西国四十九薬師めぐりの龍泉院を参詣し、そこから近い金剛峯寺に向かう。ちょっと雨がぱらついてきた。
やはり高野山に来たら金剛峯寺~壇上伽藍は素通りというわけにはいかない。まずは外から持仏間に向けて手を合わせ、お勤めとする。
この後本殿に上がり、広間の襖絵や秀次自刃の間などを見た後、蟠龍庭へ。
雲海の中で一対の龍が向かい合って奥殿を護る様子を表現しており、石は四国の花崗岩、白砂は京都のものが使われている。
新別殿に向かう。畳敷きの大広間で、普段なら毛氈の上で足を伸ばして休憩することができ、お茶の接待もあるところ。しかしこの日は、ずらりと机が並べられ、そうしたお接待をやっている様子はなかった。コロナの影響で休んでいるのかな。
そして茶の間、囲炉裏の間に回る。こちらには、高野山開創1200年記念として、日本画家の千住博さんの手による襖絵が新たに奉納されている。茶の間には「断崖図」、そして囲炉裏の間には「瀧図」が納められている(一部は展覧会のため貸出中)。この2つの間は長く白襖だったのだが、そこに作品を入れることになった。2018年に完成し、高野山に納められる前に各地で巡回展も行われてかなり話題になったそうだが、恥ずかしながら全く知らなかった。
本殿を後にして、壇上伽藍に向かう。金堂、大塔というメインの建物では中に入ってのお参りである。先ほどの本殿も含め、拝観料は高野山1日フリーきっぷの特典で割引となる。やはりこちらのほうが寺に来たと実感するところである。
さて高室院へ・・と行くところだが、その前に霊宝館に向かう。この霊宝館が開かれたのは1921年とのことで、今年で100周年を迎える。現在、これを記念して大宝蔵展「高野山の名宝」が開かれている。
まず本館で出迎えるのは、平安時代作の仏像たち。その中に薬師如来があるのだが、リストをよく見ると所有者が高室院となっている。行基作と伝えられている。かといってここでお勤めをするわけにもいかないので、手だけ合わせておく。他にも、不動明王や毘沙門天など、目を引く仏像が並ぶ。当時の人たちの技量の高さを感じる。
次のコーナーでは五大力菩薩の巨大な絵が圧倒する。一般にやさしく慈愛ある顔をしている菩薩だが、この五大力菩薩は国を外敵から護る役割から、いずれも忿怒のすさまじい形相である。
いったん外に出て、新館に向かう。玄関で出迎えるのは結縁大師。これだけは現代の複製ということで撮影可のようだった。
こちらの新館でも阿弥陀如来や不動明王、そして快慶作の孔雀明王、四天王などの力強い作品が並ぶ。そして次の間では運慶作の八大童子が並ぶ。最後の部屋では、弘法大師直筆とされる「聾瞽指帰(ろうこしいき)」の巻物や、弘法大師が投げ飛ばしたとされる三鈷杵などが展示されている。まさに各時代の仏像のオールスター、名宝揃いである。
さて、ようやく高室院に向かう。高室院があるのは、ちょうど土産物店や金融機関、高野山大学などが周囲に並ぶ千手院橋交差点の近くである。金剛峯寺からもほど近い。
奥の院へ続くメインストリート沿いにあるのでわかりやすい。これまで何度か前を通っているが、門をくぐるのは初めてである。「高室院 大乗院 発光院」と連名の石柱が建つ。
高室院が開かれたのは鎌倉時代で、後には小田原北条氏とのつながりを持っていた。豊臣秀吉の小田原攻めで北条氏は降伏したが、その時の当主・北条氏直は一命を許されて高野山に蟄居となった。その時に身を寄せたのが高室院だった。後にわずかながら領地を与えられ、大名として復帰するが、間もなく病死した。
境内はごちゃごちゃした感じだが、右手にあるのが本堂のようだ。扉が閉まるどころか、本堂の前に柵が設けられている。先ほどの龍泉院のように拝観する仕組みなのかわからないが、とりあえず受付の納経所を訪ねる。
靴を脱いで上がろうとすると中から「待て」と制止される。「朱印?ちょっと待って」とそこにとどめ置かれ、その後でバインダー式の朱印が出てくる。ただ、その対応も「やるもんはやるわ、文句あるか?」という風に感じられた。何やねんその対応は。昔の私だったら・・いや、何でもない。
ともかくこれで今回の西国四十九薬師めぐりの目的地は回り終えた。ここで次の行き先を決めるくじ引き&サイコロである。ああいう対応をされた高室院の境内では気分が悪いので、門の外に出てバスを待つ間に儀式とする。
1.大阪(四天王寺プラス西国22番総持寺)
2.橿原名張(久米寺、弥勒寺)
3.京都(醍醐寺、法界寺プラス西国10番三室戸寺、11番醍醐寺)
4.南紀(神宮寺プラス西国1番青岸渡寺)
5.阪神(久安寺、昆陽寺)
6.振り直し
選択肢がだいぶ限られてきた。そしてここで出たのが・・「4」。
神宮寺は三重県の多気町にあるが、アクセスとしては最難関の部類に入るだろう。それに西国1番の那智の青岸渡寺をくっつけるのだから、実際は紀伊半島一周コースである。わざわざ広島から行くのだから当然日帰りは無理。宿泊するとして、どうやって回ろうか・・・。
高野山に来たのだから、これから奥の院に向かう。弘法大師への挨拶ということで・・・。