まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

お父さんは認知症

2021-07-08 | イギリス、アイルランド映画
 「ファーザー」
 娘アンが雇ったヘルパーたちを、気難しいアンソニーは次々と難癖をつけて追い払っていた。アンソニーの認知症は進行し、記憶と現実が崩壊し始めて…
 御年82歳、「羊たちの沈黙」以来29年ぶりにアカデミー賞主演男優賞を受賞したアンソニー・ホプキンス。その快挙には心から拍手をもって敬服するばかりです。今年は「マ・レイニーのブラックボトム」の故チャドウィック・ボーズマンの受賞が確実視されていたので、蓋を開けてみたらホプキンス御大という結果には番狂わせ!とか騒いでた人も多くいたようですが、この映画を観たらそんな浅薄な口さがなさを恥じることになるでしょう。なぜなら、至極当然な受賞だから。

 私もチャドウィックの大ファンだし、マ・レイニーの彼は間違いなくオスカー級の素晴らしさなのですが、さすがにライバルが強大すぎました。もしチャドウィックがホプキンス爺を押しのけて受賞してたら、それこそ感動を狙ってのやらせに近い演出的なあざとさっぽさが否めず、オスカーの信頼性も価値も損なわれていたかもしれません。同情で受賞したって天国のチャドウィックは喜ばないでしょう。ホプキンス御大2度ののオスカー受賞作を観て、あらためてそう思いました。こりゃあ誰がどー見たって、ホプキンス爺さんに軍配が上がるでしょ。最近見た演技の中では強烈さナンバーワン。ホプキンス爺の当たり役、羊沈のレクター博士は映画史に残るホラーキャラですが、今回のホプキンス爺はある意味レクター博士より怖かったです。

 実際には、レクター博士みたいなカリスマサイコ殺人鬼と出会うことはまずないけど、この映画のアンソニーみたいな痴呆症高齢者とは誰もが関わる、いや、なってしまう可能性がある。今すぐ死んでもいいけど長生きしてボケたくはない!と、心肝寒からしめる映画でした。そして、かつてないような新感覚映画でもあった。痴呆症高齢者とその家族の映画やドラマは枚挙にいとまがありませんが、そのほとんどが高齢者の家族目線で描かれたもの。この作品は、認知症高齢者目線で描かれていて、その混乱し崩壊したカオスな世界に観客も翻弄され、恐慌に陥ってしまいそうになります。え?!あれ?どういうこと?!この人って確か?でも?みんな今どこにいるの?これは現実?虚構?妄想?人物も空間も知らぬ間にスルっと錯綜しまくり、ここはどこ?あなたは誰?状態で、もう何がなんだか?!あたかも迷路に入り込んで出られなくなってしまったかのような怖さ。まさに認知症追体験。すごく斬新で面白い!と思いました。オスカーでは脚色賞も受賞したと知り納得。

 認知症高齢者とその家族の話って、気が滅入るような深刻さだったり、感動狙いのお涙ちょうだいものだったりがほとんどだけど、この映画はシュールでユニークな心理スリラー、いや、心理ホラーにしてしまってたところが、特質すべき秀逸さでした。ちょっとクリストファー・ノーラン監督の作品を彷彿とさせましたが、ノーラン監督のSF的ワケワカメさとは異なる、凝った視覚効果や映像もない、親子の確執や人生の最終ステージを冷徹に描いた人間ドラマとしても見ごたえあり。フランスの劇作家で、この作品が映画監督デビューだというフローリアン・ゼレール監督の手腕にも驚嘆。共同脚色を担当した名脚本家、クリストファー・ハンプトンの熟練の技にもよるところも大きいのでしょう。

 言うまでもなく、アンソニー・ホプキンスの名演、いや、怪演こそこの映画最大の見どころ。もうほんと怖いヤバい面白い。因業なんだけど、どこか憎めないオチャメなところがあって、その脳内迷宮っぷりにゾっとさせられつつも、時々クスっと笑えるチャーミングさも発揮してるところが素敵でした。腕時計に執着して、アンの恋人に遠回しに執拗にそれはわしのものでは?盗った?と探りを入れてくるシーンとか、タップダンス踊ったり妙に元気なところが笑えた。圧巻だったのは、ラストの施設でのマミーマミーと子どもに戻って泣く姿。怖い!けど哀れすぎて胸が痛みました。ホプキンス御大はインタビューで、アンソニー役は簡単な役だったとのたまってましたが、難役だけど役者魂を燃やした熱演!な力みなどは確かに感じられず、あくまで自然に成りきってたのがやはり年季が入った役者。

 アン役は、「女王陛下のお気に入り」でオスカーを受賞したオリヴィア・コールマン。今回も忘れがたい好演。泣いたり怒ったりな感情的なオーバー演技は決してしないけど、笑顔の下の苦しみや悲しみが透けて見えて、アンソニーよりも痛ましかった。オリヴィアさん、笑顔と声が可愛い。おばさん女優としては世界屈指の高い好感度です。それはそうと。この映画が私の胸を人並み以上にザワつかせたのは、アンソニーとアンの親子関係ややりとり、確執が、私の亡き祖母と私の母のそれらとかなりカブってたから。私の祖母も認知症になり、アンソニーとおんなじようなことしたり言ったりしてましたもん。とにかく被害妄想と物やお金、家への執着が凄まじかった。父や私たちはそんな祖母にいつも腹を立ててましたが、娘である母だけはアンのように黙って耐えてました。祖母はキツい人で、母は幼い頃から辛い目に遭ってたようで、同じく愛情深い父親ではなかったアンソニーに複雑な思いを抱きながらも見捨てられないアンの子としての葛藤に、あらためて母の苦労と悲しみを思い知りました。今度は母がアンソニーに、私がアンになるかもしれないと想像しただけで戦慄。その前に、父がヤバいかも。M子やダミアンと、そろそろいろいろ相談したほうがいいかも…
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悪党紳士

