まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

『タッチ・タッチ・ダウン』

2009年12月14日 | ブログ

昨日は甲子園ボウルでの私の母校・関西大学の劇的な試合を観戦。後で聞くと私のかつてからの友人も甲子園球場にかけつけていた人、NHKのBS中継を見ていた人もおり、「やはりこの日を待っていたんや」と思うことしきり。 甲子園を出てから尼崎に戻り、日本一になったからというわけではないが駅前で一人祝杯を挙げるのであった・・・・。

さて、それはさておき、アメフトを観戦したからというわけではないが、かつて読んだ書物の中から「これは」という一冊を引っ張り出す。

『タッチ・タッチ・ダウン』(山際淳司著 角川文庫版)。

51zb3wkarkl山際淳司といえば、「江夏の21球」という、プロ野球のノンフィクションの草分け的な作品を収めた『スローカーブを、もう一球』に代表される、スポーツもののライターの第一人者である。私は高校生時代から、この山際淳司の作品と、同じプロ野球でもおっちゃん向けにドロ臭く舞台裏を描いた近藤唯之の作品(夕刊フジに連載というから、その立ち位置というのがよく分かるというもの)の両方をよく読んでいたのだが、その中で山際作品の飄々とした切り口というのが、当時NHKのサンデースポーツのメインキャスターを務めていたことと合わせてさわやかな印象として残っている。他にも、アメリカズ・カップやツール・ド・フランスやスカッシュなど、これまで日本ではマイナースポーツとされていたものにも光をあて、注目度を高めたことでも知られる。

今回この作品を取り上げたのは、私がアメフトのルールとか、アメフトをやっている人の姿というのに触れた最初の作品ということがある。この作品自体は実在の選手を追ったノンフィクションではなく、主人公といえば「上司とのいさかいが元で銀行を辞め、妻とも別居中。タクシー運転手を続けながらクラブチームでアメフトを続けるが、何もかもが中途半端な三十代の男性」・・・というもの。その彼が「何かを変えたい」と、現役を引退して米軍に務める伝説のQBを訪ね、自分のクラブとの対戦を申し入れ、それに向かって挑戦する・・・という姿を描く。

その主人公の周りに登場する個性的な人物も魅力的なのだが、一度夢に敗れた主人公が、よそから見ればささやかなことなのかもしれないが自分の生きがいを見つけ、新たに挑戦する姿というのが、特別でも何でもなく舞台を変えればいくらでもあるということに共感を覚える。

この一冊を最初に手にしたのはまだ20代だったが、やはりその時では主人公に自分を投影させるというのはまだまだ早かったのかもしれない。30代も後半に入り、アラウンド・フォーティーの声もかかろうかという私としても、この年齢になってようやく少しは実感できるところなのかなと思う。

随所にアメフトに関するルールの説明が主人公のセリフや地の文で触れられており、自然とそちらに興味を持てるようにもなる。小説のジャンルになるのだろうが、スポーツライターとしての幅の広さを感じることができる。

今日のところは久しぶりに手にしただけだが、これから年末年始で時間の空くときなどを見計らって、もう一度読んでみようかと思う。ひょっとしたらその当時とは結構時代環境が変わっており、また異なる感想が得られるのかもしれない・・・・。

コメント