まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

恐山と奥薬研~北東北紀行・8

2006年05月23日 | 旅行記B・東北

GWの北東北紀行も4日目に入った5月6日。男鹿~五能線~津軽と続いてきた旅も、今日からは下北半島に入る。東京で「下北」といえば「下北沢」を指すが、私などは「下北系」という言葉を聞くと、下北半島の未開の地のわびしさをイメージしてしまうからいけない。

20065_1755日の夜は青森で泊まり、翌日は例によって早起きして青森駅に立つ。前日にねぶたを見たのと酒を飲んだのとで、今回の青森の地はおしまいにする。朝の早い列車で野辺地に向かう。ここが下北半島を行く大湊線の始発駅。

ここから乗る大湊線は「はまなすベイライン」という愛称がある。2両の気動車に数組の旅行客を乗せて出発。小さな野辺地の町を抜けると、荒涼とした原野の風景。海岸線のすぐ近くを走るが、なんだか寂しく感じる車窓である。五能線とはまた違う、最果てを目指す鉄道。20065_176

20065_179 人家が少ないためかほとんど直線の区間を走る。普通終着駅が近づくにつれて車窓もわびしくなるものだが、この大湊線は逆で、終点は下北半島の中心・むつ市である。かつて下北交通の大畑線が分かれていた下北駅を過ぎ、むつ市の中心を走ると大きなショッピングセンターや全国的におなじみのチェーン店の看板も出てくる。これなら野辺地のほうがよほど寂しいところである。

終点の大湊着。実は大湊線にはかつて一度乗ったことがあるのだが、その時は下北で下北交通の大畑線に乗り田名部まで行き、下北~大湊間が未乗車となっていたのだ。線路がすぐ先で切れる文字通りの終着駅。改札には折り返しの列車を待つ、恐らくGWを下北で過ごした人たちであふれかえっていた。

私の今回の旅の残り時間は今日と明日の昼過ぎまでの1日半である。こちらの半島めぐりもふたたびレンタカーの世話になることにしており、駅レンタカーの窓口でもあり私の今夜の宿であるフォルクローロ大湊のフロントに向かう。同じ列車でやってきた数組の旅行者も同じようにレンタカーの手続きをしていた。

20065_183 斧の形をした下北半島。今日はその刃の部分を中心に回る。そのいずれもが初めて訪ねる土地。というわけで、まずは恐山へ。比叡山、高野山と並ぶ日本三大霊場である。むつの市街地を抜け、山道へ。途端にクルマの通りが少なくなる。高度を上げるにつれ、山の斜面にまだ根雪が残っているのを見る。途中で湧き水を汲んで一息入れ、宇曽利山湖に面した恐山にたどり着く。20065_185

有名なイタコの口寄せは例祭のときに行われるという。ただ、特に「この死者と話をしたい」というのが私の場合ないので、まあそれはどちらでもよいか。山門や地蔵堂を見て、いよいよ境内、というか場内を歩く。溶岩のようなものがあちこちで無造作に盛り上がっており、ところどころ化学変化で変色している岩もある。どこからともなく硫黄臭が漂う。ふと、「死して屍拾う人なし、死して屍拾う人なし」という、「大江戸捜査網」の口上を頭に思い浮かべる(例えが古いねえ・・・)。あとはウルトラマンなんかの特撮シーンかな。

20065_186 恐山は霊場として有名であるが、どういう地質の歴史からこのような異様な光景が出来上がったのかを語ってくれる人は少ない。

そんな岩場を抜けると、風車がまわり、お供え物などがある「賽の河原」に出会う。今回の旅では2度目の賽の河原。石をこうやって積むことがあの世との心の通信につながる。日本の仏教のナントカ宗というのを超えた、自然信仰というのか、あの世への無形の恐れというのか、その気持ちがよく現れているのがこの恐山信仰につながっているのだろうか。この場所でなら、どんな宗教的儀礼を行っても(従来仏教だろうが新興宗教だろうが)霊験あらたかに感じてしまうことだろう。20065_188

20065_190 また恐山の位置もいい。これが都会にほど近いところだと確かに訪れやすいが、それだけ恐山の神秘性とか、このような自然のロケーションは望めなかっただろう。東北の、それも津軽より厳しい自然の下北半島にあるからこその恐山。

一通り霊場の雰囲気で妙な心持ちとなり、恐山をあとにする。山中のカーブをいくつも曲がり、少し北の奥薬研温泉に着く。バスの便もあるようだが実質クルマでないと入れない地区である。

下北半島の北部には耕地というのがほとんどないが、その代わりに豊かな山林がある。この奥薬研のあたりもヒバやブナをはじめとして木材の産出が多く、かつては運搬用の森林鉄道も走っていたとか。

20065_194 さて、温泉である。まずはレストハウス併設の「夫婦かっぱの湯」に入る。入浴料200円。渓谷沿いに広々とした浴槽。ちょうど誰も入浴客がおらず、木洩れ日の中露天風呂の風情を楽しむ。こういう時「この塀の向こうに連れがいればなあ・・・」などと、柄にもないことをふと思う。

ところでこの奥薬研温泉、本当の「かっぱの湯」というのはまた別なのである。少し戻ったところにあるのが本当の「かっぱの湯」。レストハウスも何もなく、渓谷の脇に広く深く掘った温泉。湯の表面に辺りの緑がキラリと映える。こちらは無料。実に野趣のある温泉である。もちろんというべきかこちらは混浴。しかし私が訪れた時は無人・・・。脱衣所の壁には長い年月を経ていろんな落書きがなされている。カップルの書き込みも多い。そりゃ、こういう野趣ある露天風呂で二人きりなんてことになったら・・・と想像する。川の流れを聞きながら、しばしうっとりとする。20065_195

下北の湯でリラックスし、山を下りる形で大畑の町へ。いよいよ津軽海峡が右側に広がる。

これから目指すのは、いよいよ本州最北端の地・大間である・・・・(続く)。20065_184

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