2021-06-20 | イギリス、アイルランド映画
 「ジェントルメン」
 イギリスでマリファナビジネスを成功させたアメリカ人ミッキーは、事業を売却して引退しようとしていた。その巨大な利権をめぐって、熾烈な暗躍と死闘が繰り広げられることに…
 遊び心ある軽妙洒脱な演出と、小粋な台詞で裏社会の男たちを描いた「スナッチ」や「ロックンローラ」など、ガイ・リッチー監督の犯罪コメディ映画がすごく好きです。この新作も、リッチー監督らしさにあふれていて楽しかったです。脚本がいつも秀逸。小道具の使い方や伏線の張り方・回収が今回も冴えてました。意外なキャラが後で需要な存在となる設定に、お!そうきたか!とニヤリ。何でもないような出来事、ザコキャラと油断してスルーすると驚かされます。乱暴で下品なボキャブラリーぶっこんでも、会話がシャレオツ(死語)。

 演出と脚本もすぐれているのですが、リッチー監督作の何が素晴らしいかというと、やはりキャスティングでしょうか。いつも俳優選びのセンスがいい!ルックスのよさと演技力を備えた個性的な男優たちの魅力合戦こそ、リッチー監督作品最大の魅力だと思います。アカデミー賞狙い系の熱演とか力演ではなく、大暴れしながらも肩の力の抜けた軽やかで楽しそうな演技なのがいいんです。この新作は、今までで最もゴージャスかつシブいな顔合わせかもしれません。若造でもでもないジジイでもない、男盛り働き盛りな俳優たちが愉快に過激に演技と魅力を競っています。ミッキー役のマシュー・マコナヒー、いい男♡

 マコもすっかりシブい熟年になりましたね~。ダンディだけどイギリス人とはやはり違う明るさ爽やかさがあって、強いアメリカの威信をかけ英国に殴り込み。オールアメリカンな風貌のマコですが、ブリティッシュなスーツも似合っててカッコいい!優しそうだけどキレたらヤバい、昭和やくざみたいなコワモテ恫喝も迫力満点で、日本のイケメン俳優がやくざ役して無理してイキってるのとは大違いです。

 同じリッチー監督の「コードネーム U.N.C.L.E」ではチョイ役だったヒュー・グラント、今回はもっともオイシイ役でした。かつて一世を風靡した英国美男俳優軍団の顔的存在だった彼も、すっかり枯れたおじさんに。すっかりなのは、セコくてズルい役がオハコになってることも。この作品でも、口八丁手八丁で怖い男たちを翻弄し出し抜き、イイトコドリをしようとする小悪党な探偵を、トボけた感じで好演して笑わせてくれます。知的に自虐的なところが最近のヒューおじさんの独特な持ち味になってます。
 大好きな男前二人、チャーリー・ハナムとコリン・ファレルの顔合わせこそ、私にとってはこの映画最大の魅力&見所!

 ミッキーの右腕レイモンド役のチャーリーは、「キング・アーサー」に続いてのリッチー監督作出演。イギリス人だけどアメリカ人っぽい明るさと爽やかさ。髭もじゃ顔でもイケメン!冷静沈着で穏やかだけど、ボスのために必要とあらば荒っぽくもなる若頭チャーリーの暴れっぷりも痛快豪快でした。女っけがなく粉骨砕身にボスに尽くす姿は、マコとチャーリーがすごい男前同士だけに腐な妄想をかきたててくれました。

 ボクシングジムのコーチ役のコリン・ファレルも、なかなかオイシイ役でした。子分どもがマコのシマを荒らしてしまいその尻ぬぐいでチャーリーに手を貸すコリン、チェッカーズなユニフォーム?と困り顔が可愛い!一般人に迷惑をかけるクソガキどもを一瞬でボコる、その鮮やかな腕っぷしがカッコよかった。もうイケメンって感じではなくなってるコリンですが、おっさん臭は全然ないです。チャーリー&コリンのコミカルなやりとりとブロマンスな共闘に萌え。

 コリンの子分どもが大暴れしながら歌って踊ってラップしてYouTubeにアップ、その動画がふざけてる、かつカッコよくて好き。あと、ミッキーを恨んで陥れようとしていた新聞社編集長を、最後にギャフンと言わせる方法がゲロゲロ(死語)で笑えます。いくら何でもあれは可哀想!ロンドンの公園や郊外にある貴族の屋敷も、イギリス好きには目に楽しいです。底辺生活者が暮らす団地は、ニューヨークのスラム街に劣らぬヤバさ。俗悪な金持ちアメリカ人を蔑んでるけど、屋敷の維持や生活のためにビジネススマイルでへいこらしてるイギリス貴族たちの姿が、みじめで皮肉でした。パブでビールの飲みたくなる、お城で紅茶飲みたくなる、そんな気分にさせてくれるイギリス映画が好きです。次はどんないい男を集めてくれるのか、リッチー監督の新作が楽しみ。
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百合の化石

2021-06-16 | イギリス、アイルランド映画
 「アンモナイトの目覚め」
 1840年代のイギリス南西部の町ライムレジス。古生物学者のメアリー・アニングは、上流階級の若妻シャーロットと出会い心を通わせる仲となり、やがて彼女と恋に落ちるが…
 イケメン俳優には超甘い私ですが、女優には鬼姑のように厳しい私。普段からあの女優にもこの女優にもイチャモンばかりつけてますが、もちろん高く評価してる女優もたくさんいます。その代表格がケイト・ウィンスレット。若くして実力も見た目も横綱女優となった彼女の後継者のように、やはり少女の頃から大器を感じさせる非凡さ、魅力を発揮して若手随一の女優となったシアーシャ・ローナン。女優としてはまったく異なるようで、キャリアの重ね方や仕事選びのセンス、20代で何度もオスカー候補になるなど、共通点も多い二人が競演!のニュースは、ファンとして小躍りするものでした。いつか共演してくれないかなと願ってたので、意外と早く実現して喜ばしいかぎりでしたが…共演作の内容は私を戸惑わせました。二人が愛し合う役…百合映画…ご存知の通り私、薔薇は三度のメシより好きなのですが、百合は苦手なのです甘く切ないファンタジーとして楽しめるBLと違い、女性同士の恋愛は生々しいというかイタいというか優しくないというか、見ていて幸せな気持ちになる作品ってほとんどないような。気持ち悪い、醜い、怖いって思うことのほうが多くて。私も性差別主義者なのかなと、百合映画を観ると気まずくなってしまうのです。というわけで、大好きな女優おケイさん&シアーシャの競演作も、楽しみというよりおそるおそるな気分で観に行きました。

