まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

女たちの禁じられた後始末

2008-12-18 | その他のヨーロッパ映画
 「4ヶ月、3週と2日」
 2007年のカンヌ映画祭で、パルムドールを受賞したルーマニア映画。
 80年代のチャウシェスク独裁政権下のルーマニア。女子大学生のオティリアとガビツァは、何やら忙しく動き回っている。金の工面やホテルの予約の後、ある男に会いに行くオティリア。男の正体は...
 いや~カンヌ映画祭パルムドール受賞作だけあって、噂にたがわぬ秀作でした。感動!とか、何度も観たい!な映画ではありませんが、重苦しく怖い現実をドキュメンタリーのように追うカットの少ない長まわしや、これといってドラマチックなシーンもなく静かで淡々とした展開や、音楽はいっさいなしなところとか、ちょっとダルデンヌ兄弟監督の作品っぽいと思いました。緊張感があって、いったいどーなっちゃうの?とヤキモキさせ、最後の最後まで引き込み退屈させないところも、ダルデンヌ兄弟監督作品と似ています。
 映画が始まってしばらくは、オティリアとガビツァが何をしようとしているかを明確にしないところも、ミステリーみたいで面白いです。中盤になって、やっと二人の目的が判明。ここからも、大丈夫なのかなあ?とハラハラさせられて、目が離せません。
 オティリアとガビツァのキャラが...
 冷静沈着に計画を実行しようとし、トラブル発生にも取り乱さず巧みに対処する、クールで賢いオティリアですが...何でそこまでガビツァに献身的で必死なの?と首を傾げてしまう。ガビツァのために、時間や金だけでなく、自分の肉体まで投げ出すなんて!ただの友情で、あそこまでできるものなのか?!ガビツァに弱みでも握られてるのか?それとも、ガビツァにレズビアンな愛を?!と思ったら、オティリアには彼氏がいるし(ちょっとエドワード・ノートン似のイケメン)。オティリアの自己犠牲な献身が、ほんと不可解です。オティリアが実行する後始末が衝撃的。気丈というか勇敢というか。私なら、絶対ムリ!
 
 ↑恩着せがましく説教タレで色魔な闇医者も、かなりムカつくオッサン
 ガビツァ、最近の映画やドラマの中では最上級にムカつく女です。観客をイライラムカムカさせるためにワザと作り上げたキャラとしか思えません。窮地に立ってるのは自分なのに、何でもかんでもオティリアにやらせて。ホテルの予約はちゃんとしてないわ、闇医者にもウソばっかついてたわ、大事なビニールシートを置き忘れてくるわ。何で電話に出ないの!と怒るオティリアに、うるさいからバスルームに持ってった、とか。言い訳したり愚痴ったりするガビツァの、被害者ぶった弱々しい声も癪に障る。ほんと、いい加減にしろー!!と首を締めたくなる女です。あそこまで依頼心が強くて自分勝手だと、返って幸せな人生を歩めそうです。周りは大迷惑ですが。
 ふたりの関係や行動は、ひょっとしたら当時のルーマニア事情を知らないから理解できないのかな?独裁政権下のルーマニアの様子も、さりげなく再現されていて興味深いです。かなり物資に乏そうなところとか。うるさくID提示とか、いかにも管理社会って感じです。
 それにしても。ホテルの従業員とか、むちゃくちゃ無愛想で思いやりがなくて意地悪。血の気の多いアメリカ観光客とかなら、怒って殴りそうです。チェコ人もそうでしたが、東欧人って他人の気持ちへの配慮とか情味に欠けてる?歴史的に、そうならざるを得なかったのでしょうか?
 とにかく、オティリア&カビツァと同じ立場に立たされたら、どう考えどう行動するだろうか?女性なら目を逸らすことはできない、必見の映画かもしれません。
 
 
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たらいまわ死

2008-06-08 | その他のヨーロッパ映画
 ついさっき知ったのですが...秋葉原の通り魔事件、怖いですね。
 ただ繁華街を歩いてただけで、何で殺されたり怪我を負わされなきゃならないの。こんな理不尽な犯罪、ほんと許せません。最近、若い男による他人を巻き添えにした八つ当たり的ぷっつん陰惨事件が多すぎて、オチオチ外も歩けない世の中になってしまいました。もしかしたら、私も犠牲者になりうる...という覚悟を、バカバカしいと嗤うことはできません。
 
