「ダウト あるカトリック学校で」
今年のアカデミー賞で、主演女優賞(メリル・ストリープ)、助演男優賞(フィリップ・シーモア・ホフマン)助演女優賞(エイミー・アダムス、ヴィオラ・デイビス)にノミネートされた話題作。
ケネディ大統領暗殺直後のブロンクス。カトリック学校の校長シスター・アロイシスは、その厳格さで周囲に恐れられている人物。彼女は、人望あるフリン神父が生徒である黒人少年に特別な感情を抱き、不適切なおこないに及んだのではないかと疑い始めて...
アロイシス校長、こ、怖い~!まさに黒い尼さん!優しい聖女どころか、まがまがしい魔女!地獄のシスター!鬼のような無表情、鞭のように相手の心を痛めつける情け容赦ない叱責、毒を含んだ当てこすりや皮肉など、こんな人がいる教会に通ったら、神様なんか信じられなくなりそう。
どこにいようと逃れることのできない、人間の業。それが俗世間よりも歪められ病的になってしまう、人間として間違ったことさえ神の名のもとに正当化されてしまう、教会という閉ざされた世界の冷たく深い暗闇。そこに君臨するアロイシス校長の怖さは、ただのガチガチな宗教き○がい女ではなく完全に理性的で、きわめて世俗的な女のドス黒い性質の悪さを、信仰に敬虔という美名で覆っているところ。
校長の厳しい振る舞いも裏返せば、自分が常に高みに優位に立つための示威だし、常に正しいのは自分!ということを立証するためには、誰を利用しようが傷つけようがお構いなし。相手を罠にかけるような嘘までつく悪辣さ。すべては神様や教会のため!なんて、詭弁もいいところです。すべて自分の思い通りにコントロールしたいだけの、精神的暴君!
世俗的な女の悦びがないからか、校長の暴虐ぶりはそのはけ口みたいなのが怖くてイヤらしい。抑圧された女の醜さ丸出し。欲求不満解消のターゲットとなるのが、可哀相なフリン神父。
愉快で思いやり深く革新的なフリン神父は、みんなに尊愛されている人気者。そんな彼を横目に、不満と不快を募らせる校長。調子ぶっこいてやがる。気にくわねえ。目障りだ。あんな男の風下にこの私が立つなんて、納得も我慢もできん。こいつ、絶対変態だ。間違いない!よし、失脚させてやる!させねば!と躍起になる校長。ああ、醜い。陰湿な嫉妬、異様なまでに高い自尊心、独りよがりな自信、偏狭な価値観、都合のいい思い込み、敵を倒すために費やす無限のエネルギーと執念深さ、そして破壊的な攻撃性。まさに女だ~!悪い意味で、すごく女らしいともいえる校長なのです。
決して暗く重い映画ではありません。それは、難しい宗教がテーマではないから?緊迫感ある心理バトルが、スリル・ショック・サスペンスな映画です。ラスト近くの、校長VSフリン神父の対決シーンは、まさに言葉という刃物で心をメッタ刺し合い状態!
内容もさることながら、やはりオスカーにノミネートされた俳優陣の演技に圧倒され、引き込まれてしまいます。
聖なる性悪女、アロイシス校長役のメリル・ストリープは、もはや“演神”と呼ぶべき存在。子役やシスター役の女優たち、彼女のこと本気で怖がってたのでは?演技とは思えぬビクビクぶりでした。観てるこっちまでビクっとなる迫力&威圧感です。ほんと怖くてヤな女なんだけど、そこはかとなくブラックな笑いまでまとっているところが、ほんと素晴らしいです。さすが、ハリウッドの崇敬と畏怖を一身に受けている世界一の大女優。彼女の偉業を目の当たりにしてしまうと、しばらく日本の最近の映画やドラマなんか観てらんなくなります。あまりにも演技のレベルが違いすぎて。
メリルおばさまのこと、やけに嫌う人って多いみたいだけど(特に女性文化人系)何でかな?私はただもう、彼女の神がかり的な演技に感嘆敬服するのみ。メリルおばさまのことを意地悪く批判する声って、何だかフリン神父を糾弾する校長の悪意とカブるような気がして...
それにメリルおばさまって、素は優しそうで上品なので好き。宮崎あおいとか竹内U子とか日本の大女優(笑)は、道端で一般人にサイン求められたら冷たく無視しそうですが、メリルおばさまは笑顔で応えてくれそう、みたいな。
演神メリル・ストリープと互角に渡り合える俳優は、なかなかいないと思う。なので、フリン神父役のフィリップ・シーモア・ホフマンはやはり非凡な役者だと再認識。人格者、だけど、ん?やっぱ何か怪しい?なフリン神父。校長を揶揄する演説など、このオッサンも決して高潔じゃないな、中身は解脱とは程遠い人間性でドロドロだな、と感じさせるフリン神父を演じるホフマンの、はっきり見せないぼかした怪しさも秀逸。それにしても彼、ほんと肥満したレオナルド・ディカプリオみたいですね。笑顔が可愛い。見た目は完璧にメタボなオッサンですが、ジョニーやブラピより年下なんですよね。
校長とフリン神父との間で苦悩するシスター・ジェイムズ役を、エイミー・アダムスが好演。彼女の、純真すぎて何かズレてる、見方によってはトンでもない大ボケ?な演技も、なかなか絶妙です。今にも歌い出しそうな声が可愛い。黒人少年の母役、ヴィオラ・デイビスは短い出番で、峻烈なインパクトを残していきます。
自分にも他人にも、感情や欲情を抑えるよう厳求する聖職者の姿が怖い映画を観ると、いったい何の誰の救いになってるのかなあ、と宗教というものをついダウトしちゃいます。
今年のアカデミー賞で、主演女優賞(メリル・ストリープ)、助演男優賞(フィリップ・シーモア・ホフマン)助演女優賞(エイミー・アダムス、ヴィオラ・デイビス)にノミネートされた話題作。
ケネディ大統領暗殺直後のブロンクス。カトリック学校の校長シスター・アロイシスは、その厳格さで周囲に恐れられている人物。彼女は、人望あるフリン神父が生徒である黒人少年に特別な感情を抱き、不適切なおこないに及んだのではないかと疑い始めて...
