まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

たら汁とヒスイ海岸

2020年01月02日 | 旅行記D・東海北陸

話は年末の29日に戻る。

あいの風とやま鉄道の泊行きに乗る。富山を12時47分に出て、終点の泊まで50分の道のりである。進行右手には立山連峰の姿が先ほどよりも近くにはっきりと見える。車窓にカメラやスマホを向ける姿も見られる。

泊では次の13時52分発の直江津行きに接続だが、駅舎とは反対側のホームの前と後での乗り換えとなる。泊が終点ではあるが、これは第三セクターどうしの都合でのことでしかない。確かに富山県朝日町の玄関駅ではあるが、富山県と新潟県の県境に近いところで設備がそれなりにあることから乗り換え駅になっているだけだ。第三セクターらしい仕切り。

つまりは、直通で利用する人のほうが多いために階段を上り下りすることなく乗り換えということだ。直江津行きは1両の気動車だが、まだ4~5年の新車である。立ち客も出る中、前側のドア付近に立つ。

泊を出るとさっそく左手に日本海が見える。波が実に穏やかだ。話はこの先になるが、一口に「冬の日本海」といっても少しエリアや日が変わることによってさまざまな表情を見せるものだなとまざまざと感じさせられることになる。

次の越中宮崎で下車する。富山県側最後の駅である。ちなみに、あいの風とやま鉄道ではICカードの利用が可能である。富山では乗り換えが慌ただしかったのでICカードで改札を入ったのだが、これを見越してのことである。もっともカード読み取り機は駅舎にあるので、ワンマン運転手にその旨を告げて外に出る。

越中宮崎に降り立つのは初めてである。無人駅だがコインロッカーが備え付けられていて、しかも100円の返却式である。また今は閉まっているが臨時の案内所もある。越中宮崎駅のすぐ目の前には海岸がある。シーズンには海水浴やキャンプで訪ねる客も多いのだろう。ここでロッカーを利用する。

海岸に向かってもいいのだが、先に遅めの昼食とする。この朝日町から糸魚川市にかけての一帯は、たら汁が名物である。横を走る国道8号線沿いには何軒かのたら汁料理店(兼民宿)がある。今回はその中で、駅のホームからも見える「ドライブインきんかい」に向かう。たら汁のみならずラーメンや丼ものといったガッツリ系メニューもあり、民宿やコインランドリーも兼ねている。幅広いドライバー向けの店という感じだが、駅から近ければ私のような客も来ることができる。

メインの食堂が満室のようで、先に待っていた家族連れ2組とともに別室に通される。たら汁は単品の他に定食があり、さらに刺身盛りを追加したセットもある。ならばとたら汁と刺身のセットを注文し、エイヤッとばかりに1本つける。

やってきたのは別にアルミ鍋に入ったたら汁と、刺身盛り合わせ、小鉢が3品とごはん、なます。刺身もなかなかだし、小鉢のいかの煮付けも食べられるとはお得だ。で、たら汁だがぶつ切りが3~4切れ入っていて、少しずつ身をほぐしながらいただく。たら汁はいわゆる宴会のたらちりとは違う、あくまでも家庭料理のメニューに入る。そのため作り方もシンプルで小骨なども入るが、切り身と格闘するぶん時間をかけて楽しめる。この時点で、越中宮崎からの列車を1本遅らせることにした。

味噌もあっさり仕立てで、たらの味を損なわないようにしているように感じた。たら以外には白ねぎとゴボウが入り、薬味のような位置付けだ。まあ、店によって作り方も違うようだし、たら汁を語ろうと思えばいろんな食べ比べをする必要があるが、満足して店を後にする。

さて、次の列島までの時間は酔いさましも兼ねて海岸に出る。有名なヒスイ海岸だ。正しくは境海岸と呼ぶそうだが、地元でもヒスイ海岸としてPRしている。この日は年末年始休みだったが、駅前には「ヒスイテラス」という海岸のPRや交流センターの位置付けの新しい建物もある。

ヒスイは古くから宝石の一種として貴ばれているが、日本では長い間中国からもたらされたものだと考えられていた。それが昭和になってから糸魚川でヒスイの鉱石が見つかり、古くからこの辺りで採れたヒスイが当時の交易ルートに乗って都をはじめ各地にもたらされたのではないかということになった。

ヒスイの鉱石が長い年月をかけて姫川や青海川の流れによって海に運ばれ、そこから波によってこの辺りの海岸に打ち上げられたという。そして今では宝探しのようにヒスイ探しが行われるようになった。

こう書くと海岸のいたるところにヒスイがゴロゴロ出てくるイメージを持つ人がいるかもしれないが、観光案内その他によると、ヒスイ探しは簡単なものではなく、地元の人でも苦労してようやく見つかるかどうかというものらしい。見た感じがヒスイに似た石も結構あるそうで、見分け方も紹介されているが、パッと見てわかるかと言われれば・・。

別に一攫千金を狙うものではないのでヒスイ探しはしない。海岸を歩くが、砂浜ではなくこうした丸い形の小石がゴロゴロしている景色に驚く。別にヒスイでなくても、色や形が気に入った石を持って帰ればいいのだが、この先の道中に石を持ち歩くのも何だかなと思う。

見ていると等間隔で釣糸を遠くに飛ばしている人が目立つ中、打ち寄せる波に腰まで浸かりながら波打ち際の地面の石を拾う人がいる。ヒスイは波打ち際にある可能性が高いそうだが、それを実践している人だ。やはり何かを得たいならばそれに見合った取り組みをしないといけないようだ。しばらくすると自分のクルマに戻ったようだが、果たして成果はあったのかどうか。

そうかと思えば、おそらく先ほど私が見送った列車で越中宮崎に来たであろう、おじいさんと孫らしい出で立ちも見える。男の子は両手に何個かの石を持っている。おそらくヒスイとは違うだろうが、おじいちゃんと越中宮崎のきれいな海岸に来て、きれいな石を拾えた思い出・・私より純で、旅の記念とはそもそもそういうことなのだろう。

乗るのは16時38分発の直江津行き。座席は埋まっているのでまたドア横に立つ。次の市振から新潟県に入ってえちごトキめき鉄道の区間になるとともに、景色が険しくなった。親不知の険である。

1本前の列車なら親不知での途中下車もありだったが、すでに暗くなりつつなる中では躊躇する。その中で1人下車があった。列車にカメラを向けていて地元の人ではなさそうだが、よく考えれば時刻はまだ17時前、列車は上り下りともいくらでも来る。

その17時になったばかりの糸魚川に到着。29日の乗り鉄はここで終了。糸魚川には過去にも泊まったことがあるが、北陸新幹線が開通してからは初めてである・・・。

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