 やはり女性同士のラブシーンは苦手やわ~…いつまで経っても、何だか見てはいけないものを見てるような気分にさせられます。おケイとシアーシャの性愛シーン、思ってたよりガッツリあって結構しんどかった。できれば軽めにサラっと、何なら朝チュンですませてもらってもよかったのに。ってBL映画でそんなことしたら、もっと激しく濃くヤれやー!と不満不平だらけだったでしょうけど互いにク〇ニし合うシーンとか、ほとんどホラーでした。同じフランシス・リー監督の「ゴッズ・オウン・カントリー」のBLセックスシーンのほうがリアルで大胆だったけど、同時にすごくロマンティックでほっこりするものだった。同性愛映画でも、女ってやっぱ男より精神は強く、芯は現実的で冷めてるよな、と思わずにはいられません。同じように燃え上がっても、女たちは男たちと違って理性を失わないし破滅なんかもしません。この映画のメアリーとシャーロットも、激しく求めあってもすべてを捨てて恋に殉じたりはしません。そういう女の冷静さ冷徹さが恋愛にもあるから、私は百合映画が苦手なのかもしれません。

 でも、ケイト・ウィンスレットとシアーシャ・ローナンは、やはり卓越した女優!キレイカワイイだけの自称女優にはない役者魂に感嘆、驚嘆するばかり。シアーシャはまだ若いし上流階級の人妻役なので美しく見えるシーンも多々あるのですが、おケイさんときたら。薄汚れた服でのっそり動く姿、ずんぐり体型、ほとんどおっさんです。そこが彼女の素晴らしいところ。若さや美しさではなく、醜さも衰えも隠さない果敢さを尊敬せずにはいられません。大げさな演技はぜず抑えに抑えた無表情のままで、万感の想いが伝わってくる緻密で繊細な演技でした。特に印象的だったのは、音楽会で他の女性と仲良くしてるシャーロットをジト~っと見つめてる間の鬼のような形相。こ、怖い!式神でも飛ばしそうなほどの凄気でした。ラブシーンで見せる崩れた中年女の体も強烈。珍しく完脱ぎしてなかったけど。

 シアーシャも、もっと楽に稼げる仕事できそうなのに、チャレンジャーなところがハイクオリティ女優の面目躍如。最初のメンヘラっぷり、恋に落ちてからの息を吹き返したような闊達さ、その演じ分けの鮮やかさが見事でした。彼女の上品なドレスも時代劇ファンは楽しめます。
 2大女優の演技合戦も見所ですが、私の目を最も惹いたのは外国人の医者役の俳優。ん?どっかで見たことあるなと思ったら、あ!「ゴッズ・オウン・カントリー」のゲオルゲじゃん!

 ルーマニア俳優のアレック・セクレアヌ、ちょっと濃い目の優しそうな男前!脇役でしたが、心優しく寛容な役どころはゲオルゲと同じでした。男らしい風貌だけど、控えめでそっと支えてくれるような役が似合いますね。おんな同士の愛憎がしんどい、そんな中で一服の清涼剤のような存在で癒されました。映画にはやはりイケメンが必要です。陰鬱な曇天、峻厳な海、寂寞と寒々しい浜辺も、情熱的だけど不毛な愛の物語の舞台に相応しかったです。それにしても。化石ってお宝なんですね。私も近くの海水浴場の岩場で化石を探してみよっかな。
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幸せの妖花!

2020-11-13 | イギリス、アイルランド映画
 「リトル・ジョー」
 バイオ企業の研究者アリスは、香りで人を幸せな気分にさせることができる新種の花の開発に成功し、その花を息子のジョーにちなんで“リトル・ジョー”と名付ける。会社の規則を破って一輪だけ自宅に持ち帰り、ジョーにプレゼントするアリスだったが、その日からジョーの言動に奇妙な変化が生じて…
 幸せを呼ぶ魔花!妖しい花粉に操られて…なんて土曜ワイド劇場ちっくなサブタイトルをつけたくなる、世にも奇妙な物語のネタにもなりそうなSF怪奇映画でした。遺伝子操作とか、本来ならこの世に生まれるはずがないものを創り出してしまう、自然の摂理に反した化学の進化、そして人間の思い上がりへの警鐘のような内容でした。

 ハリウッド映画だときっと、派手なサスペンス風、もしくはホラー風になってたところですが、この映画には流血シーンも残虐シーンも全然なく、物語は淡々と静かに進行します。そんな中、観ているうちにイヤな予感や不安を感じてしまう妖しい空気が、まさに花粉のように漂い充満していく、そんな雰囲気や展開はやはりヨーロッパ映画って感じでした。不穏なシーンではなぜか中国ちっくなBGMが流れてくるのもシュールでした。

 花粉を吸うと、リトル・ジョーに操られて人格が変わってしまうのですが、まったく別人格になってしまうわけではなく、異常で危険な言動をするわけでもなく、何となくなにげなくだけど強い違和感、という描写もなかなか巧妙でした。見た目からして妖しいリトル・ジョーですが、決して人間を支配しようとか滅ぼそうとか目論んでる邪悪な妖怪みたいな花ではなく、生き延びたい、そのために守られたいという生存欲求ゆえの妖力みたいだったので、むしろ勝手に生み出して勝手に終わらせようとする人間のほうが、悪者のように思われました。

 結局、アリスをはじめ誰にとっても都合のいい結末、でもそれは本来の意思や正しさが消されてしまったがためのハッピーエンド、が皮肉すぎて笑っていいのか戦慄すべきか、ラストは不思議な余韻を残します。確かに人々を幸せにしたリトル・ジョー、人間の欺瞞や偽善を栄養に毒々しく咲き誇る姿が、妖しくも美しかったです。
 アリス役のエミリー・ビーチャムは、この作品でカンヌ映画祭の女優賞を受賞。これといって特筆すべき演技ではないのですが、オーバーな大熱演ではなかったのは好感。見た目が科捜研の女のマリコ先生っぽかったです。白衣の下の上品で淡いパステルカラーの服が素敵でした。
 アリスの同僚研究者クリス役を、ベン・ウィショーが好演。

