5月4日、朝から青空が広がる中、伊予西条駅前に出る。石鎚山方面に向かうバスは30人ほどの人がバスを待っている。その前に60番の横峰寺に向かう。標高745m、石鎚の山々を望む高さで、四国八十八所の中では2番目の高さを持つ。
横峰寺には公共交通機関でアクセスする方法がある。石鎚山に向かう路線バスに乗り、横峰登山口バス停で下車する。ここから少し歩いた上の原で横峰寺への登山バスに乗り換える。バスで約30分揺られて寺の駐車場に着き、徒歩15分で寺に行くことができる。普通ならこれで行くのが妥当だろう。
ただ、案内を見る中でこの登山バスも厄介に見える。往復1750円というのは致し方ないとして、ダイヤが「不定期」なのである。路線バスは時刻表通りに運転するが、登山バスは乗客の集合状況によって運転するという。まあ、普通に考えれば行きの路線バスには連絡すると思うが、帰りが路線バスの時刻に合わせて運転されるのか、寺では時間を取ることができるのかわからないところがある。寺で時間を過ごすならまだしも、登山口のバス停で路線バスを長時間待つというのも面倒だ。だからあまりバス乗車には乗り気ではない(なお、冬季は登山バスそのものが運休となる)。
その一方で、石鎚山に登ろうというので、その前哨戦として横峰寺に歩いて上るのはどうかという気持ちが強かった。横峰寺への歩きルートは4つある。まずは、59番、今治の国分寺から続く遍路道。これは伊予小松の西側の大頭(おおと)から湯浪まで農道を歩き、その後山道を上るもの。2つ目は、61番の香園寺から奥の院を経由する登山道。3つ目は、香園寺から奥の院は経由せず、少し東側の登山道を行くもの。4つ目は、登山バスが通る車道を歩くもの。いずれも麓からは9キロほどの道のりである(もう一つ、歩き遍路の方のブログなどによると、伊予小松のビジネス旅館のお勧めルートとして「砕石場ルート」なるものがあるようだ)。
別に歩きにこだわるわけではないが、この中でルートを選ぶなら、遍路道を大頭から歩き、横峰寺に参詣後、奥の院を経て香園寺に行くのが妥当だと思う。香園寺は前々回で参詣済みだが、札所順番をつなぐ意味でもそうなるかな。もしアクシデントがあるようなら、帰りは時間を見て登山バスの利用もあり、ということにする。
その大頭へはうまい具合に新居浜~伊予西条~松山への特急路線バスがある。7時47分の石鎚山行きのバスを見送り、7時58分発の特急バスに乗る。観光バス型の車両で、西条の町中を抜け、国道11号線を走る。途中、左手に石鎚神社を見たり、右手に阪神タイガース仕様のパン屋さんを見たりと、5日前に歩いたルートを巻き戻すように進む。香園寺近くの小松総合支所のバス停で、今治方面と松山方面の路線が分岐する。特急バスは国道11号線を松山方面に直進し、次の停留所が大頭である。伊予西条からは20分ほどで着いた。
バス停の少し先にコンビニがあるので、ここでトイレや食料を調達する。歩きの人向けに手荷物の預かりサービス(500円)も行うとある。横峰寺へのベースキャンプ的な位置づけなのであろう。笈摺を羽織り、金剛杖をケースから取り出して出発。時刻は8時30分を回ったところである。横峰寺へは9.5キロの長丁場だ。
まずは麓の集落を歩く。しばらく行くと妙雲寺に着く。四国曼荼羅34番とある。道に面した境内の本堂に風格を感じる。別名を蔵王宮と呼ぶそうで、元々は石鎚蔵王大権現を祀っていたそうだ。扁額は書家の名手でもある小松藩主・一柳直卿の手によるものとある。横峰寺の前札所という位置づけで、古くは石鎚信仰にもつながっていたそうだから、ここでまずはこれからの歩きの無事を願ってお勤めをする。
なお、この蔵王宮の建物は、以前は61番香園寺の本堂だったそうだ。香園寺の本堂といえば、巨大なコンクリート造りの市民会館のような建物である。その新たな本堂を建てるにあたり、元の本堂を解体してこの妙雲寺に移築したのだという。
妙雲寺に隣接して石土神社がある。この辺りにも石鎚信仰の歴史、神仏習合の歴史というのを感じることができる。
松山自動車道の下をくぐり、ひたすら県道を歩く。道は緩やかな上りで、のどかな風景が続く。両側に目立つのは柿の木。
少しずつ勾配が急になる。その分、横を流れる中山川も渓谷ムードになる。ちょうど新緑の時季で、青空に緑がよく映えている。途中の東屋や、道端の弘法大師像も見る。
