラッキーな間違いである。
「いなほ」の季節には全くほど遠いが、それでも特急、越後平野を駆け抜け、北部の海沿いにさしかかる。左側にはうっすらと横たわる佐渡。快晴の空に海の水色がよく映えている。笹川流れをいった奇岩などを次々と眺めた後、山形県に入る。昨年の冬、寒風にあおられて列車が脱線、4名が死亡する事故があったが、その現場近くの最上川の鉄橋を渡るときには非常に慎重な徐行運転となった。
新潟を出たときにはあれだけたくさんいた立ち客も鶴岡や酒田、象潟でほとんど降りてしまい、秋田県に入る頃には空席もでるようになった。
旅の1日目は男鹿半島を回る。鉄道旅行としては未乗の男鹿線があるが、どうせなら男鹿半島のいろいろなところを見て回りたい。それを考えると男鹿線~バス乗り継ぎは本数や行き先が限られており、消化できない。ということでレンタカーのお世話になる。
秋田港を経て、男鹿半島の付け根の海岸を走る。左手に海岸、そして砂防林の中を直線道路が突き抜けており、その中を突っ走るのは実に気持ちよい。鮮やかな海岸の向こうには男鹿半島の真山と寒風山がそびえる。まずは手前の寒風山を目指す。
元は火口だったという窪地を持つ寒風山。樹木はほとんどなく芝に覆われたような山であるが、それだけに日本離れした景色に見える。もっともこれが冬なら文字通り寒い風が容赦なく吹き抜け、身の置き場もなくなるのだろうが・・・。
頂上付近ではパラグライダーを楽しむ人もいる。また四方を見渡すと日本海、八郎潟が実に広々として眺められる。360度、これだけオープンに景色を眺められるスポットというのはそうあるものではない。快晴ではあるが強い風が吹きつけるのも忘れて、景色に見入る。
寒風山を下り、「なまはげライン」という道路を通って真山の麓の「なまはげ館」へ。そう、男鹿半島といえば「なまはげ」である。もう、いろんなところに「なまはげ」がつく。中には「なまはげ直売所」なんてのもあったな・・・。なまはげを直売するのか、なまはげが直売するのか、何やらいろんなことを連想させてくれるものである。
「なまはげ」行事は年越しの風物詩であるが、ここ「なまはげ館」では観光客向けに、隣接する「伝承館」でなまはげの実演を行っているそうだ。ちょうど開演が近いということで、昔ながらの曲がり家を復元した「伝承館」に向かう。
まず「なまはげ」のことについて、この家の主人役から説明があり、「いま、なまはげからメールが来まして・・・もうすぐお隣さんからこちらに来るようです」とあり、いよいよなまはげの体験。小さい子どもだけではなく、大人の間にも緊張感が漂う。
バリバリバリ!!
ワオーッ!!
やってきたなまはげ2人。ひとしきり家の中を暴れまわる。これって、悪役レスラーが入場前にチェーンだのサーベルだの振り回して観客席に乱入するシーンによく似ている。こっちのなまはげも包丁振り回したり、子どもを威嚇したり・・・早速泣き出す子どもも。
ひとしきり暴れた後は主人から酒を振舞われ、子どもがちゃんと勉強するようにとか、女房がきちんと家事をするようにとかいう説教をし、最後には来たる年の豊作を祈願する。そして帰る前には「ちゃんと勉強するか。おお、よしよし」と子どもに握手を求めたりとか、まさにファンと握手する悪役レスラーみたいな振る舞い。最後は拍手で送り出されたなあ・・・。それでも最後までビビッていた子どももたくさんいたようである。
再び「なまはげ館」に戻り、なまはげに関する展示を見て回る。なまはげの衣装を着て記念撮影というコーナーもある。もっとも、面までかぶれば誰だかわからなくなるので、面は片手に持つのがポーズとか。中には「ウチの母ちゃんは面をかぶらなくてもなまはげそっくりだから・・・」などと子どもが口走ったために、本当になまはげと化したお母さんもいたようだ・・・。
圧巻だったのが、各地に伝わるなまはげが一堂に会したコーナー。いかにもなまはげという面もあれば、結構ユーモラスな面もあり、見るものをうならせる。ただそれを見てまた泣き出す子どもも。いや実に楽しめる「なまはげ館」である。
ここまで来れば半島の海岸を楽しむこととしよう。次に向かうのは半島の突端、入道崎である・・・・(続く)。