 「ラザレスク氏の最期」
 ルーマニアの映画は、これが初体験。
 独り暮らしの老人ラザレスク氏は、頭痛と腰痛に襲われ救急車を呼ぶ。だが、救急車はなかなか来ず、やっと来たかと思うと、あちこち病院をたらいまわしにされて...
 日本でも問題になっている、病院たらいまわし。このルーマニア版も、ひどい...こんなこと、あっていいの?と、唖然となってしまいます。
 運悪く大事故があったため、運び込まれる病院はどこも患者でゴッタ返していて、医者も看護士もラザレスク氏をまともに診てくれない。しかもラザレスク氏はアル中気味なので、ただの酔っ払い扱い。追っ払われ同然に病院を転々してる間に、ラザレスク氏の容態はどんどん悪化していく。ドラマというよりドキュメンタリータッチで、医療現場の実態や問題をあぶり出しています。
 診察する医者たちが、みんなそろいもそろってヤな連中ばかりなんです。すげーエラそうで高圧的で、完全に患者を見下していて、診てやってる、ありがたく思え、みたいな態度。日本でも昔は、黙って従うしかない患者の弱味につけこんだ傲慢医者、多かったような。
 でもまあ確かに、めちゃくちゃ激務で心身ともに疲労、休む間もなく働きづめなドクターたちが、いちいち患者の気持ちを慮る余裕なんてない、のも解かる。アル中とかヤク中とかいった連中など、ほんと鬱陶しいだろう。人手の足りなさも、深刻な医療問題ですよね。
 それと、救急隊と医者の軋轢みたいなのも、なにげに描かれていて興味深かった。救急隊が医学的な意見を言うと、生意気な!越権行為!と腹を立てる医者たち。そんないがみあいも医療現場では、くだらないようで、とても深刻な問題にも思えます。
 ぞんざいに、適当に扱われるラザレスク氏の姿は、悲惨きわまりないんだけど、でも何だろう?あんましシリアスな感じがせず、むしろ滑稽(全体的に、いかにも笑え!なコメディとは違う、そこはかとないシニカルなユーモアが感じられる)、なのが返って怖い映画なのかも。瀕死な状態でも、医者に減らず口を叩いたり、素直に言うことを聞かないラザレスク氏の偏屈さに苦笑。いるいる、こんな困った爺さん患者。医者たちがムカ&イラっとなるのも解かるけど、でもやっぱヒドいよ。救急隊員に、意識があるうちは手術拒否できるから、意識不明になるまで救急車に乗せて、そのへんを走って時間つぶしてきて、なんて言う医者、信じられん!
 とにかく、ラザレスク氏のように、金も社会的ステイタスもない、生きようと死のうとどっちでもいい、みたいな人間は、こんな風に切り捨てられちゃうんだなあ、とゾっとしました。日本でも、他人事ではありません。 
 かなり長い映画(150分ぐらい)ですが、ラザレスク氏どーなっちゃうの!?という不安のおかげで、退屈することなく最後まで観られます。
 そうそう、ラザレスク氏が部屋で飼ってる、ぜんぜん動かないグータラな猫ちゃんたちが、すごく可愛いです。
 
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蹂躙の戦火!めおと灰燼

2008-01-27 | その他のヨーロッパ映画
 最近、ますます命取りになりかねない気の抜けようが、我ながらヤバい怖い...
 お腹が減ったので、リンゴと果物ナイフをもって階段を上がろうとすると、あっ!つまづいてしまい、もう少しで首にナイフがブスっと突き刺さりそうに。あと、熱湯みたいなお茶を膝の上にこぼしそうになったり。交差点のど真ん中で、バイクがエンストしたり。真夜中、駅から歩いて帰宅してたら、家の近くまで後ろを不審な男が。そのうち、すごい間抜けな方法で悲惨な死に方をしそう...

 お松の独りイングマール・ベルイマン監督祭⑤
 「恥」
 戦乱を避けて、辺鄙な島で農園を営む元音楽家の夫婦。やがて島にも敵軍が押し寄せ、夫婦は戦場と化した島から逃げようとするが...
 展開がスピーディで緊迫感があって、今まで観たベルイマン監督の作品とは、少し毛色の違う感じの映画でした。ひっそりと平和に暮らしていた夫婦が、あれよあれという間に戦火の下に叩き落とされ、逃げても逃げても待ち構えている悲惨で過酷な苦難に遭遇する姿を通して、戦争がどれだけ人間を非情に残酷にしてしまうかを描いているようで、ゾっとします。架空の戦争なのに、すごくリアル。聞くところによると、この映画が製作されたのは、東欧の冷戦やベトナム戦争が真っ只中の60年代後半。殺伐とした当時の雰囲気が伝わってくるようです。ベルイマン監督風の、戦争批判映画なのでしょうか。
 静かで冷ややか、というイメージのベルイマン監督作品ですが、この映画はかなりド派手で過激です。爆弾炸裂!銃殺刑!拷問!押し込み強盗みたいな兵士が家に乱入、家中をメチャクチャに破壊、放火!と、目を覆いたくなるヴァイオレンス描写。どんなに激烈でも、どこか冷めた感じがするのは、やはりベルイマン監督らしいです。
 戦争という極限状態の中で、夫婦が愛も人間性も崩壊させていくところは、コワレた人間大好きベルイマン監督の真骨頂。
 ちょっと神経質だけど、優しい夫。ちょっとキツいけど、たくましい妻。いろいろあったようだけど、折り合いをつけて仲良く暮らしていた二人が、戦争に追い詰められて身も心もボロボロ、隠していた本音を晒し、憎しみを芽生えさせ、疑心暗鬼に陥り、ついには精神崩壊。ニワトリも殺せなかったヘタレ夫が、自分が助かるために知人を見殺しにしたり、脱走兵を殺したり、頭の上がらなかった妻に強気になったりと、悪い意味で逞しくなっていく姿が、怖かった。でも、よほど心が強い人でないと、あーなっちゃうよなあ。平凡で弱いフツー人の私としては、他人事とは思えなくて怖気が。強大な力の前ではなすすべもなく、あわてふためき自分より弱い者を犠牲にする、愚かさ卑小さが出てしまうことでしょうから...
 ベルイマン監督のお気に入り、マックス・フォン・シドー&リヴ・ウルマンが、コワレ夫婦を熱演しています。ラストの絶望的な余韻に、戦争なんて何も得るものがない、という虚しさが深まります。
 
