6月26日、早朝に夜行バスで大阪に到着し、難波発8時ちょうどの「こうや1号」に乗車する。これまで知らなかったのだが、南海の特急券は会員登録がなくてもチケットレスサービスを利用することができ、事前に座席の指定もできるとある。ということで「こうや1号」の最前列を予約する。南海の特急には大阪時代に何回か乗ったことがあるが、いずれもその時になって乗ってみようということで駅の券売機で買うことがほとんどだった。
まずは和歌山市方面の南海線と、高野山方面の高野線が複々線となる区間を行き、岸里玉出で分かれる。そのまま大和川を渡り堺市に入り、河内平野を快走する。
河内長野を過ぎると前方に山地が横たわる。和泉山脈~金剛山地と続くところで、ダイヤモンドトレールとも呼ばれる。県境は紀見峠だが、特急は紀見トンネルで一気に抜けていく。久しぶりの和歌山県入りである。
橋本から単線となり、登山鉄道の様子となる。紀ノ川を渡り、縁起がいい駅名の学文路、真田幸村が一時蟄居していた九度山を過ぎると、少しずつ勾配が急になり、カーブも急になる。
高野下を過ぎると周囲も秘境ムードになってきた。進行方向右側は深い渓谷や集落の景色が続き、左側は山の斜面の景色が続く。展望を楽しむなら進行方向右側をリクエストすべきで、そういえば、観光列車「天空」の座席もコンパートメント席を除いて全部右を向いていたなと思う。
下古沢からは集落もほとんど見えなくなり、山深くなる。カーブも小刻みになり、トンネルも次々と現れる。前面展望に飽きることがない。
9時23分、終点の極楽橋に到着。思ったより多くの人が「こうや1号」に乗っていたようで、ホームをぞろぞろと歩く。
9時28分発のケーブルカーに乗る。これを逃すと次は30分ほど後というのをしきりにアナウンスするので、乗客のほぼ全員が乗り継ぐ。確かに時刻表を見ると運行間隔もまちまちで、時間帯によっては30~40分ほど待つこともある。
山上の高野山駅に到着。コインロッカーに大きな荷物を預け、高野山1日フリー乗車券を購入する。高野山内の路線バスが1日乗り放題なのと、拝観料や土産物の割引が受けられるクーポンがついて840円。
まずはバス専用道を走り、女人堂から高野山の寺院群に差し掛かる。近畿三十六不動めぐりの結願寺である南院(波切不動明王)の前も過ぎる。前回高野山を訪ねたのは、この近畿三十六不動めぐりの結願で、第35番の明王院と、第36番の南院がお目当て。ちょうど元号が平成から令和に代替わりする直前のことだった。
今回の西国四十九薬師めぐりで訪ねるのは、第10番の龍泉院、そして第11番の高室院である。まずは道順に沿って龍泉院を訪ねる。先ほど通過した波切不動前の次のバス停である高野警察署前からすぐのところにある。石柱には「別格本山」の文字が見える。
龍泉院は平安時代中期、真慶律師により開かれた。隣接して、弘法大師が龍王を勧請し、雨乞い祈願を行って雨を降らせたという伝説がある池が残っていることから、寺の名前がついた。本尊の薬師如来も平安時代末期の作とされる。また時代が下ると武家からの帰依も厚く、毛利元就が寄贈した仏像もあるという。
現在は宿坊も兼ねているそうだが(檀信徒のみ宿泊可)、西国薬師の札所でなければちょっと入るのがためらわれるほど静かな雰囲気である。
ちょうど玄関に若い僧がいたが、「お参りですか?」と言いつつもちょっと構えているように感じられる(構えるというよりは、緊張した様子)。流れで、先に西国薬師のバインダー式の朱印をいただくと、「中を見られますか?」ということで本堂に案内される。
本堂にてお勤めとする。ただ、後ろでプロの僧に見守られるというのも、かえって緊張するものである。長居するのも申し訳ないかなと、そそくさと境内を後にする。
まずはこれで1ヶ所を回り、次は高室院だが、龍泉院から金剛峯寺、壇上伽藍は近いので道順としてそちらに向かう・・。