まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第9回中国観音霊場めぐり~福山駅かいわい(自由軒、草戸千軒)

2020年01月26日 | 中国観音霊場

明王院のお参り、鞆の浦訪問を終えて福山駅前に戻る。時刻は14時前。

遅めの昼食として向かったのは初めての店である。駅前から天満屋百貨店の前を過ぎたところの小道を入ったところにある「自由軒」。のれんや提灯に「おでん」「洋食」と書かれている。見たところは大衆食堂だが、大衆酒場の匂いもする。そこに「洋食」とは似合わないようにも思うが、ここは福山の名店だそうで、今回訪ねてみたのは吉田類さんの酒場放浪記の記事からである。昼から営業とあったので鞆の浦から戻ったら行ってみようと思っていた。これなら、飲み食いが終わってから鈍行でも帰れる(夕方からの店なら帰りは新幹線に)。

行くと店の外では2人並んでいる。ガラス戸から中をうかがうと、コの字形のカウンターにぐるり20人くらいが詰めあって座っている。壁にはメニューがびっしり並び、定食や一品ものがさまざま。ただし日本酒については冷やか燗の二択で、広島県だからといって地酒が何種類もあるわけではないようだ。この辺りは大衆食堂の色合いが濃いのだろう。

少し待つと席を立つ客がいて、前の2人も順に入っていく。私が先頭になるが、後ろに1人、また1人と並ぶ。この時間で行列というのもすごい。

順番になって中に入る。壁にカープのカレンダーやポスターも多数あり、店内では広島(備後)弁が飛び交う。この日(4日)が今年の店開きのようでそんな挨拶も出る。

まずはのれんや看板にもあるおでんをいただく。味噌だれがかかっているが、福山での一般的な食べ方ではなくこの店独特のようだ。八丁味噌かな。ちょっと甘い味だがこれはいける。

洋食もいろいろあって迷うが、店の名前がついた「自由軒かつ」を注文。タルタルソースがついていたので、かつの中身は?といただくと、エビとイカをそれぞれ串カツにしたもの。タルタルソースだけでも一品のアテになるものだ。

福山の味覚ということでくわいもいただく。くわいといえば「芽が出る」ということで縁起物として正月のお節料理に出てくるが、福山が国内生産量の大きなシェアを占めている。私は子どもの頃はお節料理にあっても食べなかったが、大人になるとホクホク感がいいなと思うようになった一品である。普段の大阪の居酒屋ではまず出てこないメニューで、福山らしさを味わう。

熱燗もいただいたのでご飯ものは取らなかったが、「自由軒」ではオムライスやヤキメシも名物だという。他にも大衆酒場メニュー、食事メニューも豊富である。福山まで気軽に来る機会はそうないが、どこかの帰りにまた一杯で来てもいい店だと感じた。

駅コンコースを抜けて福山城に向かう。福山城は初代藩主の水野勝成の手で1622年に完成したが、現在「築城400年」に向けて様々な記念事業が行われているという。

本丸に向かうに連れて歓声やマイクの音が大きくなる。天守閣前は結構な人だかりだ。何やら「日本一早い豆まき」という「福まき」が行われているようだ。このイベントは4年前から行われているそうだが、私が着いた時には豆まきも終盤。残念ながら豆を取ることはできなかった。

混雑しているので天守閣には上らず、そのまま広島県立歴史博物館に向かう。通称は「ふくやま草戸千軒ミュージアム」とあり、明王院の記事でも触れたが草戸千軒跡からの出土品が保存展示されている。また草戸千軒だけではなく、昔から瀬戸内海を舞台に栄えた交通や交易の歴史も紹介されている。先ほど訪ねた明王院の国宝の本堂、五重塔の模型や絵画もある。

数々の展示の中で目を引くのが、発掘調査をもとに実物大で再現された草戸千軒の町並みの一角である。時代は今から650年ほど前の南北朝の頃、初夏の夕暮れ時という設定である。店が並び、中ではさまざまなものが商われている。細部の小物までリアルに表現されていて、見ていて面白い。このまま時代劇のセットでも使えそうだ(時代劇ではないが、過去には実際に映画のロケでも使われたことがあるそうだ)。

そろそろ夕方になり、大阪に戻ることにする。往路で「飛び道具」を使ったので、帰りはおとなしく鈍行で戻る。ちょうどやって来たのは16時06分発の姫路行き。福山から座ることができたので、このまま岡山~姫路の混雑区間も行ける。まずは姫路までどっぷりと2時間半、各駅に停まりながら進む。その後は「駅そば」を夕食でいただいての新快速・・・。

結構スローペースで進んでいる中国観音霊場めぐりだが、これで備後まで終わり、次は広島・宮島シリーズである。この先、夏までの期間で中国地方の西の端である下関まで行く見通しを立てた。まあ、その予定通り順調に行けるかはわからないし、またこれまでのように直前になってルート変更してしまうかもしれないが、単なる観光地めぐりではなく一つの「軸」を持って中国地方を回るということを、これからも楽しみたいものである・・・。

コメント