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断末魔の館!

2008-01-24 | その他のヨーロッパ映画
 やっと美容院へ行ってきただよ。
 髪を切った私に~♪by 聖子 違う人みたいと照れてくれる人は、もちろん誰もいません。それどころが、気づいてくれる人もいません。涙。いっそパンチパーマでも当てて、錯乱めいた自己主張をしてみようかな...
 最近、口内炎ができやすくなって、困ってます。なぜ!?ビタミンサプリたくさん摂取し、ひといちばい神経質に歯磨き&うがいしてるのに。どこか内臓でも悪いのでしょうか。
 
 お松の独りイングマール・ベルイマン監督祭④
 「叫びとささやき」
 余命いくばくもない次女を看取るため、生まれ育った館に集まる長女と三女。うわべは仲睦まじい三姉妹だが、それぞれ心と体に暗い愛憎と苦悶を秘めていた...
 あうう。ベルイマン監督の映画って、女がブっこわれていく戦慄心理ホラーばかり?この作品の三姉妹も、心身ともに崩壊してます。怖い!
 次女は癌?で、その苦痛に満ちた表情や動きは、壮絶で直視するのが困難。「エクソシスト」の悪魔憑き少女よりも100倍怖い!こんな風に苦しみにまみれて死んでいくのって、ほんとに恐ろしいとゾっとします。彼女の救われない断末魔の顔や声が、ギギギとガラスに爪を立てる音のように、脳裏にこびりつきます。彼女が救いを求めるように、献身的な女中の豊かな乳房に甘えるシーンは、宗教画のようですが、何だか不気味でもあります。
 病んでいるという点では、肉体ではなく精神が痛んでる長女と三女も深刻。
 三女は、ちょっと色情的?夫がありながら、医者と不倫。男を見つめる飢えた、でも虚ろな目が、気持ち悪い!
 最狂なのが、長女。一見、いちばんまともに見えるんだけど、実は...
 あの三姉妹、どうしてあんな風になっちゃったんだろう。噴出する憎しみや嫌悪感も、すさまじく病んでるんだけど、わけがわからない。理解できるほうがヤバいのかな。抑圧、劣等感、嫉妬。男よりも深く強いから、女のほうが壊れやすいのでしょうか。でも、女はみんなコワレ予備軍、みたいな映画って、観ていて気持ちの良いものではありませんよねえ。
 内容そのものは???だけど、見ごたえはある映画です。
 三姉妹を演じる女優たちが、とにかくスゴすぎます!こ、怖い!長女はイングリッド・チューリン、次女はハリエット・アンデション、三女はリヴ・ウルマン。ベルイマン監督お気に入りの常連女優3人が、壮絶悶絶に火花を散らしています。3人とも強烈ですが、特にディープインパクトなのが長女のイングリッド・チューリン。
          
 旦那とのセックスがイヤで?ガラスの破片で自分の陰部を傷つけ、血まみれの股を開き、手についた血を顔に...あううう...なぜこんなことを...おぞましすぎる。「ピアニスト」のエリカ先生も真っ青です。着替えシーンで老いた女体オールヌードを晒したり、よくやるなあと呆れおののいてしまう怪演。
 とにかく、圧巻な彼女たちに比べたら、日本の女優なんてホント学芸会だよなあと思えます。
 舞台となる館が素晴らしい。時計の針、インク瓶、ベッドのシーツ、人形、吐しゃ用の器etc.細部に至るまで、あるものすべてが趣深いアンティークな室内。赤・黒・白で統一されたような、室内装飾や三姉妹の衣装も美しい。赤は禍々しく、黒は不吉で、白は儚い感じなのが、女たちの心象や生き方を表しているようです。
 幻想的な庭など、撮影も素晴らしいなあと感嘆。アカデミー賞の撮影賞を受賞したと知り、なるほど納得。
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天使を陵辱