 クリスはアリスに片想いしている設定なのですが。ゲイ役じゃないベン子さんにちょっと違和感女に告白したりキスしようとしたりするベン子さん、久々に見た感じ。「ロンドン・スパイ」や「英国スキャンダル」「追憶と、踊りながら」など、もはやゲイ役をやらせれば天下一品、ゲイ役を極めたといっても過言ではないベン子さんなので、ノンケな彼は何かしっくりこない。ノンケ役とはいえ、やはりどことなくゲイゲイしさを消せてないところが、ファンには嬉しかったです。おどおどと内気そうだけど、ほんとにアリスのことが好きなのかな?何か企んでるのでは?と疑わせる胡散くささ、優しそうだけど掴みどころもない、そんなところも凡百な俳優には出せない味わいでした。ベン子さんの優しい声、美しいブリティッシュイングリッシュも好きです。

 アリスの息子ジョー役のキット・コナーが、いかにもイギリスの男の子らしい、可愛くて賢そうで品のよい少年。後で「ロケットマン」のエルトン・ジョンの少年時代を演じた子と知ってビツクリ。制服が似合ってて少年なのにカッコよかった。アリスに対する優しげだけど冷ややかな、そして愚弄するような言動が魔少年っぽくて素敵でした。ジョーのガールフレンドも可愛かったです。あと、話に全然関係ないのですが、アリスたちが会社のカフェで食べるランチやスウィーツが、すごい美味しそうだった。可愛いケーキを食べるベン子さん、ほとんど女子でした
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新婚初夜に…

2020-09-28 | イギリス、アイルランド映画
 「追想」
 1962年のイギリス。歴史学者志望の青年エドワードは、ヴァイオリニストのフローレンスと出会い恋に落ち結婚する。ハネムーン先のホテルで、二人は初夜を迎えるが…
 イアン・マキューアン原作、シアーシャ・ローナン主演といえば、「つぐない」からもう12、3年も経ったんですね~。当時13歳ぐらいだったシアーシャも、すっかり大人の女性、そして何度もオスカーにノミネートされ大物女優に成長しました。20代半ばにして、もはや風格さえ漂わせてます。美しいといっては当たらないけど、少女のような繊細さと複雑さ、そして強い精神力が混在した個性が魅力的な女優。この作品のシアーシャは、今までにないほど生々しい“女”でした。女といっても、色気とかセクシーとかいった明るい魅力を発揮しているのではなく、女性だから負ってしまう性的な苦悩とか痛みとか暗く重い業です。

 新婚初夜で悲劇的な事実が発覚するまでは、知性と優しさ、強さにあふれた、シアーシャらしい魅力的なヒロインなのですが、性への不安と嫌悪に苛まれた本当の姿をさらした彼女の思いつめた、いや、狂気一歩手前のような言動と表情は、グロテスクでもありました。悲しみのヒロインって感じは全然なく、ただもう正視しがたい、胸をザワつかせるイタい女でした。シビアな役、演技に果敢に挑むところは、さすが当代随一の若手女優。キレイキレイじゃない、甘ったるくないところが好きです。シアーシャ独特の透明感ある少女っぽさのおかげで、生々しさも気持ち悪くならずにすみました。

 シアーシャが脱いだり濡れたりはないけど、あの初夜の営み失敗はかなりリアルでインパクト強烈。悲惨、みじめすぎてもはや滑稽でした。エドワードが童貞ではなく経験豊かな男だったら、ひょっとしたらあんなことにはならなかったかも。童貞のみなさんには、結婚前にある程度は経験を積んでおくことをオススメしますそれにしても。結婚と性生活は切っても切れないもの、愛し合う男女は肉体的にも結ばれなければければならない、夫婦は子どもを作らなければならない、という考えが当然であるかぎり、幸せになれない人は後を絶たないんだろうな~。私なんかもフローレンスほど深刻ではないけど、セックスがそんなに重要とは思わない人間なので、世間一般の“性的に健全な関係”はかなり重く感じます。

 破局に至るまでのフローレンスとエドワードのロマンスは甘美で、微熱あるプラトニックラブって感じが素敵でした。お互いにあんなに若い希望にあふれていて、思いやりと敬意を抱き合っていて、芸術家としての感性も楽しく優しく分かち合えてたのに、セックスできないせいですべてがメチャクチャになってしまうなんて。男女の愛ってそんなもんなのか~と絶望感に襲われました。
 エドワード役のビリー・ハウルは、イギリス若手俳優の中で私が今もっとも注目してる有望株です。

 全然イケメンじゃない、どちらかといえばブサイクなのですが、ブサイクなのにすごいイケメンに見えることがある不思議な男なんですよ。男を美しく見せるのは、やっぱ顔じゃなく豊かな内面を感じさせる雰囲気なんですよね~。座って本を読んでる姿とか、考え事をしてる表情とか、何でもないのに絵になってるんですよ。何でもないシャツやジャケットも、さりげなく上品にオシャレに着こなしてるところとか、貧乏なのに貧乏に見えないところとか、すらっとした長身もさすが英国男子。

 繊細で優しく、ロマンチックな文系好青年だけど、決してヒーローではなく悲しいまでにどこにでもいる平凡な男って感じも、ビリーは上手に出していて秀逸でした。人気俳優なら、平凡な役でもどこかそうじゃないところを出そうとするけど、そんな自意識過剰さも自己陶酔もない演技は、カッコいい演技より難しいはず。ビリーのテンパったドキドキオドオド童貞演技も素晴らしかった。初夜の営みでの彼のぎこちなさすぎる不器用ぶりが、イタくて可愛かったです。可愛いお尻も披露してます。それにしても。初夜っつっても、イギリスは緯度が高いせいか昼間みたいな明るさ。せめて寝室は暗くして営みなさいよ、そんなお互い丸見えな明るさじゃ童貞&処女じゃなくてもぎこちなくなるよ、と思いました

 脇役では、フローレンスのママ役がエミリー・ワトソン(すっかりオバハンになってて誰だかわかんなかった)、パパ役が英国映画・ドラマを観るとかなりの確率で遭遇するサミュエル・ウェスト、でした。エドワードの脳がイタんだママ役で素っ裸になってた女優は、ジェームズ・マカヴォイの元嫁だとか。「つぐない」組では、マカぼんもキーラ・ナイトレイも今は過去の人化、シアーシャのほうがはるかに格上になっちゃいましたね。
 エドワードの実家のある鄙びた村や、新婚旅行先のドーセットの風景が美しい!イギリスの田舎ってほんといいですね~。特に印象的だったのは、オリジナルタイトルにもなってるチェシルビーチ。二人の愛を表してるような寂しく陰鬱で不毛、なのに美しい曇天と海に感銘を受けました。行ってみたい!

