まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第30番「明王寺」~近畿三十六不動めぐり・26(滝谷不動で護摩供と身代わりどじょう)

2018年11月21日 | 近畿三十六不動
近畿三十六不動めぐりの26番目は明王寺。ただこの名前だけではどこにあるかピンと来ないのだが、富田林市の滝谷不動明王寺、滝谷不動尊といえば、私の自宅からも近いところなのであそこかとなる。最寄り駅は近鉄長野線の滝谷不動駅。通勤の大阪阿部野橋駅にも看板が出ている。

17日、朝イチと夕方に用事があり、その合間の時間を利用する形で出かける。1日コースなら、浄土真宗の寺内町が残り、最近では警察署の留置場から容疑者が逃走する事件で全国に名前が広まった富田林のかいわいとの組み合わせとなるだろう。また、観戦したことはないが山奥には富田林バファローズスタジアム(年に一度、ウエスタンリーグの試合が行われる)もある。

藤井寺から長野線直通の列車で滝谷不動に到着。括弧書きで「大阪大谷大学前」の愛称がある。京都の大谷大学とは別法人だそうだが、同じ浄土真宗大谷派の系列である。男女共学だが元々女子大学のためか、列車からは女子学生の下車が多い。その中で、駅員に「大谷大学はどっちですか?」と尋ねる若いお兄さんの姿もある。どうやらこの日と翌日は学園祭が行われていて、それで学外から来る人も多いようだ。ならば不動めぐりの後で・・・と言って、OBでもないおっさんが乗り込んだら・・確実に怪しまれるな。

本題に戻って、滝谷不動へは大阪大谷大学とは反対方向の山側に向けて歩く。石川を渡って県道の上り坂を歩くが、河南町や千早赤阪村方面に通じる道のためか、クルマの交通が多い。いっぽうで道端の歩道はほとんどないために歩きにくい。

滝谷不動まで4丁を示す標石を見て、不動尊の手前には数軒の旅館、ホテルがある。お参りする人の利用もあるのだろうか。

駅から15分ほどで山門に到着した。滝谷不動は「日本三大不動の一つ」とされている。出た、「日本三大◯◯」。日本三大不動も諸説あり、不動ではなく動きまくっているようだが、全国的に有名なのは成田山新勝寺(成田不動尊)、滝泉寺(目黒不動尊)の2つに、後は各地で3つ目を名乗っているとか、「青不動」「赤不動」「黄不動」という括りで青蓮院や三井寺を挙げる向きもある。他にも日本三大不動に名乗りを挙げる寺院はたくさんあるようで、要は評価が定まっていないということである。

まずは本堂に向かう。こちらでは1日5回、本堂の中での護摩供を行っていて、祈祷を申し込んでいなくても外陣で手を合わせることができるという。次の護摩供は11時半で、30分あまり時間があるのでその間に境内を回ることにする。まず私個人で本堂の外でお勤めを行い、バインダー式の朱印をいただく。

本堂の隣の法楽殿ではクルマの安全祈祷が行われていて、般若心経ほかを唱えながらの太鼓の音色が滝谷不動の山中に響く。この力強い太鼓は真言宗ならではである。

観音堂から多宝塔に続く参道がある。木々も少しずつ色づいている。途中の祠にも手を合わせて、本堂の背後にある多宝塔に出る。

滝谷不動は821年、弘法大師がこの地を訪ねた時に世の安泰を願って不動明王の像を彫って祀ったのが由来とされている。当初は少し東にある嶽山の中腹に建てられ、この一帯を本拠地とする楠木正成も砦を築いて不動明王を守護神としたこともあったが、その後の南北朝の争いの中で焼失した。この時本尊の不動明王は滝の下に移されていて難を逃れ、後に盲目の法師が不動明王の霊験を説いてお堂を建てて祈ったところ、眼が見えるようになったという。このことから眼病治癒のご利益もあるとされている。現在の形になったのは江戸時代からだという。ただ、境内の建物は近年再建、あるいは新たに設けられたものも多い。

県道を挟んだエリアに向かう。木陰に覆われたところで、まずは一願不動に出会う。これはあちらこちらにある水掛け不動である。

塀の奥にもう一つ不動明王が祀られている。この奥、扉と壁で仕切られている向こうで滝の音がする。この滝が滝谷不動の代名詞なのだろうが、やろうと思えば滝行もできるようだ。訪ねた時、たまたま塀の向こうではブラシで石をこする音もしていた。行場の清掃作業だろう。

またこちらには放生会として「身代わりどじょう」というのがある。どじょうを川に放流してやると眼病が良くなるとの言い伝えで、白く塗られた空き缶の中にどじょうが大人しく寝そべっている。100円納めて川縁の樋から落とすと川底に落ちるのが見える。昔からの信仰なのだろうが、どじょうというのはなぜだろう。この辺りでよく捕れていたのかな。

再び山門に戻るとちょうど護摩供の時間である(本堂内は撮影禁止のために画像なし)。本堂の外陣に上がると、祈祷を申し込んでいた10人あまりの人たちが内陣の横に座っている。晴れ着姿の子どもがいるのは七五三のお参りである。一方、祈祷を申し込まないいわば「フリの客」は仕切りの外の外陣に座る。僧侶が二人来て、一人は祈願文の読み上げや読経担当、そして格上と見える僧侶は護摩を焚く。最初に不動明王の真言を祈願の人たちと唱え、九条錫杖、さらには太鼓を叩きながらの般若心経、各種真言と続く。職場の安全祈願で寝屋川の成田山大阪別院明王院(近畿三十六不動の一つでもある)にて護摩供を行うので一応作法にもなじみがあるのだが、いつ見ても法要が終わるタイミングで炎がきれいに消えるのが不思議に感じられる。先ほどお勤めしたばかりだが、改めて本尊不動明王に手を合わせる。

この後は再び県道を挟んだエリアに向かい、最近設けられた西国三十三所のお砂踏み道場や、その上にある三宝荒神堂を回る。滝谷不動も時代ごとに拡張を続けており、新たな建物も目立つ。さらに現在は平成33年の開創1200年記念事業として、客殿、寺務棟の新築工事が行われていている。日本三大不動の呼び声に応えるかのようである。

これで一通り回った形になり、次の行き先を決めるサイコロだ。

1.左京(曼殊院)

2.生駒(宝山寺)

3.湖西(葛川明王院)

4.醍醐(醍醐寺)

5.神戸北(無動寺)

6.東山(青蓮院、聖護院、智積院)

この中で出たのは「5」、神戸である。以前に同じ神戸市内の大龍寺とセットにしていたが途中で分離したところだ。神戸電鉄の箕谷駅からバスで行くようで、終わったら新開地か三宮で一献かな。

同じ道を滝谷不動駅まで戻り、かつてのラビットカー塗装の車両に乗る。ちょうど昼時で、大阪大谷大学に向かう人の数も一層増えているようだった・・・。
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