まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

胸騒ぎの腰ふり

2022-07-20 | 北米映画22~
 「エルヴィス」
 1950年代のアメリカ。その歌声とパフォーマンスで若者たちの心を掴んだ若きエルヴィス・プレスリーは、またたく間にスターとなる。しかし保守的なアメリカ社会では激しい反発も買い…
 定期的に製作される超有名歌手の伝記映画。「ボヘミアン・ラプソディ」のフレディ・マーキュリー、「ロケットマン」のエルトン・ジョンに続いて、今度はエルヴィス・プレスリー。彼もネタの宝庫な人物のようですが、恥ずかしながら私プレスリーのことはあまり存じ上げなくて。歌も有名な「好きにならずにいられない」」ぐらいしか思いつかない。人気絶頂の若い頃より酒とクスリに溺れて体が膨張した晩年の姿のほうが、プレスリーと聞いてパっと思い浮かびます。さぞかし波乱万丈でスキャンダラスな人生だったんだろうなと思いきや、そんなでもなくてちょっと肩透かし。エルヴィスのキャラと言動も、フレディやエルトンに比べると非エキセントリックで、かなりまともだったのも以外でした。

 エルヴィスの人物や人生よりも、それらをゴッテゴテにギラギラにデコレートして描いた、バズ・ラーマン監督の演出こそこの映画の見どころかもしれません。とにかくド派手!めくるめく華麗な展開やシーンは、視覚的にも聴覚的にも楽しいんだけど疲れます。ずっとお祭り騒ぎみたいな映画でした。エルヴィスのライヴシーンが華やかかつパワフル。エルヴィスといえば、保守的な当時のアメリカで社会問題となったパフォーマンス。激しく腰を振りながら熱唱するエルヴィスに、女子たちが発情発狂状態になる姿はイタコ的でホラー、でも笑えた。今ならあれぐらい誰も何とも思わないけど、わいせつ罪扱いして厳しく糾弾してた当時のアメリカ社会、ほんと偏狭で抑圧されてたんですね~。それにしても、アメリカのファンって熱狂的すぎて怖い。エルヴィス本人や車に体当たりしてくる危険で迷惑な命知らずさとか、殺す気かよ!と戦慄。

 ギンギラなジェットコースターのようにショービジネスの世界を駆け抜け、やがて没落していくというエルヴィスの栄枯盛衰物語は、スターの伝記ものとしては結構ありきたりで、特に目新しさも衝撃もありませんでした。欲深い連中や家族と金をめぐって争いとかほとんどなく、エルヴィスの遺族や関係者が安心する内容になってました。ほんとはもっと汚くて醜い人間関係やトラブルがあったはず。そういうダーティでディープな部分は端折られてました。演出は派手だけどドラマそのものは薄いです。エルヴィスの曲だけでなく、彼に影響を与えた黒人音楽もカッコよくてエモーショナル。当時の黒人差別や、次々と起こる要人暗殺など、今も昔もアメリカって暴力に満ちた物騒な国。

 エルヴィス役のオースティン・バトラーは、新人さん?大抜擢にこたえて大熱演してました。女の子みたいな優しい顔。すごく地味で薄いので、濃ゆいエルヴィス本人とは似てませんが、ライヴパフォーマンスの再現や、若き日の少年っぽさと晩年のおじさんの演じ分けが見事でした。メイクの力も驚異的。実際のエルヴィスの晩年はもっと醜悪ですが。エルヴィスの悪徳マネージャー役は、ハリウッドの大物俳優トム・ハンクス。すっかり爺さんになったな~と、大好きだった若かりし頃のトムに思いをはせ感慨。ショボくれて萎んだ老人ではなく、どっしりと元気いっぱいに老害をふりまく怪演で健在ぶりをアピールしてました。強欲で胡散臭いけど悪人ではなく、基本いい人で軽妙な演技がトム・ハンクスらしかったです。彼も悪役はできない俳優。

 私のお目当ては、エルヴィスと親しくなる有名歌手B・B・キング役のケルヴィン・ハリソン・ジュニア中盤にチョコっとしか出ないチョイ役でしたが、やっぱ彼イケメンですね~。すごい華があって、周囲の黒人たちはみんな彼の引き立て役になってしまう。50年代のファッションも小粋で伊達でした。エルヴィスとの仲良しぶりに、全然BLっぽさがなくて残念。BLといえば、「パワー・オブ・ザ・ドッグ」でカンバーバッチを虜にしたコディ・スミット・マクフィも出演してます。彼も前半だけのチョイ役。いてもいなくてもいいような役でしたが、特異な風貌なのですごい目立ってました。フレディやエルトンと違って、エルヴィスはノンケで非BL映画だったのが、何となく物足りなかった要因でしょうか。次に映画化される有名アーティストは誰かしらん?ジョン・レノンとか?ヨーコが生きてるうちは無理かな
 

コメント (5)
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