JR全線完乗から一夜明けた12月6日、早いものでこの日の夕方の新千歳からの飛行機で関西に戻る。
今回の目的は最後の区間の完乗にあったため、2日目はいわばエキシビション。時刻表を広げると、朝6時の列車に乗ればこれからさらに北にある音威子府までなら往復することができる。次の列車でも、名寄まで行って少し見物して戻ることができる。
でもまあ、せっかく北の都市を訪ねたことだから、少し見物でもして行こうと思う。ということで、午前中を市内見物に当てることにする。
旭川の街には5年前に訪れたことがある。その時は前夜はオホーツクに近い生田原に宿泊し、石北線で上陸。当時紋別に住んでいた、旅サークルでご一緒だったご一家がわざわざ旭川まで出てこられ、駅前で昼食の後、『塩狩峠』で有名な三浦綾子記念館を訪れた。しばしのひと時であったが、あれから5年、皆さんお元気でお過ごしなのかな。
ホテルで北海道産の食材にこだわったバイキング料理の朝食をいただく。食糧自給率の低下が叫ばれるが、その中でも北海道は100%に近いものがあるのではないかと思う。改めて、この大地の豊かさを感じるところだ。
この日は雨が降ったかと思えば晴れ間ものぞくという、変わりやすい北国の天候。その中を旭川駅まで歩く。まず向かったのが、大雪地ビール。こちらは駅から歩いて5分くらいのところにあるのだが、登録有形文化財に指定されているレンガ造りの建物が並ぶ一角にある。
朝早くということで開館はしておらず建物外観を眺めるだけだが、明治から続いている建物は現在地ビールレストランのほかにはギャラリーなどとして活用されている。こういう近代化遺産を眺めると何だか心が落ち着くものを感じる。
さて、駅に戻りさらに25分ほど歩いたところ、ちょうど駅の真裏にあたる位置にあるのが旭川市博物館である。その街の歴史を知るにはこういう施設というのは欠かせないものがあり、これまでの私の街歩きの中にも取り入れてきたことである。
この博物館の売りは「アイヌ文化の紹介」である。昨年内部をリニューアルしたとかで、シックな感じにまとめられた展示室内には、精巧につくられた人形や、アイヌの住居「チセ」の復元がある。展示の説明が結構低い位置にあったりする。身体を折り曲げないと読めない状態にすることで、サッと流すのではなくしっかりと読んでもらおうというものである。また、説明文がマンガになっていて入り込みやすかったりということがあった。こうしたアイヌ文化を初めとして、旭川の地学や、屯田兵から軍都になるまでのプロセスなどが描かれている。
これは、結構「見せる」博物館というのを意識しているのかなと思う。旭川といえば有名なスポットは旭山動物園がある(今回の旅で行くことはありませんが)が、そこがブレイクしたのは「行動展示」を初めとした「見せるための工夫」。その影響があるのかどうか、ここ旭川市博物館も「見せるための工夫」はそれなりに散りばめられているように思う。
中心であるアイヌ関連の展示にしても、「内地人対アイヌ」というここのところ描かれがちな観点ではなく、狩猟、採集生活が中心の一方、オホーツクや日本海を股にかけて広範な交易活動を行っていた軌跡が紹介されている。ここで『アイヌの歴史 海と宝のノマド』(瀬川拓郎著、講談社選書メチエ)を買い求め、アイヌ文化への理解を深めることとする。結構、見ごたえのある博物館であった。
駅に戻り、ニシン、カズノコをメインとした「海鮮てんこめし」を買い求め、特急「スーパーカムイ」の客となる。