2008-01-23 | その他のヨーロッパ映画
 M子が家に彼氏を連れてきました。
 少し年下ですが、落ち着いていて温厚な青年で好感。その夜は、前もってM子から受けていた厳命通り、一家そろってテンパって粗相のないように頑張りました。
 ダミアンは愛想よく、親父は下品でエラそうな態度はとらず、私はわざとらしい不思議ちゃんを演じず。おおむね上手く行きました。私のふざけたボケも、今回はウケて場を盛り上げ、good job!とM子に褒められました。だが...何とか娘をもらってほしい!と熱望するmy motherが、ヘタを打ちました。緊張とヤル気満々さが仇となり、彼氏に同じことを何度も訊くわ、ご飯のおかわりを執拗に求めるわ、挙句に...今のところ彼氏には“優しくて純情な女”で通ってるらしいM子の、彼に知られたくない本性や生活態度などをポロっと暴露するなど、かなりKYなmy motherに、M子の顔は微かにヒクヒク。私もあわわ(+苦笑)。
 さて。彼氏は家族の一員になるでしょうか。M子に春よ、来い!私は氷河期なままっぽいな...

 お松の独りイングマール・ベルイマン監督祭③
 「処女の泉」
 アカデミー賞外国語映画賞受賞作。ベルイマン監督が、自身のベストと評していたらしい名作。
 16世紀のスウェーデン。富農の娘カーリンは、教会にロウソクを届ける途中、森で3人の浮浪者と出くわし、彼らに陵辱された上、撲殺されてしまう。愛する娘の非業の死を知った両親は、浮浪者たちを惨殺するが...
 キリスト教徒だったら、もっと深い感銘を受けるんだろうなあ。私には、悲惨なレイプ殺人事件と復讐劇+世にも奇妙な物語、みたいな映画でした。
 清らかで無邪気なカーリンちゃんが、ルンルンラララ~♪と森の中に独りで入っていく姿に、彼女が熊さんではなく強姦魔と出くわすことを知ってる観客は、行っちゃダメー!!と地団駄ふみたくなる。そのレイプ浮浪者、見るからに危険そうで、フツーだったら一目散に逃げるんだけど、人を疑うことを知らない、天使のようなカーリンちゃんは、逃げるどころかニコニコと、奴らと一緒にお弁当を食べるのだった。ああ~あまりにも純粋無垢すぎるのも、悲劇だ...
 あんなに清らかで親切な女の子(しかも処女!)を、強姦して殺すなんて、ほんと犬畜生にも劣る獣!ひどい!モノクロ映画でレイプシーンなんて初めて観たので、何だか怖かったです。カーリンを妬む私生児を身ごもってるアバズレ風娘が、カーリンを助けずじっとレイプされるのを見てるのも、おぞましい。後でレイプ犯どもは、チャールズ・ブロンソンと化したカーリンのパパに、無残に処刑されていくんだけど、もちろん爽快感などありません。神様なんて、いない...という絶望感と虚しさしか残りません。
 カーリンの死んだ場所から、こんこんと泉がわいてでるラスト、これは何か、宗教的な深い意味があるのでしょうか。それを見て、神様を畏れ敬う両親。敬虔な信者は、あれを救いと見なすことができるのですね。信仰の力って、偉大で不思議です。
 
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あね、いもうと悶絶旅行

2008-01-21 | その他のヨーロッパ映画
 近々M子さんが彼氏を家に連れてくるらしいので、私も身だしなみを整えるべく、美容院へ行かねば!
 成人の日の翌日に予約の電話をしたら、応答なし。なぜ?!昨日あらためてかけたら、またno answer!おかしいなあ。まさか、潰れたのかしらん?!新たに違う店に行くのも、何かメンドイし、どうしよう...と思ってったら、成人の日の翌日は臨時休業で、昨日は第3日曜日で休み、だった。何かしようといざ重い腰をあげたら、いつもこれなんだよなあ。タイミングが常にズレている私。休みですというメッセージぐらい留守電にセットしておいてくれよ~と、責任転嫁するのは上手な私です。
 