しばらくは渓谷沿いを歩くような感じである。季節が変わればまた違った表情を見せるのだろう。
大頭から7キロほど、途中お参りもしたので1時間半ほどで湯浪に着く。ここまで歩いたきた県道は行き止まりとなる。東屋とトイレがあり、駐車スペースもあるのだが、クルマが駐車スペースに収まらず手前の路肩にも停まっている。歩く途中で何台かのクルマが追い越して行ったが、そのクルマが皆ここに停まっている。ここから横峰寺へは昔ながらの遍路道、山道を行くことになる。寺近くの駐車場に行く道(登山バスも通る道)は通行料が2000円近くかかるという。それを嫌って、ここにクルマを停めて歩いて寺を往復するわけだ。
その道のりは2.2キロ。クルマから下りて「え?2.2キロもあるの?」と驚く白衣姿の方もいる。私も、9.5キロのうちの2.2キロとは言いながらも、ここまでの比較的緩やかな車道に比べて、この距離で標高差500m以上をクリアする必要がある。伊予の遍路ころがしと言われるところである。改めて気を引き締めて上ることにする。
従来の「四国のみち」の標識に加えて、最近建てたらしい案内板も目立つ。また、昔ながらの風情を残すとして、この道そのものが史跡にも指定されている。歩くのにふさわしい区間ということか。
自然の滝、渓谷もあり、丸太や鉄橋で渡すところもある。自然を楽しむことができるのはいいが、これまでも大雨や台風で水があふれて道が不通になることもしばしばあったそうだ。なかなかワイルドだ。そんな中、そこそこの数の人が山道を下ってくる。笈摺を羽織る人もいれば、トレッキングの人もいる。中には手ぶらという人も。クルマでやって来て、そのまま散歩感覚で横峰寺に行った帰りだろう。
2.2キロの坂道も前半はまだ勾配もそれほどではなかったが、残り1.5キロからぐっときつくなった。金剛杖を突きながらだが、それでもしばし休んで息を整える。後ろから元気に上がってくる若い男性グループにも道を譲る。荷物はなく、片手に納経帳一冊だけ。何ともワイルドやなあ。
しんどいながらも黙々と歩くうち、少しずつ寺が近づいて来た。最後は長い階段が続き、その先にようやく山門が見えた。湯浪の駐車場からちょうど1時間、大頭からは2時間半かかっての到着である・・・。
横峰寺には公共交通機関でアクセスする方法がある。石鎚山に向かう路線バスに乗り、横峰登山口バス停で下車する。ここから少し歩いた上の原で横峰寺への登山バスに乗り換える。バスで約30分揺られて寺の駐車場に着き、徒歩15分で寺に行くことができる。普通ならこれで行くのが妥当だろう。
ただ、案内を見る中でこの登山バスも厄介に見える。往復1750円というのは致し方ないとして、ダイヤが「不定期」なのである。路線バスは時刻表通りに運転するが、登山バスは乗客の集合状況によって運転するという。まあ、普通に考えれば行きの路線バスには連絡すると思うが、帰りが路線バスの時刻に合わせて運転されるのか、寺では時間を取ることができるのかわからないところがある。寺で時間を過ごすならまだしも、登山口のバス停で路線バスを長時間待つというのも面倒だ。だからあまりバス乗車には乗り気ではない(なお、冬季は登山バスそのものが運休となる)。
その一方で、石鎚山に登ろうというので、その前哨戦として横峰寺に歩いて上るのはどうかという気持ちが強かった。横峰寺への歩きルートは4つある。まずは、59番、今治の国分寺から続く遍路道。これは伊予小松の西側の大頭(おおと)から湯浪まで農道を歩き、その後山道を上るもの。2つ目は、61番の香園寺から奥の院を経由する登山道。3つ目は、香園寺から奥の院は経由せず、少し東側の登山道を行くもの。4つ目は、登山バスが通る車道を歩くもの。いずれも麓からは9キロほどの道のりである(もう一つ、歩き遍路の方のブログなどによると、伊予小松のビジネス旅館のお勧めルートとして「砕石場ルート」なるものがあるようだ)。
別に歩きにこだわるわけではないが、この中でルートを選ぶなら、遍路道を大頭から歩き、横峰寺に参詣後、奥の院を経て香園寺に行くのが妥当だと思う。香園寺は前々回で参詣済みだが、札所順番をつなぐ意味でもそうなるかな。もしアクシデントがあるようなら、帰りは時間を見て登山バスの利用もあり、ということにする。