アロイシス校長、こ、怖い~!まさに黒い尼さん!優しい聖女どころか、まがまがしい魔女!地獄のシスター!鬼のような無表情、鞭のように相手の心を痛めつける情け容赦ない叱責、毒を含んだ当てこすりや皮肉など、こんな人がいる教会に通ったら、神様なんか信じられなくなりそう。
どこにいようと逃れることのできない、人間の業。それが俗世間よりも歪められ病的になってしまう、人間として間違ったことさえ神の名のもとに正当化されてしまう、教会という閉ざされた世界の冷たく深い暗闇。そこに君臨するアロイシス校長の怖さは、ただのガチガチな宗教き○がい女ではなく完全に理性的で、きわめて世俗的な女のドス黒い性質の悪さを、信仰に敬虔という美名で覆っているところ。
校長の厳しい振る舞いも裏返せば、自分が常に高みに優位に立つための示威だし、常に正しいのは自分!ということを立証するためには、誰を利用しようが傷つけようがお構いなし。相手を罠にかけるような嘘までつく悪辣さ。すべては神様や教会のため!なんて、詭弁もいいところです。すべて自分の思い通りにコントロールしたいだけの、精神的暴君!
世俗的な女の悦びがないからか、校長の暴虐ぶりはそのはけ口みたいなのが怖くてイヤらしい。抑圧された女の醜さ丸出し。欲求不満解消のターゲットとなるのが、可哀相なフリン神父。
愉快で思いやり深く革新的なフリン神父は、みんなに尊愛されている人気者。そんな彼を横目に、不満と不快を募らせる校長。調子ぶっこいてやがる。気にくわねえ。目障りだ。あんな男の風下にこの私が立つなんて、納得も我慢もできん。こいつ、絶対変態だ。間違いない!よし、失脚させてやる!させねば!と躍起になる校長。ああ、醜い。陰湿な嫉妬、異様なまでに高い自尊心、独りよがりな自信、偏狭な価値観、都合のいい思い込み、敵を倒すために費やす無限のエネルギーと執念深さ、そして破壊的な攻撃性。まさに女だ~!悪い意味で、すごく女らしいともいえる校長なのです。
決して暗く重い映画ではありません。それは、難しい宗教がテーマではないから?緊迫感ある心理バトルが、スリル・ショック・サスペンスな映画です。ラスト近くの、校長VSフリン神父の対決シーンは、まさに言葉という刃物で心をメッタ刺し合い状態!
内容もさることながら、やはりオスカーにノミネートされた俳優陣の演技に圧倒され、引き込まれてしまいます。
聖なる性悪女、アロイシス校長役のメリル・ストリープは、もはや“演神”と呼ぶべき存在。子役やシスター役の女優たち、彼女のこと本気で怖がってたのでは?演技とは思えぬビクビクぶりでした。観てるこっちまでビクっとなる迫力&威圧感です。ほんと怖くてヤな女なんだけど、そこはかとなくブラックな笑いまでまとっているところが、ほんと素晴らしいです。さすが、ハリウッドの崇敬と畏怖を一身に受けている世界一の大女優。彼女の偉業を目の当たりにしてしまうと、しばらく日本の最近の映画やドラマなんか観てらんなくなります。あまりにも演技のレベルが違いすぎて。
メリルおばさまのこと、やけに嫌う人って多いみたいだけど(特に女性文化人系)何でかな?私はただもう、彼女の神がかり的な演技に感嘆敬服するのみ。メリルおばさまのことを意地悪く批判する声って、何だかフリン神父を糾弾する校長の悪意とカブるような気がして...
それにメリルおばさまって、素は優しそうで上品なので好き。宮崎あおいとか竹内U子とか日本の大女優(笑)は、道端で一般人にサイン求められたら冷たく無視しそうですが、メリルおばさまは笑顔で応えてくれそう、みたいな。
演神メリル・ストリープと互角に渡り合える俳優は、なかなかいないと思う。なので、フリン神父役のフィリップ・シーモア・ホフマンはやはり非凡な役者だと再認識。人格者、だけど、ん?やっぱ何か怪しい?なフリン神父。校長を揶揄する演説など、このオッサンも決して高潔じゃないな、中身は解脱とは程遠い人間性でドロドロだな、と感じさせるフリン神父を演じるホフマンの、はっきり見せないぼかした怪しさも秀逸。それにしても彼、ほんと肥満したレオナルド・ディカプリオみたいですね。笑顔が可愛い。見た目は完璧にメタボなオッサンですが、ジョニーやブラピより年下なんですよね。
校長とフリン神父との間で苦悩するシスター・ジェイムズ役を、エイミー・アダムスが好演。彼女の、純真すぎて何かズレてる、見方によってはトンでもない大ボケ?な演技も、なかなか絶妙です。今にも歌い出しそうな声が可愛い。黒人少年の母役、ヴィオラ・デイビスは短い出番で、峻烈なインパクトを残していきます。
自分にも他人にも、感情や欲情を抑えるよう厳求する聖職者の姿が怖い映画を観ると、いったい何の誰の救いになってるのかなあ、と宗教というものをついダウトしちゃいます。