まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第16回四国八十八所めぐり~第63番「吉祥寺」

2018年05月02日 | 四国八十八ヶ所
国道11号線の北側に面した63番の吉祥寺。ただこちらは裏門のようで、山門には脇道を入った東側にある。山門の前には狛犬ではなく象の置物が左右に並ぶ。また、山門には「四国唯一毘沙聞天」の文字がある。毘沙門天(ここ吉祥寺では毘沙「聞」天と書き表すそうだ)が本尊というのは四国八十八所ではここだけとのことだ。

吉祥寺は、弘法大師がこの辺りで光を放つ檜を見つけ、毘沙聞天と吉祥天の像を彫って安置したのが始まりとされている。当初は現在地から2キロほど南の山中に建てられたが、豊臣秀吉の四国征伐の時、小早川隆景が近くの高尾城を攻めた際に焼かれた。江戸時代になり、末寺があったこの地に毘沙聞天が移され、再建された。本来の札所は山の中だが、讃岐街道沿いに移ったのは参詣者の便宜を図ってのことかなとも思う。

吉祥寺と聞くと、東京の中央線沿線の人気の住宅地をイメージする方もいるだろう。四国八十八所とは関係ないと思いつつ、東京の吉祥寺の地名の由来についてネットで調べてみた。果たして四国とは関係なかったのだが、驚くことに、吉祥寺には「吉祥寺」という名前の寺がないとあった(トリビアの泉に出そうなネタ)。東京の方にはよく知られていることなのかもしれないが、吉祥寺という寺は文京区の本駒込にあるそうだ。なお、この寺は当初水道橋の辺りにあったのだが、江戸市中が大きな被害を被った明暦の大火で、寺は消失を免れたが門前町の人たちが焼け出されてしまうことがあった。この人たちは後に幕府の斡旋で武蔵野台地に移り住み、新田開発に従事することになったが、新たな地名として愛着ある寺の名前を付けたという。それが地名の吉祥寺の由来とされている。なお、水道橋の寺はその後別の火災で焼失し、現在の本駒込に移された。この記事を書くにあたり、「へぇ~」だった。

さて話を四国の吉祥寺に戻す。境内の塀に沿って、四国巡拝の記念の石碑が並ぶ。最近では数年前に建てられた200回記念というのが山門の内側にある。四国を200回巡るというのはどういう境地なのかなと思う。寺参りの移動や一連の作法もほぼルーティンと化してしまっているのではないかといらん心配をしてしまう。四国巡拝が生活そのものになってしまっているというか。

まずは本堂にお参り。連休中とあってか、歩きの人、クルマの人含めて白衣、笈摺姿の人も目立つ。続いて、斜め前の大師堂に手を合わせる。二つのお堂が接しているので、ろうそくや線香は1回でまとめて済ませてもよいくらいである。

この吉祥寺で知られているのは、成就石というもの。本堂から20mほど離れたところに、直径30cmほどの穴が開いた石がある。本堂の前から金剛杖を手にして目をつむったまま歩き、この穴に杖を通すと願いがかなうという。これに挑戦したというブログやネット記事を見たので私もやってみる。しかし、境内で人が行き交う中、まず目をつむって石のところにたどり着くのが無理なことだ。そのうえ、目をつむって金剛杖を穴に通すとなると・・・。難しいからこそ、できた時に願いが成就することにつながるのだろうが、ここは挑戦を断念して、金剛杖を穴に通すところのイメージだけ写真に収める。

納経所に向かう。建物の前には西条市にある5ヶ所の札所の道順や所要時間が書かれた看板が出ているが、やはりというか果たしてというか、隣の62番は宝寿寺ではなく、61番の香園寺の駐車場に設けられた礼拝所とある。納経所の中でも、宝寿寺が霊場会に入っていないからと礼拝所への巡拝を薦める張り紙がある。うーん、前と後でそちらに誘導しようという作戦やな。実際、回る人はどのような行動を取っているのかな。

これで吉祥寺は終わり、次は64番の前神寺である。吉祥寺は予讃線の伊予氷見駅近く、前神寺は隣の石鎚山駅から歩いて数分のところにある。普段の生活なら1駅列車に乗って・・・となるが、両駅には特急は停まらず、普通列車も1時間に1本である。他には国道11号線をバスが走っている。列車かバスに乗ればすぐ着くが、ここは歩いてみよう。公共交通機関遍路のスタイルを取っているが、やはり少しは歩かないと。

今度は讃岐街道ではなく、国道を歩く。クルマの量は多いが、幸い歩道が確保されているので歩きやすい。

途中、このような建物に出会う。これでもパン屋さんである。私は死んでも入りたくないが、タイガースのファンの方なら昼食確保をかねて買い物するのも良いのでは(すでにタイガースファンの遍路の間では有名だったりして)。なお、表にタイガースの先発ローテーションの秋山拓巳投手とあるのは、地元西条高校出身だからだろう。西条高校といえばかつての名選手として、藤田元司(巨人、監督)、森本潔(阪急、中日)などがいる。この辺りも愛媛の野球どころと言ってもいいだろう。

吉祥寺から前神寺へは3キロあまりでさほど時間がかからずに近づいた。その手前に、石鎚神社の看板と大鳥居が見えてくる。石鎚神社、ここは八十八所の札所ではないが、ぜひ行くところだろう。この後の前神寺、そして次回に予定している横峰寺もそうだが、石鎚信仰に縁の深いところ。石鎚神社はその中心、本宮に当たる。

少し手前で大鳥居をくぐる。ここからしばらく坂道を上ると・・・。
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