 ↑ シアーシャとはチェーホフの「かもめ」を映画化した作品でも共演してるビリー。そろそろ堂々の主演作で会いたいものです
 
 
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地獄の貴公子!

2020-09-14 | イギリス、アイルランド映画
 「高慢と偏見とゾンビ」
 18世紀末のイギリス。謎のウィルスが蔓延し人々はゾンビ化。田舎で暮らすベネット家の5人姉妹は、金持ちの男性との結婚を母親からせっつかれながらも、ゾンビとの闘いのための武術の修練に勤しんでいた。そんな中、次女のエリザベスはダーシーという大富豪の騎士と出会うが…
 日本でも人気のジェイン・オースティン原作の小説とその映画化作品ですが。私は正直ちょっと苦手なんですよね~。当時の英国の上流階級と中産階級の生活や価値観、文化はとても興味深いのですが、内容が何となく上品になった橋田寿賀子先生のドラマっぽいというか、結婚だの財産だのと世知辛くてセコく、出てくる男女にも共感しづらくイラっとさせられるんですよね~。私のようなおっさんには向いてないということなのでしょう。コリン・ファース版の「高慢と偏見」は好き。キーラ・ナイトレイ版の「プライドと偏見」は好きじゃない。内容は一緒なのですが、どこが違うのでしょう。

 それはやはり、出演者でしょう。イギリスの時代劇には、必ず美青年や美熟年の俳優が出てるので観逃せないんですよね~。キーラ版がイマイチだったのは、その法則に反していたからでしょうか(単にキーラが苦手で私のタイプなイケメンが出てなかっただけ)。コリン・ファースのダーシーは、もう彼以外考えられない!な名演でしたよね~。そしてこの作品、高慢と偏見をゾンビ映画にするというトンデモ映画、滑稽なイロモノ級パロディかと思ってたのですが、すごく面白かった!オリジナルより好きかも結婚結婚とギャーギャー大騒ぎせず、特異な設定の中でゾンビとの闘いをメインにしていたのが良かったのかも。なので、原作ファン、そして草葉の陰のジェイン・オースティンが観たら、こんなの高慢と偏見じゃねー!と怒りで泡を吹くかもしれません。奇想天外、荒唐無稽な話ですが、素敵なイケメンが出てるので無問題、そして高得点!高慢と偏見といえばもちろんダーシー、この映画のダーシーを演じた俳優もカッコよかった!

 サム・ライリー、初めてお目にかかりましたが、カッコイイ、ていうか、カワイイ!思わず瞠目、最近鈍くなってるMYイケメンレーダーが久々にビビビとなりました。可愛い童顔なのですが、ものすごく暗いどよよ~んとした雰囲気と傲然とした表情。媚売りまくりな営業スマイルタレントを見慣れてる目には、とても魅力的に映りました。エレガントで慇懃無礼な紳士の物腰、物言いは、やはり英国俳優じゃないとしっくりきません。すらっとした長身に、黒い衣装が似合う。颯爽と敏捷な身のこなしでゾンビをぶった斬るクールでニヒルなダークヒーローが、ふとした瞬間に見せるハニカミや微笑がこれまた可愛い!お気に俳優リスト入りのサム・ライリー、他の出演作も観ねば!


 ダーシーの親友ビングリー役は、「ライオット・クラブ」でゲスいイケメンお坊ちゃまを演じてたダグラス・ブース。今回の彼もめっちゃキラキラなイケメン!明るくて性格が善くて、ちょっとヘタレなところも可愛かったです。根暗イケメンと陽気イケメン、かなり絵になるサムとダグラスのツーショット、姉妹と恋するよりもこの二人がBL関係になればいいのに!と心底思った私、やはり病的な腐ですねでもゾンビ映画にできるぐらいなら、BL映画にだってできるでしょ!高慢と偏見BL版、ぜひ製作してほしいです。

 5人姉妹役の女優たちも、みんな美人で可愛かったです。エリザベス役のリリー・ジェームズは、現代的すぎるというか、ドレスよりも水着のほうが似合いそうなセクシー美女でしたが。5人姉妹がきれいなドレス姿で華麗に豪快にゾンビ退治する姿が痛快でした。上流階級の女子は日本で、中流女子は中国で剣術を学ぶ、という設定も面白かったです。男なんかに頼らなくても、あんなに強けりゃ結婚しなくたっていいと思う。ていうか、あんなゾンビワールドで家柄だのお金だの言ってるほうが変じゃないでしょうか。

 ↑ サム・ライリー、1980年生まれ現在40歳(に見えんぞ!)。「マレフィセント」シリーズにも出てる!観ねば!
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有閑ゲス倶楽部

2020-09-03 | イギリス、アイルランド映画
 「ライオット・クラブ」
 オックスフォード大学に入学したマイルズは、上流社会の生徒だけが集うライオット・クラブへの加入を許される。超エリートであるクラブのメンバーたちは、家柄や金にものを言わせて傍若無人に振る舞っていたが…
 イギリスの上流階級を描いたドラマや映画が大好きです。時代劇にしろ現代劇にしろ、私のようなワーキングプアからすると異次元のライフスタイルや価値観、そして優雅で冷ややかな欺瞞と偽善は、高価な美酒のように私を酔わせます。でもこの映画のスノッブたちは、ただもう不愉快で腹が立つだけでした。イギリスのアッパークラスの気位や傲慢さって、あくまて美しい慇懃無礼さや慎みでオブラートに包まれてるから素敵なのに、この映画のガキどもときたらやることなすことゲスでクズで、まるで韓国の財閥や成金のバカ息子と同レベルな民度の低さ。憧れてしまう点がまったくなくてガッカリ。

