

20世紀初頭のノースカロライナ州の森林地帯。製材業を営むジョージは、火事で家族を失ったセリーナと恋に落ち結婚する。やがてセリーナは妊娠するが、流産し二度と子どもを望めない体になってしまう。ジョージはセリーナと結婚する前に手をつけた女給に産ませた息子を気にかけ始め、それに気づいたセリーナは激しい憎しみに駆り立てられ恐るべき行動に出るが…
「アリー スター誕生」が絶賛公開中のブラッドリー・クーパー主演作。日本では劇場公開されず、DVDスルーとなりました。そんなに昔の作品ではないのですが、ブラパが若く見えて相変わらずカッコよかったです


見た目や性格、頭が良いパーフェクトな男はもちろん素敵ですが、弱い部分、悪い部分も魅力になるのが真の男前。今回のブラパも、男としてのスペックは最高に見えて、実はとんでもない致命的欠陥のあるダメ男の役なんですよ。いい人、いい男なんだけど、心が弱すぎ。性欲処理で抱いた女給が孕んでも知らん顔、生まれた息子も無視、でも妻が流産して精神不安定になって結婚生活が破綻すると、今までシカトしてた母子に慰めを求める始めるとか、身勝手すぎる!身も心も傷ついてるセリーナにとっても、不誠実で薄情な仕打ち。世間を騒がせたあのゲス不倫議員も真っ青のゲスっぷりに、女性なら誰でも不快になるジョージなのですが、ダメ男ゲス男もブラパが演じると憎めない。悲しそうにオロオロしたり、追い詰められてキレたりするブラパを見手ると、悪いのは女のほう!なんて思えてくるんです。ジョージみたいな役は、顔はフツーもしくはブサイクでも演技力抜群な俳優がやっても、演技力は学芸会以下だけどルックスはいい俳優がやっても、ただもう最低な男になるだけ。ゲスもダメも魅力にしてしまうブラパは、やはり卓越した俳優と言えるでしょう。

ブラパご自身はスマートな男性と存じますが、ちょっとアホみたいな顔してるせいか、悲惨な物語なのにあまり深刻にも暗くもならないのがちょっと…ブラパにはやっぱ、シリアスな悲劇は似合いません。大物俳優になり、監督としても高く評価さるようになった最近のブラパは、すっかり本格派志向なご様子。たまにはまた、昔取った杵柄的にコメディ映画にも出てほしいものです。

セリーナ役は、ブラパとの共演作が多いジェニファー・ローレンス。すでに大ベテラン女優の貫禄で、とても20代とは思えません。おばさん娘って感じ。それにしても彼女、ほんと気が強そう。かわいこブリっこ女優も苦手ですが、ジェニファーみたいな性格のキツさ、悪さを隠さない女優も、好感と共感を抱きにくい。ふてぶてしく意地悪そうな顔、雰囲気が怖い。同じクラスにいたらいじめられそう。本来ならセリーナは、狂気に蝕まれる悲劇のヒロインなはずなのに、ジェニファーだと単なる凶暴なイカレ女にしか見えん。美貌のヒロインという設定にも疑問符。山奥暮らしなのに、いつも髪型もメイクも衣装もスタイリストがばっちり!みたいなのも変だった。マクベス夫人みたいに夫に悪事をけしかけるセリーナの毒妻ぶりとか、夫の心が離れてしまうほどのセリーナの心の闇を、もっと丹念に描いてほしかったです。
その他のキャストでは、予知能力のあるサイコっぽい山男役にリス・エバンズ、保安官役にトビー・ジョーンズと、英国の個性派俳優が助演。作業員役のオーストラリア俳優サム・リードが、チョイ役ながらなかなか目立つイケメンでした。


↑ 先日発表されたアカデミー賞のノミネーション。ブラパ、監督賞からはまさかの候補漏れ!残念


