6月19日、宇佐駅前でレンタカーを借りて、まず向かうのは宇佐神宮。今年の正月、広島~別府~八幡浜~松山~広島と回った際にも、別府でレンタカーを借り、半日で宇佐神宮と国東半島の一部の寺を訪ねている。その時は九州西国霊場を回ることは考えていなかったが・・。
10分足らずで宇佐神宮に着き、大駐車場に停める。時刻はまだ10時前ということで、門前の土産物、食事の店もまだ少ししか開いていない。ともかく、参道を歩く。
かつて豊後高田から宇佐神宮を結んでいた大分交通宇佐参宮線で使われていた蒸気機関車や、天台座主による法華八講の記念碑と並ぶ。神宮で天台座主の法要が行われるとは、まさに神仏習合からの歴史が受け継がれている。
「神様と仏様 日本で最初に出会ったのはこの場所でした」と、拝殿を前に神官と僧侶が互いに礼をしているシーンの看板もある。宇佐神宮は全国の八幡神の総本宮だが、神仏習合が広まる元にもなったところである。
一角に、種田山頭火の歌碑がある。「松から朝日が赤い大鳥居」、「春霜にあとつけて詣でる」と刻まれている。山頭火は明治、大正、昭和の俳人だが、後に得度し、禅僧として雲水姿で各地をめぐった。その中で宇佐神宮にも参詣するとともに、九州西国霊場もめぐっている。山頭火の日記や書簡の記述で4年ほどかけて回ったことが伝わっている。山頭火もめぐったことが、九州西国霊場としては一つの「売り」にしている。
茅の輪くぐりをした後、拝殿に向かう。森の緑と鳥居・柱の朱色がよく映える。
宇佐神宮は現在も皇室とのつながりがあり、祭事に合わせて天皇陛下からの神饌料が「御下賜」される。最も新しいので令和3年3月18日の例祭とあるから、つい3ヶ月ほど前のことである。ただ、こうした皇室とのつながりがあるにしても、権威をひけらかしたり、他を寄せ付けない何かを感じさせるものはない。
二礼四拍手一拝の作法で、一之御殿から順にお参りする。ここまで、正月に来た時と比べれば参詣客もまばらだった。
戻り道では下宮に向かう。先ほどの上宮、そしてこちらの下宮と合わせてお参りするのが作法で、片方だけだと「片参り」になってしまう。
弥勒寺跡に出る。宇佐神宮がこの地に移されたのにともない開かれた寺で、かつては金堂、講堂の他に東西両塔を配した薬師寺式の伽藍があった。
最後に、宇佐神宮の「神仏習合朱印」をいただく。私は別に朱印コレクターというわけではなく、札所として訪ねた寺院について、その霊場めぐりのものだけいただくようにしているのだが、宇佐神宮は特別として今回いただくことにした。古来から神と仏が融合した独特の信仰文化を有する国東半島に残る六郷満山の玄関口である。訪ねるのは次回だが、九州西国霊場としても第5番・天念寺、第6番・両子寺の二つの札所がある。
さて、これで宇佐神宮を参拝し、クルマはそのまま停めて国道10号線を渡る。すぐ近くに、九州西国霊場の第4番・大楽寺がある。
大楽寺が開かれたのは元弘3年(1333年)、ちょうど鎌倉幕府が滅亡した年である。宇佐神宮の大宮司の菩提寺として、奈良西大寺の道密上人を招き、後醍醐天皇の勅願で開かれたという。後醍醐天皇とは、また意外な方が関わっているものである。ちょうど倒幕にも成功して「建武の新政」を敷くところである。国家の安寧を皇室と縁のある宇佐神宮に祈願したといったところだろう。西大寺の僧が招かれたということで当初は真言律宗だったが、現在は高野山真言宗である。
境内には石造の仏が目立つ。その中央にあるのは持仏堂で、お参りはこちらで行うようだ。
持仏堂は住居とつながった現代の建物である。扉が開いていて、内陣にも上がることができる。まずはこちらでお勤めとする。
さて朱印をということだが、玄関のインターフォンで寺の人を呼び出す仕組みだ。そうしようかと思うと、ちょうど外から「こんにちは~」と入ってくる人がいる。それに呼応して奥から寺の方が出てきた。中に上がっていた私を見てちょっと驚く様子。ちょうどこの後法要か何かが入っていたようだ。
別に怪しいことをしているわけでなく、九州西国のバインダーを見せて朱印をいただく。九州西国の本尊は如意輪観音である。
寺としての本尊は弥勒菩薩で、平安時代の作とされる。また如意輪観音、四天王像といった像も平安時代の作という。大楽寺は元々別の場所にあったのだが、後醍醐天皇の勅願によりこの地に新たに移ってきた寺ということのようだ。
それらの仏は収蔵庫を兼ねた本堂に祀られていて、有料で拝観もできるようだが、先ほど見たところいちいち鍵を開けてもらわなければならないようだったし、寺の方の様子を見て拝観を申し出るのはためらわれた。まあ、「見仏」に強くこだわっているわけではない。
これで九州西国の2ヶ所目を回り終え、順序は逆になるが中津に向けて出発する。・・とその前に、レンタカーの機動性を活かして宇佐でもう少し見学することにしよう。この先の参考になりそうなところもあるし・・・。