 世界でも随一のエリート予備軍が、傍若無人なおふざけ、どんちゃん騒ぎにうつつを抜かす、その低能で下劣な内容にドン引き。百歩譲って、自分たちだけでバカやってりゃまだ嗤って許せるのですが、ものすごい顰蹙や迷惑を世間にまき散らすのが見るに堪えなかった。こんな愚かな若造どもが将来、英国の政治や経済を担うことになるなんて。にわかには信じがたかったです。世の中に出て注目されるようになるともうバカできないので、今のうちにとモラトリアムを楽しむのは理解できるが、いくら何でもライオットクラブの連中のお楽しみは度が過ぎてる。器物破損だけで一般人なら逮捕されます。

 下級国民に迷惑をかけても、彼らが不利益をこうむっても、いや、彼らが生きようが死のうが俺らには関係ない、俺らは何しても許される、という選民意識に虫唾が走りました。ただ単に名家、金持ちに生まれただけの中身カラッポなガキたちが、一生懸命生きてる庶民を見下し犬猫のように扱い、挙句の果ては傷つける姿は、英国のみならず日本にもある格差社会ともカブりました。日本だって、言動に選民意識がにじむ政治家や芸能人、有名スポーツ選手、いっぱいいますし。コロナ禍でそれはいっそう明白になった。我慢したり謝ったりするのは庶民のすること、上級国民の彼らは沖縄でクルージングしようが夜遊びしようが未成年と淫行しようが、全然OKなんです。

 後半のクラブ会合を開いたパブでの乱痴気、からの恐ろしい事件発生、罪のなすり合い、そして彼らに下される処罰、すべてがあまりにも庶民を軽んじてる、あまりにも非道い格差の現実に愕然、暗澹となりました。あんなことをしておいて、ほぼ無傷なライオットクラブ。決して美しくない上流社会の人々、格差社会の理不尽さ、苦さを描くことがこの映画のテーマだったのでしょうか。イートン校とかハロウ校、ウェストミンスター校など、有名なパブリックスクール出身によるシビアな学歴ランク付け、マウンティングもイギリス上流社会らなでは。最近の英国高学歴スターといえば、エディ・レッドメインとかトム・ヒドルストンとかでしょうか。天は与える人にはたくさん与えるんですよね~。私なんか一つもない(泣)不公平!

 内容はムカっとイラっとするだけなのですが、ライオットクラブのメンバーを演じたイギリスの若手俳優たちのイケメンぶり、そしてゲス&クズ演技は、英国映画ファンにとっては必見かも。主人公のマイルズ役は、名優ジェレミー・アイアンズの息子マックス・アイアンズ。パパみたいな退廃的美男ではなく、素朴でフツーっぽい風貌。優しそうなイケメンです。マイルズを目の敵にするアリステア役は、もう映画ファンにはおなじみな顔になってるサム・クラフリン。偏屈で打算的でイケズな男子を憎々しくも、どこか寂しげに好演してました。どんな役でもイケメンっぷりは不変。

 いちばん目を惹いたイケメンは、最も裕福で高貴な家柄の子息ハリー役のダグラス・ブース。初登場シーン、フェンシングの面をとって顔を見せる彼、キラキラすぎてまさに少女漫画だった!すごい美男子!でもゲス&クズ度はクラブのメンバー屈指もっともMYタイプだったのは、マイルズをクラブに誘うヒューゴ役のサム・リード。「セリーナ」でも脇役ながらイケメンでしたが、今回は落ち着いた大人の雰囲気、そして明らかにマイルズに友情以上の感情を抱いてる目つきや仕草が妖しく、腐は彼の一挙手一投足が気になって仕方なくなります。

 その他にも、どこかで見たことがある男優女優が何人も出演してます。クラブのメンバーでギリシア系のディミトリ役は、「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」で成長した主人公役だったベン・シュネッツァー。クラブの会長ジェームズ役は、エドワード・フォックスの息子フレディ・フォックス。マイルズの彼女役は「チャタレイ夫人の恋人」でヒロイン役だったホリデイ・グレンジャー。ハリーが雇う娼婦役は、The Tudorsでアン・ブーリンを演じたナタリー・ドーマー。「ハワーズ・エンド」では美青年役、今は熟年バイプレイヤーなサミュエル・ウェストが大学教授役で顔を見せてます。
 英国イケメンたちのファッションも見どころ。カジュアルな服装も、どこかやはり品も趣味も良くて素敵。男性アイドルのステージ衣装みたいなクラブの正装もカッコよかった。歴史と伝統を誇るオックスフォード大学の学舎やキャンパス風景、郊外の美しい自然など、イギリス好きにはたまらないシーン満載です。

 ↑ イギリス俳優って、ほんといいですね(水野晴朗調)!近いうちにまた英国俳優映画祭しよっかな~☕
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ドミ公のイケメンミッション

2020-05-31 | イギリス、アイルランド映画
 「コードネーム:ストラットン」
 イギリス海軍特殊舟艇部隊の隊員ストラットンは、生物兵器を用いて大規模なテロを起こそうとしている謎の組織を追跡。ロシアの元諜報員バロフスキーが暗躍していることを突きとめるが…
 今年のGWは、ずっと未見だったトム・クルーズのミッションインポッシブルシリーズ「ローグ・ネイション」と「フォールアウト」を観ました。公開延期になった007の最新作も待ち遠しい。スパイアクション映画、大好きです。スカっと楽しく現実逃避できるので、暗く息苦しい気持ちになりがちな今にぴったり。この映画の主人公は厳密に言えばスパイではなく、実在するイギリス海軍の特殊舟艇部隊(SBS)の隊員ですが、世界各国に飛び回ってテロリストを追跡したり、罠を仕掛ける工作をしたり、派手な銃撃戦やカーチェイス、爆破など、MIや007と同じ系列の映画です。

 SBSって初めて知りました。海とか河川を主戦場にしてる部隊なのでしょうか?水上以外でも活動してたけど、007でおなじみのMI6とか、イギリスにはいろんな諜報組織や部隊があるのですね。任務がカブったりしないのでしょうか。MIや007に比べると、全体的にかなり地味な印象を受けましたが、ほとんどSFな近未来的武器やアイテムが出てくるMIや007よりも、比較的現実味があるとも言えます。それにしても。MIや007、ワイスピとか人気アクション映画では、必ずといっていいほど戦いの舞台となってメチャクチャにされてしまうロンドン。市民にとってはほんといい迷惑。命がいくつあっても足りない街です。