その大頭へはうまい具合に新居浜~伊予西条~松山への特急路線バスがある。7時47分の石鎚山行きのバスを見送り、7時58分発の特急バスに乗る。観光バス型の車両で、西条の町中を抜け、国道11号線を走る。途中、左手に石鎚神社を見たり、右手に阪神タイガース仕様のパン屋さんを見たりと、5日前に歩いたルートを巻き戻すように進む。香園寺近くの小松総合支所のバス停で、今治方面と松山方面の路線が分岐する。特急バスは国道11号線を松山方面に直進し、次の停留所が大頭である。伊予西条からは20分ほどで着いた。
バス停の少し先にコンビニがあるので、ここでトイレや食料を調達する。歩きの人向けに手荷物の預かりサービス(500円)も行うとある。横峰寺へのベースキャンプ的な位置づけなのであろう。笈摺を羽織り、金剛杖をケースから取り出して出発。時刻は8時30分を回ったところである。横峰寺へは9.5キロの長丁場だ。
まずは麓の集落を歩く。しばらく行くと妙雲寺に着く。四国曼荼羅34番とある。道に面した境内の本堂に風格を感じる。別名を蔵王宮と呼ぶそうで、元々は石鎚蔵王大権現を祀っていたそうだ。扁額は書家の名手でもある小松藩主・一柳直卿の手によるものとある。横峰寺の前札所という位置づけで、古くは石鎚信仰にもつながっていたそうだから、ここでまずはこれからの歩きの無事を願ってお勤めをする。
なお、この蔵王宮の建物は、以前は61番香園寺の本堂だったそうだ。香園寺の本堂といえば、巨大なコンクリート造りの市民会館のような建物である。その新たな本堂を建てるにあたり、元の本堂を解体してこの妙雲寺に移築したのだという。
妙雲寺に隣接して石土神社がある。この辺りにも石鎚信仰の歴史、神仏習合の歴史というのを感じることができる。
松山自動車道の下をくぐり、ひたすら県道を歩く。道は緩やかな上りで、のどかな風景が続く。両側に目立つのは柿の木。
少しずつ勾配が急になる。その分、横を流れる中山川も渓谷ムードになる。ちょうど新緑の時季で、青空に緑がよく映えている。途中の東屋や、道端の弘法大師像も見る。
しばらくは渓谷沿いを歩くような感じである。季節が変わればまた違った表情を見せるのだろう。
大頭から7キロほど、途中お参りもしたので1時間半ほどで湯浪に着く。ここまで歩いたきた県道は行き止まりとなる。東屋とトイレがあり、駐車スペースもあるのだが、クルマが駐車スペースに収まらず手前の路肩にも停まっている。歩く途中で何台かのクルマが追い越して行ったが、そのクルマが皆ここに停まっている。ここから横峰寺へは昔ながらの遍路道、山道を行くことになる。寺近くの駐車場に行く道(登山バスも通る道)は通行料が2000円近くかかるという。それを嫌って、ここにクルマを停めて歩いて寺を往復するわけだ。
その道のりは2.2キロ。クルマから下りて「え?2.2キロもあるの?」と驚く白衣姿の方もいる。私も、9.5キロのうちの2.2キロとは言いながらも、ここまでの比較的緩やかな車道に比べて、この距離で標高差500m以上をクリアする必要がある。伊予の遍路ころがしと言われるところである。改めて気を引き締めて上ることにする。
従来の「四国のみち」の標識に加えて、最近建てたらしい案内板も目立つ。また、昔ながらの風情を残すとして、この道そのものが史跡にも指定されている。歩くのにふさわしい区間ということか。
自然の滝、渓谷もあり、丸太や鉄橋で渡すところもある。自然を楽しむことができるのはいいが、これまでも大雨や台風で水があふれて道が不通になることもしばしばあったそうだ。なかなかワイルドだ。そんな中、そこそこの数の人が山道を下ってくる。笈摺を羽織る人もいれば、トレッキングの人もいる。中には手ぶらという人も。クルマでやって来て、そのまま散歩感覚で横峰寺に行った帰りだろう。
2.2キロの坂道も前半はまだ勾配もそれほどではなかったが、残り1.5キロからぐっときつくなった。金剛杖を突きながらだが、それでもしばし休んで息を整える。後ろから元気に上がってくる若い男性グループにも道を譲る。荷物はなく、片手に納経帳一冊だけ。何ともワイルドやなあ。
しんどいながらも黙々と歩くうち、少しずつ寺が近づいて来た。最後は長い階段が続き、その先にようやく山門が見えた。湯浪の駐車場からちょうど1時間、大頭からは2時間半かかっての到着である・・・。