 お松の独りイングマール・ベルイマン監督祭②
 「沈黙」
 列車の中の女ふたりと、幼い少年。3人は、異国のホテルに宿泊するが...
 うう~ワケワカメ!やっぱ私程度のオツムで理解しようなんて、身の程知らずな難解映画でした。眠れぬ夜に観れば、睡眠を誘導してくれる映画かも...
 この3人が何者で、どういう関係で、何をしようとしているのか、まったく説明らしいものがなく、観る方の想像や解釈に委ねる作りになってるのも、観ていて疲れる。かろうじて、女ふたりは姉妹で、男の子は妹の息子とは分かるけど。滞在してる言葉の通じない国は、戦車が走ってたりすることから、冷戦下の共産圏の国?
 ほんと、いったい何が描きたいのか、おばかな私にはサッパリ分かりません。何やら憎しみ合ってるような姉妹。その確執が何なのかもはっきりとは説明してくれません。芸人の小人集団や、愛想がよいが何だかキモい爺さんホテル従業員とか、何か意味があるのだろうけど、やっぱそれが理解できない。公開当時、キリスト教徒が多い国では、上映禁止になったらしいけど、何が冒涜的なのかも???やっぱ私は、わかりやすい面白いハリウッド映画のほうが好きです。たまに背伸びして、こういったゲージュツ映画にも挑戦しちゃうけど、今回は見事に玉砕!
 意味不明で単調な、暗い陰鬱なシーンが延々と続くので、ほんと寝るなー!寝たら死ぬ!な雪山遭難状態に。でもたまに、わけわかんない!けどゲっとかウウッとか思うシーンが挿入されて、ポカンと見入ってしまうことも。
 病身の姉が、ベッドで自慰をするシーン。ううう。不気味です。女性のそういうシーンって、イタいというか、あんまし見たくないですよねえ。一般映画では、これが初の女性の自慰シーンだとか。他にも、妹が爆乳をあらわにするシーンや、劇場で男女がエッチしてるところとか、今では何でもない性的シーンも、当時はかなり掟破りだったんだろうなあ。モノクロなのが、返って淫靡で卑猥。そーいえばスウェーデンって、ポルノ先進国でしたっけ。
 姉と妹の、ネチネチした愛憎も、何だか薄気味悪い。インテリの姉に、劣等感を抱いてるらしい妹。肉感的で奔放な妹に嫉妬してるような姉。姉が妹に向ける好色な視線とか、愛してるのよおとキスしようとしたりするところとか、妹が行きずりの男とヤってるところに姉が乗り込むところとか、女ふたりが身もだえしながらヒステリックに絶叫する姿は、かなり異様。いったいこいつら何なんだ?と気持ち悪くなります。ベルイマン監督って、女がコワレる映画ばかり作ってた?
 姉役のイングリッド・チューリンは、ベルイマン監督作品の常連女優。
  
 グレース・ケリーをもっと怜悧に、そして生々しくした感じの美貌。自慰シーンや、ラスト近くの錯乱シーンとか、ううう...な怪演に唖然となります。ヴィスコンティ監督の傑作「地獄に堕ちた勇者ども」での魔の貴婦人役の彼女も、ものすごいインパクトでした。映画史上、最高の怪女優のひとりなのでは。
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こわれたお姉さんは好きですか

2008-01-20 | その他のヨーロッパ映画
 自分のことを好ましく思ってくれてたはずの人が、実はそうではなかった、と知るのって、悲しいですよねえ。何も気づかず、良い風に誤解したままでいたほうが、幸せだったのに。そういう面に関してだけは、鈍くいられない自分は不幸な人間だと欝になります。何も気づいてないフリをするが上手な自分も、何だかイヤです。

 お松の独りイングマール・ベルイマン監督祭①
 「鏡の中にある如く」
 昨年他界したスウェーデンの巨匠イングマール・ベルイマン監督の作品は、どれも名作の誉れ高いけど、何だか暗くて難解そう、という先入観があったので、つい最近までは敬遠していました。いざ観てみると確かに、内容は冷たく重苦しく、感動!とか共感!な映画は一本もない。けど、これ以上は無理!な耐え難さはない。むしろ、え!何!?この人たち、いったいどーなっちゃうの?!な、深遠すぎて意味不明な台詞や登場人物の言動が異様で怖くて、目が離せなくなる奇妙な面白さが。アカデミー賞外国語映画賞を受賞したこの作品も、そんな冷たく静かな異様さで引きつけてくれました。
 孤島の別荘で夏休みを過ごす作家、その娘と息子、娘の夫。精神病が再発し壊れていく娘の姿を、父親は冷徹に見つめようとする...
 ベルイマン監督の作品で描かれる人間の苦悩って、キリスト教徒じゃないとピンとこない?神の沈黙とか、神の不在とか、無神論者の私にはよく理解できない。宗教的な面ではチンプンカンプンですが、深く考えずに心理ホラーとして観れば、楽しめる(楽しんじゃいけないんだろうけど...)。
          
