「Victim」
弁護士として成功し、美しい妻ローラと幸福な結婚生活を送っていたメルヴィルは、警察の拘置所でバレットという青年が自殺したと知りショックを受ける。メルヴィルは同性愛者で、バレットとはかつて深い関係にあった。バレットは生前、何者かに脅迫されていたが…
60年代のモノクロのイギリス映画が好きです。それらの多くは冷たく乾いた映像と雰囲気で、シビアな社会や人間関係を描いているのですが、この1961年の作品もそうでした。同性愛が違法とされていたイギリスにおけるゲイの生きづらさや苦悩は、酸鼻を極めるものがあります。現代ではありえないような人権無視、人権蹂躙の非道さ。バレたら身の破滅になるほどの命がけの秘密。カミングアウトなど自殺行為。同性愛者は公然と攻撃と蔑みの対象になっていた時代。そんなに昔のことじゃないってのが信じがたい。まるで隠れキリシタンのように、ビクビクしながら息を潜めるように、本当の自分を抑圧して生きねばならない人生。まさに絶望しかありません。怯えながらも男を求めずにはいられず、危険をおかしてしまうゲイの心と体の懊悩が悲痛です。
この映画の怖いところは、同性愛者の弱みに付け込む連中の卑劣さや残忍さや、狭隘で歪んだ憎悪や嫌悪の醜さです。金目当て、もしくは独りよがりで狭量な信条の持ち主に脅迫の標的にされてしまう同性愛者たちは、まさに社会に鬱憤を抱く人たちへのはけ口にされた犠牲者。この映画を観て、同性愛を禁じていた法律がどれほど人間を貶めていたか、あらためて痛感しました。偏見や差別に毒されず、公正公平な目を失わない人や、愛が揺るがない人が、少数派だけどいたことは救いになりました。ゲイの男性を愛してしまった女性の苦しみも、また悲痛ですよね~。メルヴィルが同性愛者と知っても、彼を愛することを止められないローラの選んだ道は、悲壮かつ峻厳。脅迫者の正体は、ちょっと意外でした。
メルヴィル役は、ヴィスコンティ監督の「ベニスに死す」と「地獄に堕ちた勇者ども」での名演も忘れがたい英国の名優ダーク・ボガード。
保身と罪悪感にがんじがらめになる男を、デリケートにデスパレートに演じてるダーク・ボガード。ほの暗い男色の悲哀を常にまとっている彼にとって、隠れゲイ役なんて適役過ぎる。実際のボガードは同性愛者だったのか、そうでなかったのか、定かでないミステリアスなところも彼の魅力で、演技に深みや陰影を与えていたように思われます。深く暗い洞のような大きな瞳が美しくも怖いです。エレガントな仕草や英語のアクセントが、まさに英国のエリート紳士って感じで素敵。モノクロで撮影された当時のロンドンも風景も興味深いです。ゲイ映画ですが、男性同士の性愛シーンなどはいっさいなし。リメイクされるなら、切ないラブシーンはマストですね。メルヴィル役はコリン・ファレルかリチャード・マッデンにやってほしいかも(^^♪
弁護士として成功し、美しい妻ローラと幸福な結婚生活を送っていたメルヴィルは、警察の拘置所でバレットという青年が自殺したと知りショックを受ける。メルヴィルは同性愛者で、バレットとはかつて深い関係にあった。バレットは生前、何者かに脅迫されていたが…
60年代のモノクロのイギリス映画が好きです。それらの多くは冷たく乾いた映像と雰囲気で、シビアな社会や人間関係を描いているのですが、この1961年の作品もそうでした。同性愛が違法とされていたイギリスにおけるゲイの生きづらさや苦悩は、酸鼻を極めるものがあります。現代ではありえないような人権無視、人権蹂躙の非道さ。バレたら身の破滅になるほどの命がけの秘密。カミングアウトなど自殺行為。同性愛者は公然と攻撃と蔑みの対象になっていた時代。そんなに昔のことじゃないってのが信じがたい。まるで隠れキリシタンのように、ビクビクしながら息を潜めるように、本当の自分を抑圧して生きねばならない人生。まさに絶望しかありません。怯えながらも男を求めずにはいられず、危険をおかしてしまうゲイの心と体の懊悩が悲痛です。
この映画の怖いところは、同性愛者の弱みに付け込む連中の卑劣さや残忍さや、狭隘で歪んだ憎悪や嫌悪の醜さです。金目当て、もしくは独りよがりで狭量な信条の持ち主に脅迫の標的にされてしまう同性愛者たちは、まさに社会に鬱憤を抱く人たちへのはけ口にされた犠牲者。この映画を観て、同性愛を禁じていた法律がどれほど人間を貶めていたか、あらためて痛感しました。偏見や差別に毒されず、公正公平な目を失わない人や、愛が揺るがない人が、少数派だけどいたことは救いになりました。ゲイの男性を愛してしまった女性の苦しみも、また悲痛ですよね~。メルヴィルが同性愛者と知っても、彼を愛することを止められないローラの選んだ道は、悲壮かつ峻厳。脅迫者の正体は、ちょっと意外でした。
メルヴィル役は、ヴィスコンティ監督の「ベニスに死す」と「地獄に堕ちた勇者ども」での名演も忘れがたい英国の名優ダーク・ボガード。
保身と罪悪感にがんじがらめになる男を、デリケートにデスパレートに演じてるダーク・ボガード。ほの暗い男色の悲哀を常にまとっている彼にとって、隠れゲイ役なんて適役過ぎる。実際のボガードは同性愛者だったのか、そうでなかったのか、定かでないミステリアスなところも彼の魅力で、演技に深みや陰影を与えていたように思われます。深く暗い洞のような大きな瞳が美しくも怖いです。エレガントな仕草や英語のアクセントが、まさに英国のエリート紳士って感じで素敵。モノクロで撮影された当時のロンドンも風景も興味深いです。ゲイ映画ですが、男性同士の性愛シーンなどはいっさいなし。リメイクされるなら、切ないラブシーンはマストですね。メルヴィル役はコリン・ファレルかリチャード・マッデンにやってほしいかも(^^♪