 でも、相変わらず美しく趣深い街でもあります。今回もおなじみの風景が、アクションの背景として巧く映し出されていて、ロンドン行きたいな~と思わずにいられませんでした。今回は船舶の往来とかヨット住居とか、テムズ川周辺の様子がよく撮られていました。ボートチェイスもエキサイティングでした。こんな場所があるのか~な興味深い発見も。大昔にロンドンに初めて行った時は、テムズ川やタワーブリッジなどろくに見なかった。次にもし行けたら、テムズ川遊覧したいです。

 主人公のストラットンは、イケメンで屈強で度胸があって頭脳明晰でカッコいいのですが、人柄や言動が真面目で地味なのが惜しい反面、中途半端にコミカルだったり必要以上にシリアスだったりしない、人間とは思えないほどの超人的能力の持ち主でもない、フツーっぽいところには好感。友人が死んだりカノジョに捨てられたりしてションボリな様子が可愛かった。ストラットンのキャラは薄口ですが、演じた俳優は濃ゆい。大好きなドミニク・クーパーに今回もジュンときました~
 
 あいや~!ドミ公、やっぱええわ~どストライク男ですわ。40過ぎてちょっとシブくなってきて、ますます男前に。若々しくて色っぽい。俊敏で軽やかな身のこなし、ワイルドだけどどこか優雅でもあって、SBSの戦闘服も男くさくかつナチュラルに着こなして、何してもサマになる男。日本の俳優がアクションなんかやったって、イタくて滑稽なアクションもどきになるだけですが。ドミ公みたいに華も演技力もある俳優なら、もっとメジャーな大物スターになっててもおかしくないのになあ。ドミ公の色気を活かした役ではなく、色っぽいシーンもなかったのが残念。ドミ公が脱がない映画って珍しい。ちなみにストラットン役は当初、ヘンリー・カヴィルが演じる予定だったとか。

 バロフスキー役のトーマス・クレッチマンも男前。しばらく見ないうちに爺さんになったけど。それにしても彼、以前からナチスの軍人役と東欧のテロリスト役がオハコな俳優でしたが、最近ではもうそれ専門になってるような。ハリポタのトム・フェルトンがチームの一員役。彼も性悪なエリート役専門で食っていけそう。チームの女性メンバー役、中国系の女優ジェンマ・チェンが美人。彼女、私生活ではドミ公の今カノなんだとかいろんな女優との熱愛が絶えないモテ男ドミ公、アラフォーになっても先っぽが乾かない男です。

 ↑イケてるドミ公の画像、集めてみました~。ドミ公は最近、TVドラマ出演が多い。バリバリに主演の映画が観たい~
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ノーサイドBL

2020-05-12 | イギリス、アイルランド映画
 「ぼくたちのチーム」
 両親が海外で暮らすことになり、ラグビーの名門校である男子校の寄宿舎に放り込まれたオタク少年のネッドは、周囲と馴染めず浮いた存在となっていた。そんな中、ラグビーのスター選手であるコナーが転入し、ネッドのルームメイトとなる。互いに打ち解けずにいたが、やがて二人は音楽を通して親しくなる。しかし、偶然ネッドはコナーの秘密を知ってしまい…
 イギリス(この映画はアイルランドでしたが)!男子寮!腐なら聞いただけでパブロフの犬のようにヨダレが出そうになる設定。BL映画の金字塔、「モーリス」「アナザー・カントリー」みたいな美しく格調高いBL映画を期待してしまいましたが、ぜんぜん違ってました。そもそもBL映画ではありませんでした。男同士のキスやセックスなど性愛シーン、劇的で耽美な関係が大好きな腐が観たら、かなりガッカリするかもしれません。BLではなく、愉快で爽やかなフィールグッド友情物語です。

 それにしても。近年はLGBTの社会的権利は認められ、昔ほど奇異で特殊な人々扱いはされなくなっている…ように見えて、差別偏見がまだまだ根深いというのが実情です。この映画では、そんなゲイの切実な生きづらさが明るく描かれています。この映画でゲイを嫌悪し見下す人々も、基本的にはみんな善人、ただ心が狭いだけなんです。無神経で狭量な善人のほうが、悪人よりも怖いです。だって、前者のほうが実際に関わることが多いから。

 ゲイだけではなく、心身が弱い人や周囲に迎合しない人たちを排斥したり攻撃したりする人たち。なぜ自分たちのほうが彼らより正しくすぐれていると信じることができるのでしょうか。何の根拠もない自信、信念はただもう無知蒙昧。歪んだ価値観も大勢が賛同すると正義になる。それを振りかざして生徒を服従させたり扇動したりするラグビー部のコーチ、ゲイやオタクを自分たちの下に見て安心感や優越感を得てるようなラグビー部員たちは、何だかユダヤ人を虐げ迫害したナチスを思い出させ、私の心肝を寒からしめました。

 コーチのパスカルやラグビー部員たちの、“男らしさ”至上主義、体育会価値観が滑稽で怖かったです。男らしくない奴、スポーツができない奴は虫けら扱い。それを許す学園のヒエラルキー。ラグビー部員が頂点で、ネッドのような冴えないオタクは底辺。自分たちは選ばれし特別な存在!というラグビー部員たちの言動や思考回路。プロ野球選手など有名アスリートにも、そういう人が多そう。勉強しないしチヤホヤされるし狭い世界だけで生きてるから、そういう風になってしまうんでしょうね。才能は豊かでも心は貧しいって悲しい。

 ひ弱そうでオタクなネッドのほうが、パスカルやラグビー部員たちよりよっぽど男らしかったです。群れずに自分らしさを貫いてたところがカッコよかった。コナーへの友情も温かく誠実。男らしさって、マッチョな見た目や振る舞いではなく、優しさと誇り高さだとネッドを見ていて思いました。ネッドとコナーの友情をよしとしないパスカルやラグビー部員たちに引き裂かれそうになり、すれ違いや裏切りに壊れそうになりながらも、それらを乗り越えてより深まる二人の友情が感動的でした。やっぱ恋に落ちるのかな?と思わせつつ、そうはならなかったのも私には爽快でした。二人がキスしたりセックスしたり、ドロドロしい関係になるのは似合わない、想像できないししたくないから。