 精神病を患っている娘。はじめは、全然そんな風には見えず、すごく朗らかで健康的。そんな彼女が、静かにコワレていく。部屋の壁に入っていったの、とか、あの方(神?)が来る、とか、真顔で言ったかと思うと、いきなりヒステリックに狂乱、弟を誘惑したりと、完全にイっちゃってる言動が、心の病というより悪い霊に憑かれたみたい。あの方が来る~!と絶叫する彼女の元に降りてきたのは、彼女を精神病院へ運ぶヘリコプターってのが、笑っちゃいけないのに、何だか皮肉すぎてプっ。
 狂った娘に心を痛めつつ、その過程を観察しようとする父親も、ある意味狂ってる。そんな二人に翻弄される娘の夫と弟が、可哀想。
 愛が神。我々に愛されている彼女は、いつも神と一緒。だから彼女は幸せなのだ、と納得し合う父と弟。ええ~そうなの?そんな幸せ、いやだなあ。って首をかしげてしまうのは、やっぱキリスト教徒じゃないからでしょうか。
 ヒロイン役のハリエット・アンデション、はじめは人妻役に違和感があるほど、少女っぽい。彼女のイタコちっくなコワレ演技が強烈です。
 ヒロインの夫役は、マックス・フォン・シドー。若い頃のシドー爺、初めて見ました。斉藤洋介似?デカいですねえ。2mくらいありそう。
 弟役の男の子が、結構かわいかった。寸劇するシーンでは、ちょっとだけオーランド・ブルームに似て見えたり。
 舞台の孤島の風景が、夏なのに寒々としていて、登場人物たちの心象と重なります。
 
 
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秋怨奏鳴曲

2007-11-09 | その他のヨーロッパ映画
 本格的な冬を前に、わびしく厳しい寒風が吹きすさぶ広島カープ。
 黒田に続いて、新井も予想通りのFA権行使宣言、カープに残留はしないことに。
 さらなる可能性や活躍の場を求める彼らを責めたくないし、応援したいけど...自分を成長させるためには、義理とか人情とか言ってられない、誰かを何かを踏み台に、足蹴にする薄情さ冷酷さも必要なんだなあ、それができないお人よしは大きくなれないんだなあ。
 阪神入りの可能性が高い新井。金本といい、カープって阪神の二軍かよ!そこまでナメられて、ファンとしては悔しいやら腹ただしいやら。彼らを引き止められなかった球団の不甲斐なさも。今はただ、カープを見限った選手たちを見返す意味でも、彼らの目の前で優勝胴上げを!と夢見ずにはいられません。
 黒田&新井なき後は、梵(そよぎ)英心に熱いエール送るつもりのミーハーな私です...頑張れヨギー!!

 「秋のソナタ」
 世紀の大女優イングリッド・バーグマン。彼女が最後の映画に選んだのは、祖国スウェーデンの巨匠イングマール・ベルイマン監督の作品でした。
 有名ピアニストの母シャルロッテを、数年ぶりに家に迎える娘エヴァ。家庭を顧みず、華やかに身勝手に生きてきたシャルロッテへ、エヴァは積年の恨み憎しみを爆発させるが...
 母と娘のドロドロ愛憎&確執が、イタい&怖い。母娘というだけでなく、女のイヤらしさ、醜さ、哀しさも加わり、ほんと見ていて息苦しく憂鬱になります。
 はじめは、優しく和やかにシャルロッテを歓迎するエヴァが、ノーテンキで自己チューで魅力的な母と接しているうちに、積もり積もった鬱屈や憎悪を覚醒・再燃させていく姿が、ほんと怖くて悲痛です。呪いの血を吐くようなエヴァの憎悪の激白シーンが圧巻。才能があって美しい母と、何の取り柄もない平凡な娘、あまりも違いすぎた母娘の悲劇...なんて単純なものではない深刻さ。母親が、自分の思い通りに生きるために娘の心をズタズタにした、それも知らず知らずのうちに、まったく罪の意識もなく、という悲劇がジワジワネチネチ、やがてドガン!と暴露される会話劇は、緊張感と迫力に満ちていて、引き込まれるけど相当疲れます。
 エヴァの深く暗く内向した憎悪は、ほんと病的なほど異様なんだけど、あのママじゃそうもなっちゃうよなあ、という同情も禁じえません。同じように憎しみ合ってるのならまだしも、ママは自分のことしか考えてないだけで、悪気はまったくないのが、救いのない一方通行な関係のようで、暗澹となります。
 はじめから母と娘の会話は、無意識に故意に、チクチクと相手の神経を逆なでしたり、さりげなく毒が含まれたりしていて、怖いけど面白いです。『...生きてるのではなく、存在してるだけ』というシャルロッテの台詞が、まさにそういう人生を送っている私の胸に痛烈で、グサっときました。
 母と娘を演じる2大女優の激突が、最大の見ものです。
          
