大晦日の夕方、小倉駅北口に向かう。これから新門司港に移動して、名門大洋フェリーにて大阪南港に向かう。ちょうど船上での年越しとなる。今回の札所めぐりの中の目玉の一つである。
乗るのは19時50分出航の第2便。徒歩での乗船客は小倉駅18時40分発の送迎バスで移動することになる。18時すぎに小倉駅に着き、送迎バスが発車する北口のロータリーに早めに向かう。並走する阪九フェリーの送迎バスも同じ場所から出るが、乗客も結構多そうだ。名門大洋フェリー乗り場にはJTBのツアーの旗を持った添乗員が立ち、参加者の受付を行っている。九州発で、関西の由緒ある寺社での初詣ツアーのようだ。
しばらくすると北九州市交通局のバスがやって来て、名門大洋フェリーの客を誘導する。確かに通常の送迎バスだけでは足りないので応援ということだろう。私のような個人客や、ツアーの客で受付が済んだ人も順次乗り込み、前倒しで発車。これだと30分ほど早く新門司港に着きそうで、その分船内での滞在時間が増える。
門司港で関門海峡を見てからそれほど時間が経っていないがすっかり暗くなり、淡々と走って新門司港に到着。建物の入口で検温を済ませる。今回はネット予約時に発行された予約確認書を持参しており、印字されたQRコードを読み取ればそのまま乗船できる。乗船名簿も書かなくて済むとは合理的だ。
この日割り当てられたのは「フェリーきょうと」。2週間前の12月16日に就航したばかりの新造船である。別に狙っていたわけではないが、大晦日の第2便に新門司港を出航する便ということで選択したらたまたま「フェリーきょうと」だったということだ。
乗り込むのは1人用個室の「ファーストS」。「フェリーきょうと」は最も安い「ツーリスト」でも独自のキャビンを設置し、一人ひとり区切られたベッドスペースが確保されている。いわゆる桟敷タイプ、雑魚寝タイプというのがない。昨今の個室ニーズに応えたものだという。
割り当ての「ファーストS」はベッド、机、いす、テレビ、洗面台、個別エアコン、コンセントが備わる。一夜を過ごすには十分な広さである。まずはここに荷物一式を置き、レストランに向かう。フェリーのレストランといえば乗船客が集中して混雑するイメージがある。ましてや今年(2021年)最後の食事である。早めに済ませて安心しておきたい。
第2便は夕食・朝食ともバイキング形式で、1月15日乗船分までは「フェリーきょうと」の就航記念として夕食1600円、朝食750円のところ、夕食1000円、朝食500円の合計1500円と割引されている。これはお得だ。部屋用のアルコールは別に買い求めてきたが、せっかくなのでと瓶ビールをつける。まあ、割引分は瓶ビールで吸収されるのだが・・。
和洋中さまざまな料理が並ぶ中、9マスに区切られた皿に万遍なく載せてカウンター席に陣取る。まだ出航前だが一人乾杯。いろいろあった2021年を名残惜しむことにする。それにしても、1000円でこれだけのものが並ぶとはすごく、1回目では取り切れなかった料理もある。他にはもつ鍋もあったな。あれはご飯と一緒にシメでいただくとするか。
一献やる中で出航の時刻となり、少しずつ離れていく。陸側で出航に関わった係の人たちが手を振って見送ってくれる。今年最後の出航を見送って感慨深いものがあるのだろうか。
もっとも、他の乗船客も次々にやって来て満席の状況となる。食事を済ませた客は席を立つようにとのアナウンスもあり、私もそれほど長居することもなくレストランを後にする。
続いては入浴。入口の前に混雑状況が表示されていて、訪ねた時は混雑の表示だったが、中をのぞくと空きのロッカーがあったのでそのまま入る。これまでに入った人が多かったためか湯船の湯が心なしか少ないように感じたが、それでもゆったりすることができた。長距離フェリーでの2大イベントと言ってもいい食事と入浴(別に長距離フェリーでなくとも、普段の生活でもイベントか)を済ませてとりあえずホッとする。
展望ラウンジにも行ってみる。売店でカップ氷を買い求め、チューハイと合わせる。さすがにこの時間に甲板に出る気はなく、もう船内でゆったりすることに・・。
部屋に戻る。現在の船舶の位置を示すチャンネルもあり、ちょうど周防灘に差し掛かろうかというところである。時折このチャンネルに合わせるが、瀬戸内を通るのがよくわかる。広島から大阪に帰省するのに、わざわざ九州に渡り、福岡のローカル線や久留米の札所など回って瀬戸内海を渡るという大循環の旅である。自分でも結構カネをかけているなと思う。
さて、大晦日の夜のテレビといえば紅白歌合戦だ、格闘技だ、ダウンタウンだ(これは2021年はやっていなかったか)といろいろあるが、個人的に楽しみなのはBS-TBSで放送の「吉田類の年またぎ酒場放浪記」である。画面に出てくる酒肴を愛でながらチビチビやるのもいいものだ(2020~2021年の年越しは広島の自室で過ごしたが、この番組のおかげで退屈することもなかった)。BSなので公表される視聴率には現れないが、この番組を観ているという方も全国に少なからずいるのではないかと思う。
2021年版は吉田類さんの故郷・高知県での酒場巡りで、高知を出発して仁淀川、土佐久礼、窪川、中村、土佐清水とめぐる。かつて四国八十八ヶ所めぐりで高知県を回ったが、四国もまた何かの形で回ってみたいものである。レストランからは年越しそば販売のアナウンスも流れるが、まあいいか。
そのまま時刻は23時を回り、恒例のカウントダウンでの樽酒鏡開きを待つばかりとなったが・・・。
・・・気が付けば時計は1時を回っていた。うわ~、肝心なところで寝落ちしてしまったようだ。番組も終わっていたようだ。新年早々やらかしたかなと思いつつ、本格的に寝ることにする。
1月1日の日の出予想時刻は7時06分、明石海峡近辺ということは船内でも案内されていた。初日の出を見ることはできるかな・・・?