直江津から北越急行ほくほく線の普通列車に乗る。犀潟で信越線と分かれ、頚城の山中へと入って行く。ここまで来ても雪を見ることはない。
北越急行は元々は頚城地区に鉄道を誘致することを目的として計画されたが、その後さまざまな経緯があって上越新幹線と北陸を最速ルートで結ぶ高速鉄道として開業した。越後湯沢~金沢を結ぶ特急「はくたか」は時速最高160キロを出した。私も以前にこの特急に乗ったことがあるが、かなりのスピード感に頼もしさをおぼえたものである。
しかし2015年の北陸新幹線開業により、「はくたか」は新幹線の名称となり北越急行から特急はなくなった。もともと収入の多くが特急によるものだったため赤字ローカル鉄道となったが、それでも「はくたか」運転当時の「貯金」を運用するなどして財務的にはまだ安定しているそうで、ローカル鉄道ながらも「超快速」という高速列車を走らせたり、えちごトキめき鉄道への乗り入れを行ったりと利便性の維持に努めている。
そういえば先ほど乗ってきたえちごトキめき鉄道の列車の車体に、北越急行とのコラボをうたう広告がラッピングされていた。今のところは北越急行の車両がえちごトキめき鉄道に乗り入れるだけだが、設立の経緯は違うとはいえ同じ新潟県にある第三セクター線なのだから力を合わせる意味で一緒になってもいいのではないかと思う。
さて列車はまつだいから十日町を通る。多少雪景色になってきた。この辺りから乗車する客が多く、直江津を出た時はガラガラの車内も立ち客が出る盛況となった。
六日町から上越線に入る。宿泊地の長岡とは逆方向だが、いったんこの列車の終点である越後湯沢に向かう。この日は青春18きっぷを投入、先に直江津でスタンプを押してもらい、北越急行のきっぷは乗車前に六日町まで購入している。車内の運賃表示のディスプレイには「青春18きっぷは利用できません」というメッセージが何度も流れる。
10時54分、越後湯沢に到着。温泉やスキーで賑わうところということで駅前にも人が多い。この駅に来るのも久しぶりだが、駅前には新たに足湯もできている。なお、越後湯沢から上越新幹線が1駅季節運転するガーラ湯沢は強風のためこの日(30日)の営業を休止するという案内が出ている。
さて越後湯沢だが、ここはスキーをせずとも、また町中にでなくても駅ナカで結構な時間を過ごすことができる。というより、私の場合はこの「CoCoLo湯沢」に久しぶりに来るのが今回とったルートの目的といっていい。
観光客でごった返す中を抜けて向かったのが「ぽんしゅ館」。まずは「酒風呂 湯の沢」に向かう。天然温泉に酒風呂専用の日本酒を投入したものである。日本酒の成分の効果で血行を促進し、肌もスベスベになるというので評判という。浴槽も満員御礼だが出たり入ったりをする中で気持ち良くなる。
入浴の後は日本酒である。といっても居酒屋にどっかり腰を据えてというのではなく、利き酒コーナーの「唎酒番所」。新潟県内すべての酒蔵の酒を利き酒で楽しむことができるコーナーで、こちらも久しぶりに訪ねる。1回500円でおちょことコイン5枚をいただき、コインを利き酒マシーンに投入しておちょこ一杯分を楽しむものである。近年は外国人にも人気なのか、コーナーでは外国語も飛び交っているし、スーツケースを置くためのスペースもできていた。
それにしても、200近くの銘柄があるのでどれにしようか迷うところである。目安ということでスタッフお勧めの銘柄や、人気ランキングの上位銘柄が黒板に書かれている。後は醸造方法や、日本酒度、辛口か甘口かというそれぞれの紹介文に頼ることになる。
今回選んだのは「越後鶴亀」、「上善如水」、「八海山越後で候」、「お福正宗」、「越乃寒梅」。画像に「メダル1枚使用」とあるのにお気づきだろうか。かつてはどれもメダル1枚だったと思うが、このところはさまざまな特徴を出すために、限定版やスタッフお勧めについてはメダルも2枚、3枚と増え、多いのだとメダル10枚というのもある。メダル10枚といえばおちょこ一杯の利き酒だけで1000円。さすがにそこまでは手が出ない。
利き酒のアテとして各地の個性ある塩や、キュウリにつけて食す味噌もある。またこれも新たに出会ったのだが、セルフでお燗もできる。酒を注いだおちょこを、ヒーターで温められた湯の中に2~3分つけて引き上げる。そうすると冷やとは違った味わいが出る。これだけの銘柄があると、中には燗で飲んだ方がその良さがより引き出されるものもあるはずで、利き酒の時代はそこまで進んでいる。
私は作らなかったが、「全蔵制覇記録帳」というスタンプカードもある。コインを購入するごとに確認印が押され、何を飲んだかは自分でチェックを入れるというものだ。何事も収集、コンプリートしたくなる人の気持ちをくすぐるもので、見事全蔵制覇すると「ぽんしゅ館」内に名前が残される。すでに何十名かの名札が掲げられていた。
心持ちよくなったところで、「雪ん洞」へ。南魚沼産のコシヒカリでつくった爆弾おにぎりの店である。私はかつてここの「大爆おにぎり」をいただいたことがある。爆弾おにぎり1個がコシヒカリ1合、そして大爆おにぎりだとコシヒカリ4合である。大爆おにぎりの完食者は記念撮影をしてもらい、店内に飾られる。結構な数の方が「殿堂入り」しているのだが、その中にあって私の写真もまだ残されている。
もっとも、大爆おにぎりを2回完食したのも30歳代の頃のことである。40歳代になり、数年前に3回目として挑戦した時は途中でギブアップして、申し訳ないが残ったものも後で食べることもなく廃棄してしまった。知らず知らずのうちに年齢は重ねているものである。
「雪ん洞」を訪ねるのはその時以来で、もう大爆おにぎりに挑戦する気はない。それでも1個・・・いや2個ならいけるかなと、鮭、南蛮味噌それぞれ1個ずつ注文する。
それぞれ1個ずつ包装され、味噌汁が1個ずつつく。これをテーブルに置いて1個ずついただく。食べ方が悪いのか途中で形が崩れて、最後の方は箸を使って食べることになるのだが、体調がよかったのか美味しくいただく。爆弾おにぎりが4個という注文の仕方ならひょっとしたらいけたかも・・?
ちなみに、爆弾おにぎりではなく普通サイズのおにぎりも別の店でいただくことができる。
温泉、酒、コシヒカリ・・これで越後湯沢訪問を満腹満喫して長岡に向かうことにする。乗るのは13時13分発の長岡行きで、当初の時刻表プランより1本ないし2本早い列車である。その分長岡に早く着くわけだが、果たしてその後どうしようか・・・。