1948~49年といえば、日本はまだGHQの占領下にあり、プロ野球はまだ1リーグの時代で、前の首相のおじいさんが首相をやっていて・・・・と、えらい昔のことである。もちろん私は産まれていないし、私の叔父がようやく産まれたかなという頃である。
その時以来、61季ぶりにアメフトの甲子園ボウルに出場するのが関西大学カイザースである。関西のアメフトといえば関学が33連覇をするなど圧倒的な強豪で、それに京大が続き、最近では立命館も強豪の仲間入りを果たしたといったところ。関大は途中で二部降格も味わうなど、決してアメフトが強いというわけではなかった。
それが今季は3強に割って入る形になり、何と関西学生リーグで7戦全勝での優勝。今季から甲子園ボウルは関西対関東の試合ではなく、全国各地区の優勝校による全日本大学選手権の決勝戦ということになったのだが、それも勝ち上がっての甲子園ボウル出場である。
こうなれば、応援しにいかないといけないでしょう。いや何、私の母校なもんで・・・・(文学部を96年春に卒業しております)。
ということで、甲子園球場に向かう。西宮の黄色いチームを応援することはなく、また高校野球にはあまり興味がない私にとっては、甲子園というのは近くて遠い球場である。まさか、今年の「野球場めぐり」の最後に甲子園が入ってくるとは。もちろん、甲子園ボウルを生で観戦するのは初めて。
陣取ったのはライト側のバックスクリーン横のエリア。野球では絶対に座らない位置なので、アメフト観戦で座ってみるのも面白いだろう。それにしても、「特別指定席」というエリアだが、野球の外野席のため前後左右が非常に狭くて身動きがとれず、居住性はそれほどよくない(この写真を撮った時はまだ客が入っていなかったのだが、試合開始が近づくに連れてギュウギュウ詰めに)。野球とフットボールではグラウンドとスタンドの造りが違うので仕方ないのだが、こういうのは少し考えたほうがよいのではないかな(やはり個人的にはフィールド用の競技場で行うべきと思う)。
対戦相手は法政大学トマホークス。ここ10年で8回の甲子園ボウル出場という強豪。なお、両校は毎年定期戦を行っているそうだが、今年の春の試合では法大が36対0と関大に圧勝。うーん、格でいえば法大有利で、関大がどこまで粘れるか、何点取れるかといったところだろう(戦前の関大サイドでは、ロースコアの試合に持ち込みたいとのこと)。
関大の攻撃のカギを握るのが、RBの藤森(写真左=#1)。高校時代は野球部だったそうだが、小柄ながらスピードを生かしてフィールドを走り回り、今季は試合の流れを変える大きなプレーを見せているとか。
13時10分にキックオフ。1Qは法大がFGで3点を先制するも、関大が7対3と逆転。しかし2Qは法大がラン、パスなど多彩な攻撃を見せ、特に法大のRB原(#29)のタフなプレー(関大の選手が2人がかりでつぶしにかかってもなかなか倒れないのね)が光り、16対10と逆転。やはり実力の差があるのかな。
ところが、ここで流れを変えるプレーを見せたのが関大の藤森。前半終了間際、ボールを受けるや身のこなしよく一気に駆け抜ける。スタンドが総立ちになる中、もう少しでTDというところまで一気に地域を挽回する。この後TDにつながり、前半を終えて17対16とリードを奪う。
後半になると両軍の点の取り合い。その中で光ったのは藤森とQB原口(#14)の二人。私のイメージではQBはパスを投げたりタイミングよく次の選手にボールを渡すものと思うのだが、3Qの8分には自ら30ヤード以上爆走してTDを決めるなど(ラグビーじゃないんだから)得点に絡む。
藤森の俊足にもうならされる。法大のTDが決まった後のキックのリターン。これをキャッチした藤森が、前のほうでもみ合いになっているところを一気にすり抜け、そのまま爆走。今度はそのままTDにつながる。記録では100ヤードのうち84ヤードを一気に爆走ということで、これで主導権は関大に渡ったように見えた。
その後も法大が原のTDなどで追い上げを見せるが、守備陣もインターセプトで相手攻撃を封じ込めるなど、僅差でしのぐ。
最後は残り2分で原口が68ヤードを自分で持って行き(だからラグビーじゃないんだって)ダメ押しのTD。キックも決まって50対38となった。
残り30秒となってからは外野スタンド全体から時計を見ながらのカウントダウン。そして試合終了。スタンドは総立ちとなり、紙テープも投げ込まれた。戦前の予想を覆す勝利に、OBの一人として感動した。
年間のMVP(ミルズ杯)には藤森、そして甲子園ボウルのMVPには原口が選ばれた。一方の敢闘賞には原が選ばれ、両校の応援席から熱戦を見せた選手たちに大きな拍手が送られた。
最後は応援席に関大の校歌が演奏される。こんな感じで校歌を歌ったのって何年ぶりかな・・・?社会人になってからは初めてではないかな。甲子園ボウルという舞台も印象に残るものであった。
さてこの後は社会人のXリーグの優勝チームとライスボウルで激突する。例年ならニュースで結果を見るだけだったが、今回は東京ドームには行けないにしてもテレビ観戦してみようかな。カイザース(皇帝)の名にふさわしい、堂々とした試合をまた見せてほしいものである・・・・。