 イングリッド・バーグマンが、母国語スウェーデン語で演技するところ、初めて見ました。この役は、まさに自分自身!?よく演じられたなあ、と驚嘆するほど、彼女の人生とカブります。バーグマンが、女優として女として母として、恥も醜さも包み隠さず悔いなく演じきった、生涯の集大成的名演です。老いも堂々とさらすアップシーンの多さ、まさに女優魂。それに比べて、日本の大女優と呼ばれてる人たちって、つまんないよなあ。吉永小百合とかに、こんな演技できるだろうか。
 このバーグマンを見て、彼女の家族はどう思ったんだろう。すごく複雑だったろうなあ。何を犠牲にしようとも、誰を傷つけようとも躊躇せず、最後まで素晴らしい演技をすることを最優先させたバーグマン。アレモコレモ大事、セレブな名声が欲しいだけ、CMで楽に稼ぎたいだけの“自称女優タレント”と違って、演じることが命そのものな、全身全霊で女優だったんだろうなあ。崇高なまでの業の深さです。
 エヴァ役は、ベルイマン監督の公私にわたるパートナーだったリヴ・ウルマン。こ、こわれちゃってる...鬼気迫る演技に、圧倒されます。
 この母娘ほど激烈ではないにせよ、血のつながった母と娘の間って、嫁姑間とは違った微妙かつ複雑な感情のもつれって、ありますよね。私の祖母と母との間にも、時おり痛そうな棘が見え隠れします。気が強くワガママな祖母は、ボケた今でもおとなしい母をバカにしてるし、そんな祖母に従順に、でも不意に冷たい目で接す母の胸の内にも、きっと...
 
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遺された罪業

2006-10-06 | その他のヨーロッパ映画
 こないだ久々に、カラオケに行きました。
 秋のせいでしょうか。みんな、湿っぽい失恋ソングとか、悲しい歌ばっか!おめーら若いくせに、辛気くせーんだよ!マイク、貸せ!わしの絶唱を、とくと聞くがいい!
 もう逢えないかもしれない~♪
 別れましょう私から 消えましょうあなたから~♪
 あふれた涙は It's only love~♪
 もっと酔うほどに飲んで あの人を忘れたいから~♪
 って、いちばん辛気臭い歌を歌うのは、私なのでした…

 「MY FATHER 死の天使 アウシュヴィッツ収容所人体実験医師」
 何だか長くてオドロオドロしいサブタイトル。残酷な猟奇的映画?と勘違いされそうですが…中身は、とてもシリアスで悲しいドラマです。
 “死の天使”と恐れられた、悪名高きナチスの医師ヨゼフ・メンゲレ。戦後、南米に逃亡し各地を転々としながら、逮捕されることなく生きながらえたとか。突然の事故死も、実は偽装では?どこかで生きてるのでは?と噂されたり。とにかく、常人には計り知れぬ、重い暗い闇を抱えた死神博士って感じです。
 メンゲレの息子ヘルマンは、潜伏生活をしている父に会うため、灼熱のブラジルにやって来るが…
 とにかく、ヘルマンが可哀想!子供の時から、悪魔の息子!と人々に忌み嫌われ蔑まれ苛められ、大人になってからも、収容所の生存者たちから責められ、攻撃される。ヘルマンには、何の罪もないのに。父親の罪が、息子にまで一生背負わなければならない十字架になるなんて、理不尽で残酷です。
 凶悪犯罪って。時に、被害者の遺族以上に、加害者の家族のほうが哀れに思える場合もある。酒鬼薔薇少年の幼い兄弟とか、宮崎勤の妹とか。本当に可哀想です。兄のせいで、生き地獄に堕とされてしまったことでしょう。
 父へ恨みつらみを抱えながら、でも理解したい、改心させて罪を贖わせたい、と願い行動するヘルマンの姿が、涙ぐましく切ない。でも悲劇は、思っていた以上に根深かった…この映画のメンゲレは、自分が悪いことをしたとは、ぜんぜん思ってないし!むしろ、誇らしく正しいことをしたと信じているし!
 ヘルマンとメンゲレの間にある、思想や世代の価値観の、絶望的なまでな隔たりに、暗澹とさせられます。
 ヘルマンが、どんなに激しく責めても、常に淡々と冷静に、でも絶対自分の信念を曲げず押し通すメンゲレ。壮絶な修羅場をくぐってきた怪人だけあって、若いヘルマンでは到底、太刀打ちできない。逆に、自信と確信に満ちた、悪魔な自説を父親に聞かされ、え?そうかもしれない?と、あやうく洗脳されそうになるヘルマンに、ハラハラさせされます。

 ヘルマン役は、我が愛しのトーマス・クレッチマン。父の重すぎる存在に苦しむ息子を、熱っぽく演じていました。トーマスが出ずっぱり&バリバリの主役映画は、なかなか観られないので、彼のファンは絶対に必見です。
 相変わらず、クールだけど優しそうな男前トーマス。ナチスものだけど、今回はナチスじゃないし軍服も着てない彼です。せっかくの肉体美も封印してましたが、Tシャツ姿でもマッチョぶりが顕著で、セクシイです。

