12月の中旬、鉄道関係のニュースサイトを見ていると、JR西日本の津山線を走っているキハ47の「ノスタルジー号」を使った臨時列車が山陽線で運行されるとの記事が目に入った。「せとうちノスタルジー」と銘打ったこの臨時列車だが、「みどりの券売機」や「e5489」で指定席を発売するイベント列車ではなく、JR四国ツアー主催の団体列車として運転される。
そのルートだが、1月15日、岡山を出発して山陽線を西に進み、尾道まで行く。尾道で2時間近く滞在した後、同じ列車で東に戻り、岡山を通り過ぎて万富まで行く。万富からはバスで国道2号線のおさふねサービスエリアまで往復して、万富から岡山に戻る。
この「ノスタルジー号」はこれまで津山線での普通列車での運行で乗ったことがあるが、電化区間を走るというのも珍しい。これは行ってみたい。
ツアーは4人掛けボックスシート利用、ロングシート利用のコースがあり、事前にネットでの予約受付とあったが、私がのぞいた時は早速満席だった。それでキャンセル待ちに登録したが、それほど日が経たない内にボックスシートのキャンセルが出たとの通知があった。早速申し込む。
車両、運転区間ともJR西日本なのに、JR四国ツアーが主催というのはどういうことかと思うが、2021年10月から行われていた四国ディスティネーションキャンペーンが終了し、2022年7月から岡山ディスティネーションキャンペーンが行われる予定なのを受けて、両社の連携となったそうだ。
「せとうちノスタルジー」は岡山8時50分頃発車とのことで、事前に送られてきた行程表では8時20分までに岡山駅のコンコースに集合とあった。広島からその時間に間に合うように行こうとすると鈍行では無理。「新幹線直前割きっぷ」の出番となる。
1月15日、広島6時14分発の「ひかり500号」に乗り込む。このきっぷが有効である1本後の「こだま838号」でも8時10分着なので集合に間に合うが、余裕を持って到着するために早出とする。なお、岡山に戻るのが17時15分頃ということで、その時間なら岡山の例の大衆酒場「鳥好」で一献としてもいいが、さすがに前週に訪ねたばかりということで、まっすぐ広島に戻ることにする。
岡山着。さすがに集合1時間前の到着は早すぎたようで、しばらく駅周辺をぶらつく。
8時前にコンコースに戻ると、JR四国ツアーのワゴンが出ていて、受付の最中だった。一人参加も結構見える。中にはこの手のツアーでよく一緒になるのか、客同士で挨拶を交わす光景も見られる。座席番号と名前が書かれた名札ストラップと、乗車券や乗車記念品が入った袋を渡される。また、乗車券は団体用のクーポンで、それぞれ岡山~尾道、尾道~万富、万富~岡山となっている。岡山、尾道、万富ではこれで出入りするが、それ以外の駅で改札の外に出られないとのこと。
「せとうちノスタルジー」は一般の列車の合間を縫って到着するため、岡山発車時は3~4分しか停まらないとのこと。それまで、参加者は1~2番線のあちこちで他の列車の写真も撮りながら入線を待つ。見送りの駅員、スタッフたちも集まってきた。
案内があり、東岡山側からキハ47の2両編成が入線。長い1番線のどのあたりに停車するか案内がなかったが、ギャラリーがいる横を抜けていき、結局ホームの先端に停まった。参加者、ギャラリー、スタッフの皆さんもぞろぞろと移動する。まずは慌ただしい撮影タイムとなるが、すぐに発車の案内がある。
バタバタした感じで岡山を出発し、それぞれ指定されたシートに向かう。事前の案内では、ボックスシートコースで1人参加の場合は相席になるとのことだったが、いざ乗り込んでみると向かいの客はいない。他にもそうしたボックスがちらほらあり、それだけキャンセルが出たか、たまたまそうした席割になったか。座席はツアー通して同じなので、このままボックスの独り占めである。
記念品の袋を開けてみる。「せとうちノスタルジー」とあしらったプレート、3区間の硬券乗車券などが入っていた。いずれもこのツアーのために制作されたものである。硬券というのも「ノスタルジー」のテーマにぴったりだ。
昔ながらのオルゴールのチャイムが鳴り、JR四国ツアーの添乗員が車掌役として車内放送を担当する。「本日は『急行』せとうちノスタルジー、尾道行きにご乗車いただきましてありがとうございます」という言葉に車内からも反応がある。この先の停車は倉敷と笠岡で、主要駅である「玉島」と福山は通過となる。この「玉島」とは現在の新倉敷だが、山陽新幹線が開業する前はこの駅名だった。
まずは途中の駅を通過し、倉敷に停車する。放送では「お乗り換えのご案内です」と続く。え?ツアーなのだからここで乗り換えはないはずなのになぜと思うと、その後に昔走っていた特急や急行の名前が出てくる。「せとうちノスタルジー」の舞台設定は山陽新幹線開業前の1970年代前半のようだ。
倉敷では約14分の停車。一般の列車を先行させるためだが、岡山では慌ただしく発車したため、ここで撮影時間を設けようということもある。反対側のホームに移り、そちらから車両を見ることもできる。「せとうちノスタルジー」は前と後でそれぞれオリジナルのヘッドマークがつけられている。尾道側は、かつての寝台特急「瀬戸」をイメージしたデザインだ。
特急「やくも5号」が伯備線ホームに到着して先行する。「やくも」の381系の塗装は昔とは違えど、国鉄特急と急行の組み合わせがここに再現される。
9時21分、倉敷を発車。この先は見通しのよい区間が続くこともあり、沿線では多くの人たちがカメラを向け、手を振って見送る。まさに「急行」に乗っている気分である。「玉島」(新倉敷)を通過して、次の停車駅は笠岡・・・。