12月31日の大晦日、この日も乗り鉄である。今回の年末年始旅行は観光の要素はほとんどなく、乗ること、飲むことのウエイトが高い。
まあ、年末年始は博物館や美術館などの見学施設が軒並み休館だから・・などと言い訳する。そんな中でも寺社仏閣は行くことができるし、新潟にはかつての豪農の館を開放した北方文化博物館といった年中無休の施設もある。一時は長岡から新潟までそうしたところを廻りながら1日がかりで行こうかとも検討したこともある。
ただ今回は鉄道メインの旅を選んだ。カギになるのは2019年秋にデビューした観光列車「海里(かいり)」である。「きらきらうえつ」の485系車両の置き換えでハイブリッド気動車で運転される。今回の旅で乗るとすれば大晦日か元日か、そして新潟から酒田行きか、酒田から新潟行きかという組み合わせの中からである。
結果をいえば、思い立ったのがに指定席前売り開始から数日後だったためにすでに満席の便が大久野島、大晦日の酒田発新潟行きの指定席、それも山側の席を押さえるのが精一杯だった。それでも、ちょうど1年前に暗闇の中をたどった「きらきらうえつ」が新しい列車になったことで、乗り比べは楽しめる。車内では庄内や新潟の食を楽しめるスペースもあるそうだ。ということで、長岡から遠路酒田を目指すことになる。そして夕方に新潟に戻って宿泊だが、大晦日から元日にかけての年越しということで、二年参りに行くことも検討中である。長い1日になりそうだ。
まずはその前に朝食、ホテル内の大浴場での朝風呂の後に向かう。6時半から開いているのはありがたい。バイキング形式のメニューの中に、新潟の味ということで栃尾揚げ、へぎそば、たれかつ、のっぺ、鮭漬け焼きなど代表的なメニューも多数並ぶ。ついあれこれ取ったが、新潟に来たことを満喫できるだけの中身で満足だった。
長岡からまずは新潟に向かう。乗るのは7時22分発の快速「おはよう信越」である。全車指定席で別途料金がかかるが、E653系という特急車両に乗れる。指定席は前日に購入していた。平日は通勤客の利用も多いのだろうが、大晦日の朝だからか4両編成の各車両には数人ずつしか乗っていなかった。
この時間帯に快速が走るのは、時刻や列車形態は異なるがかつての大阪発新潟行きの急行「きたぐに」の名残かとも思う。ボックス席の自由席からグリーン車、三段式B寝台、A寝台までバリエーションに富んでいた列車で、私も懐かしく思う。
長岡を出た時点では雨や雪はないが、風はそれなりに強く、雲が流れるのも速く感じる。天気予報では北日本の日本海側は荒れるとのことだが、大丈夫だろうか。
羽越線、磐越西線が分かれる新津を過ぎると沿線の住宅も増えて、8時35分、新潟に到着。新潟駅は現在高架工事中で、2021年度中の完成を目指している。着いたのは仮設の8・9番ホームで、信越線、白新線の普通列車が発着する。
次に乗るのは8時54分発の村上行き。これで村上まで行くと酒田行きの普通列車に接続する。酒田まで行くと帰りの「海里」の発車まで3時間半近く空くのだが、次の鈍行だと酒田発に間に合わないし、まあその時間はどうにかして酒田でつぶすつもりである。
その村上行きは同じホームの向かい側に停車していた、E129系の4両編成。この形式は2両タイプと4両タイプがあるようだ。4両だからだろうか、各車両ともゆったりと座ることができる。
白新線はまずは新潟貨物ターミナルの横を抜け、近郊区間を走る。幅の広い阿賀野川も渡る。
西新発田という駅に着く。元々は田んぼの中にあった駅のようだが、進行右手はその景色の一方、左手はイオンモールをはじめとした大型店が並び、下車する人も多かった。この時間なので買い物客か従業員なのかはわからなかったが、駅とイオンモールが近いというのはローカル線にあって貴重なアピールポイントではないかと思う。
新発田から羽越線に入る。隣のボックスには、新潟からはロングシートにいたが席が空いたので移ってきた年輩の男性二人が陣取る。ペットボトルや水筒で「偽装」しているようだが、中身は日本酒か焼酎のいずれかである(「見た目、全然わからんやろ」と話していた)。鉄道のうんちくについて話し合っていて、この後、坂町から米坂線で米沢方面に抜けるようだ。ただ米坂線の列車まで時間がかなりあるが、いったん村上まで行って少しぶらついた後、午後の米坂線に乗る様子だ。
風力発電所の風車、防風目的の鉄道林が並ぶ。雪はそれほどではないのかもしれないが風は常に強い一帯なのだろう。
風が強いといえば、車内でふと見た運行情報で、「いなほ1号は強風のため、酒田~秋田間運休」というのを見た。「いなほ1号」は先ほど新潟に着く手前ですれ違った列車だが、やはり天候の影響が出て来たか。なお他の情報を見ると、新潟から佐渡の両津に渡るフェリー、高速艇も便によってはすでに運休が決まったものもある。この先どうなるだろうか。
村上が近づくと雨模様になった。到着前に信号の関係で徐行する。まあ、これは遅れではなくダイヤの範囲なのだろう。酒田行きは同じホームの前側から発車とのことで、より慎重になっている様子だ。乗り換え客は列車の前寄りからというので運転席の後ろに移動して前の様子を見る。雨の向こうに酒田行きの気動車が停まっているのが見えて、少しずつ姿が大きくなる。そしてその姿がはっきりしたところで、思わず心の中でうなる。
まさかこういう展開になるとは・・・という大晦日の乗り鉄については次の記事にて・・・。