 メンゲレ役には、かつての大スター、チャールトン・ヘストン。齢80を越えての出演。お爺さんだけど、カクシャクとしていて、威厳があって、ヘルマンでなくても圧倒されてしまう魁偉さ。トーマスって、こんなに小さかったっけ!?と驚くほど、ヘストン老の堂々とした立派な体躯。でも、悪魔の医師とは思えないほど、情味のあるキャラ。そこに、ヘルマンと観客は惑わされます。
 ヘルマンに婚約者の写真を見せてもらい、心から祝福する優しいメンゲレの口から出てくる、とんでもない台詞!喜びも一瞬で冷まされ、思わず父親の首を絞めてしまうヘルマン。恐ろしい信念を滔々と話す父親に、も、もうやめてくれ~!!と耳を塞ぎ、のたうち回るヘルマン。哀れすぎ...
 人間と人間の間には、例え同じ血を分け合っていても、決して埋められない深い暗い隔たりがある…そんな悲しい感慨を与えてくれる映画です。
 ちょっと斬新なカメラワークとか、ミステリータッチなメンゲレの生死など、エンターテイメントな映画でもあると思います。

 
 
 
 
 
コメント
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Na shledanou

2006-07-01 | その他のヨーロッパ映画
 実録・乙女の事件簿「濡れたドライヴ~rainy day 待ちきれず...」(前編)
 朝は快晴だったのに、仕事が終わる頃には、どしゃ降りの雨。
 あ~まいっちんぐ。油断して、バイクで来ちまった。
Kくん『良かったら、乗りますか』
 後輩のKくん(阪神の金本似)が、親切なオファー。地獄に仏とばかりに、yes!と答える私。
 てっきり、私以外にもドヂでマヌケが同乗するとばかり思ってたので、助手席に私だけというシチュエーションに、あわわ!今さら、やっぱいいです、何て言えない。
 異常なまでに用心深いはずの私が、何という軽挙!パパとママに叱られる♪
 無口で無骨だけど、仕事ができて上下から尊敬&信頼されているKくんが、まさか大久保清になんかなるわけない。落ち着け!私は密かに自分を叱咤する。
 緊張すると、おしゃべりになる私の超くっだらない話を、聞いてるのか聞いてないのか、Kくんは無表情のまま。若い男にしては、異常にキレイな車内も、私を落ち着かせなくする。
 男は狼なのよ気をつけなさい~♪狼なんか怖くない~♪懐メロが、私の脳裏をグルグル。そんな時に、雨の外の風景は、ラブホのネオンだったり。
 Kくん、運転しながらチラチラと、あらぬ方へ視線を向けているではないか?ちょっと、どこ見てんのよー!焦る私。Kくん、何だか鼻息も荒いではないか?普段は冷静沈着なKくんに、いったい何が!?そして、不安(&ちょっと期待)に震える私に、何が待ち受けているのか!? 
 続く。

 「大通りの店」
 アカデミー賞外国語映画賞を受賞した、1965年のチェコスロバキア映画。
 チェコの映画は、初体験。オスカーを受賞しただけあり、なかなかの傑作でした。
 ナチス侵攻の脅威が忍び寄る、チェコの田舎町。お人よしの主人公は、ユダヤ人の老婆が経営する雑貨店の管理人になるが...
 冒頭から中盤までは、暗い時代の話とは思えないほど、ほのぼの&愉快な内容。
 おばあさん、ちょっとモウロク気味&耳が遠いので、緊迫した世情が全然わかってないところが、可笑しい。主人公と彼女の、噛み合わないトンチンカンなやりとりが、漫才みたいで笑える。
主人公『今日から俺が、ここの管理人ですよ、おばあさん』
おばあさん『ハイハイ、何が欲しいの?このボタンかい?』
主人公『そーじゃなくて、ユダヤ人は店を持てなくなったんだよ』
おばあさん『ハイハイ、今日は安息日だよ』
 ...みたいな調子で、おばあさんニコニコとボケまくり。それが、すごく可愛い。主人公が、そんな彼女に辟易しながらも、だんだん息子のように親しんでいく様子が、楽しく描かれていて、微笑ましくなります。
 でも!そんなほのぼのムードが、後半になると一転、まるで違う映画になったかのような、ヘヴィな展開に。
 ナチスのユダヤ人狩が熾烈化。おばあさんも連れていかれるのか!?不安感&緊迫感じわじわなムードになり、主人公同様、こっちもハラハラ。
 お人よしの主人公だけど、しょせん人間は小さい。絶体絶命の危機に陥った時、ハリウッド映画のように、勇敢なHEROになどなれない小市民的人間のリアルさが、悲しい...
 皮肉で悲惨な結末と、ファンタジックで幸福なラストシーンが、いつまでも胸に残ります。
 おばあさん役のイダ・カミンスカは、アカデミー主演女優賞にノミネートされたのも納得の名演(この年の受賞は、「バージニア・ウルフなんかこわくない」のエリザベス・テイラー。他の候補者も、ヴァネッサ&リンのレッドグレーヴ姉妹や、「男と女」のアヌーク・エメなど、国際的で面白いメンツ!)。
 それにしても。ほんとナチスって、悪逆非道なことばっかやってたんですね。アーリア人化政策だなんて、めちゃくちゃ過ぎて信じられない。あんな悪魔な法律がまかり通った時代に生まれなくて良かった...と、心から思います。
 
コメント (10)
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