 ネッド役のフィオン・オシェイはイケメンではないけど、賢そうでオシャレな感じの文系ルックス。髪の色がカッコよかった!あれ地色なの?コナー役のニコラス・ガリツィンはスゴいイケメン、ていうか美男子!ワイルドで陰りがあって繊細で、BL漫画に出てきそうなキャラと見た目でした。パスカル役のモー・ダンフォードが、ちょっとクリス・プラットっぽくてイケてました。ゲイの教師シェリー役のアンドリュー・スコットは、シャーロックのジム・モリアーティですね!イギリス映画、ドラマでよく見かけるバイプレイヤーで、ゲイであることをカミングアウトしてます。シェリーみたいな先生と私も学生時代に出会いたかったな~。



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サイコ未亡人の闇友活

2019-12-25 | イギリス、アイルランド映画
 メリークリスマス!
 楽しく華やかな聖夜って感じは、私の周囲ではまったくしませんいつも通り、バタバタと素っ気なく味気なく一日が終わろうとしています。皆さまはハッピークリスマスだったことでしょうか。サンタクロースよりもインフルエンザが来そうな寒い夜、元気にお正月を迎えるために何卒ご自愛ください(^^♪もうすぐ今年も終わり…

 「グレタ GRETA」
 ニューヨークの高級レストランで働くフランシスは、仕事帰りの地下鉄でバッグを拾い、落とし主である未亡人グレタに届ける。グレタの孤独な境遇に同情し、彼女と親交を深めるフランシスだったが、やがてグレタの恐るべき秘密と狂気を知ることに…
 やっと観ることができました~(^^♪イザベル・ユペール、期待通りのイカレっぷりでした!彼女はやっぱ、こーでなきゃね!還暦を過ぎた大物女優が、まったく守りに入らず過激に軽やかに攻め続けている。もう畏怖と敬服あるのみです。好感と共感ばかり欲しがってるような役や演技しかできない女優なんか、ほんとつまんない。媚や無難とは無縁、常に人々を唖然とさせ戦慄させ、そして魅了し笑わせてくれるなんて、世界広しといえどイザベル・ユペールだけです。

 「Violette Nozière」や「沈黙の女 ロウフィールド館の惨劇」「ピアニスト」そして「エル ELLE」etc.冷酷で性悪、不可解で不道徳で変態な女たち。フツーなら映画のヒロインになどなりえない狂女や凶女を、強烈で魅惑的なヒロインにしてしまう唯一無二の女優イサベル・ユペール。今回のグレタ役も、彼女でなければありがちなB級映画の異常者になっていたことでしょう。イザベル・ユペールの素晴らしすぎる独特さは、激ヤバな役をすご~く軽やかに楽しそうに演じてるところ。決して深刻に重苦しく大熱演なんかしないんです。おぞましい奇行や凶行も、常にシレっとスットボケてる。これってもうイザベル・ユペールの専売特許になってます。

 これまでのトンデモヒロイン同様、グレタもやることなすことイっちゃっててヤバすぎるのですが、これまで同様明らかに笑いを狙ってやってる確信犯的なイビツさ過激さに、ユペりんファンならニヤリ。笑えるシーンや演技はたくさんあるのですが、レストランの前に一日中地蔵のように立ってる姿や、フランシスに向かってチューイングガムを吐き飛ばしたり、エリカを尾行して画像をフランシスに送りつける時にエリカに見つからないよう素早くピョコっと隠れる敏捷さ、そしてレストランに客として押しかけテーブルをひっくり返すという星一徹も真っ青なプッツン行為、などインパクト強烈。踊りながら探偵の首に注射をブスっと射したり、フランシスへの鬼のようなピアノレッスン強制もイカレてて笑えたわ~。隠し部屋や恐怖のお仕置きボックスなど、グレタの家も狂ってて笑えた。

 軽やかで毒々しいユーモア、そしてヨーロッパの香り高いエレガンスも、ハリウッドのどんな美しく演技の巧い大物女優にもないユペりんの魅力です。彼女もすっかりおばあさんになりましたが、軽妙で毅然としてるので老いさらばえた感は微塵もありません。グレタのフェミニンで上品なファッションも素敵でした。フランシスとエリカもファッション、そしてシェアしてる部屋もオシャレだった。

 フランシス役のクロエ・グレース・モレッツは、すごいぽっちゃり顔とがっちりガタイ。ガリガリに痩せた女優よりも好き。石原さとみを素朴に強靭にした感じに見えた。すごく強そうなので、小柄で華奢な老女グレタなんか簡単に撃退できそうだったけど、見た目と違って心は弱いので騙されたり利用されたりして痛い目に遭うフランシスみたいな子もいますよね~。落とし物を届けに落とし主の家に直接出向くなんて、フツーなら絶対しませんし。純粋すぎ、お人よしすぎるのもいかがなものかです。フランシスの親友エリカが、すごくチャーミングなキャラでした。一見チャラいパリピ娘だけど、言動が男前でカッコいい。友情に厚く、ラストはヒロインを救い出すヒーローのような大活躍!演じてるマイカ・モンローの好演も特筆ものです。グレタ、フランシス、エリカの絡みや関係性に、うっすらとレズっぽいものを感じたのは私だけでしょうか。みんな男っけ全然なかったもんね。

 かなり穴だらけな脚本といい、決して秀作でも佳作でもないけど、私はこういう笑えるイカレ映画、そして女優が好演してる映画、大好きです。ニール・ジョーダン監督の作品なのですが、ジョーダン監督といえば傑作「クライング・ゲーム」以外は駄作凡作が多い一発屋?ジョーダン監督作の常連、スティーヴン・レイが探偵役でチョコっと出演してます。ニューヨークの風景がとても美しく撮れていて、どことなくジョーダン監督といえばのアイルランドの匂いがしました。

 ↑こういうのが似合う女優って、彼女以外思いつかんわ~
コメント (6)
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